見出し画像

HIYORI BROT 塚本久美さんに憧れてパン職人になった私 その六

美味しいパンを作れるようになりたいと意気込んでいた私だか、殆ど勢いでパン職人という道を選択したため、漠然とした目標しかなかった。とりあえずの目標は、独立できるレベルのパンを作れるようになるということ。しかし当時は必ず独立したいとまではあまり考えていなかった。というより、独立はしたいけど、私には多分無理だろうと思ってしまっていたのだ。

そんな中始めたパン屋での仕事は、大変だがやりがいを強く感じていた。少しずついろいろなことが出来るようになり、日々成長を感じられていたことが幸せだった。
同時にパン屋で生計を立てることの厳しさにもまた改めて直面した。ある程度検討がついていたことではあったが、実際に個人店を開いて生活していけるだけの利益を出すことの難しさを知ってしまい、さらに私の中で「自分のお店を出して独立する」ということは将来の選択肢から消えかけていた。
また、女であるということも独立を目標としていいのか迷う理由の一つだった。女1人で独立するには、相当な強さが必要だと思い、私がそんな強い女性になれるのかという不安があった。その迷いは、独立という道をとったら、自分が理想としていた歳には結婚や出産はできないだろうということ、そして、どちらが自分にとって大事なのか、優先すべき事なのかまだ答えを出せないでいたことからきていた。
パン屋で働けていることの幸せを感じつつも、将来自分はどうしたいのか、しばらくの間思い悩みながら日々を過ごしていた。
このままずっと雇われのパン職人として生きていくというのも一つの道ではあると思ったが、やはりそれでは違う、私らしく生きれないと、それだけは言い切れた。そして考えに考え抜いてたどり着いた目標は結局「独立」だった。

しかし、独立・開業をするための初期投資にかなりの額のお金がいること、そしていざ独立をしたとしても、お店を維持していける保証が無いということ、お店という形をとることで時間に縛りが出てくるということから、独立・開業にはあまり乗り気ではなかった。

リスクを回避して、尚且つ好きな時間にパンを焼けるような、そんな自分の理想に近い独立の方法はないかと考えていた時、塚本さんのお店を持たない、そして旅をしながらパンを焼くという独自のスタイルを思い出した。
必ずしもお店を出して独立しなければいけないなんてルールはないのだから、それだったらお店を持たない方が始めやすく、私が心配していたリスクを減らしてくれるのではないのだろうかと考え、いつしか私もお店を持たずに通販でパンを売りたいと思い始めた。
また、ちょうどそういった事を考えていた頃世界的な情勢が大きく変わり、人々がお店に行かずに物を手に入れるという通販は需要が増えていたし、これからも増え続ける見込みがあると思い、通販でパンを売り、独立するという形を目標として定めることにした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?