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俺は全ての他人を許さない。なぜならこの生きづらい世の中を作っているのはお前たちだから。ー小説『正欲』感想ですー


「地球に留学しているような感覚」

まさにそう。
お前らにとっては母国だろうが、俺にとってはずっと異国だ。

ずっとマイノリティーで生きてきた。
物心つくかつかないかの頃、僕は体操服をハサミで切っていた。
「この方が見やすいから」

あまりにも意味がわからない子供だった。
いや、だった。ではなく、今でも周りから見たら意味がわからない人間だろう。

漫画に魅せられ、無限に漫画を読んだ。
ゲームにハマり、無限にゲームをした。
そして今はパンヤchで生きている。


この世界を生きているのではなく、パンヤchで生きている。


ミノリスなら経験があるだろう。
「ふざけている」「ありえない」
リアルを生きていたら、生きているだけなのにそう片付けられたことが。

このウラインターネットの片隅に潜む俺らなら、“リアルで生きている人間”に酷く傷つけられたことがあるだろう。

そんな隅っこに生きている俺たちの心情を深く理解している小説。それが『正欲』(著:朝井リョウ)



この記事はこの本・映画の最後までのネタバレを含みます。
既に読んだ人か、読まずにこの記事だけで理解しようとしている人間だけ続きを読んでくださいね。




キャラクター紹介


桐生夏月


水に性的な興奮を覚えるという女。

桐生夏月は、イオンで寝具の販売員をしていた。休憩中の同僚の話はひどくつまらないと思いながらも、“普通”に生きるために相槌を打っていた。30歳だが結婚する予定なんて毛頭ない。なぜなら人間には興奮できず、水にしか興味がないから。毎晩水の動画を見て◯◯っていた。



佐々木佳道


水に性的な興奮を覚えるという男。夏月とは中学の同級生。

佐々木佳道は食品業界の大手で働いていた。会社のイベントごとに参加することはなかった。パワハラにより職を辞め、実家に帰ってきた。水にしか興味がない。
中学の頃に夏月と水遊びをして以来、夏月とは会っていないが、同じ性癖を持つ人間だと認識はしていた。


諸橋大也


水に性的な興奮を覚えるという男(大学生)

高身長イケメンでダンスサークルに入っている。女からはモテるが女に興奮できない。なぜなら水にしか興奮できないから。
“例のプール”の話になった際に意味が分からなかったり、下ネタに全然乗ってこないためゲイだと思われている。


寺井啓喜


検事。“普通”を体現したような人間。

職業は検事。だが、息子は不登校でYoutubeに目覚め、Youtuberとして動画を出すようになる。(明らかにゆ〇ぼんを意識している。)
啓喜は普通を体現した人間なので、息子には学校に行ってほしいと思っている。Youtubeなんてものは“普通”から大きく外れたものだから。


矢田部

ヤバい奴。

適当あらすじ


桐生と佐々木は地元の同級生の結婚式を機に再開する。
2人はずっと接点がなく30歳ぐらいまで暮らしていたが、水にしか興奮できない人間であるという点を、お互いにわかっていた。
久しぶりに話すと、お互いがずっとこの世から疎外されていたという感覚を共有する。
どんなコミュニティにも属せない、誰にも理解されないという水に興奮する異常人間同士、結婚してひっそりと暮らすという契約結婚を画策する。

実際にそれは成功し、夫婦であるとはいえ、互いに欲情するようなことは全くなく、それぞれが一人で水に興奮するだけの生活を始めた。


諸橋大也は大学生で、誰にも話せない性癖を持っている。それはそれは孤独な大学生活を送っている。
子どもが水遊びをするという謎のYoutubeの動画にコメントしまくるヤバい生活を送っている。
そこで佐々木・桐生夫婦に見つかり、DMがきた。
「一緒に水動画を撮りませんか?」


桐生夏月はその撮影には仕事で行けなかったため、佐々木、諸橋、そして諸橋がたまたま見つけた異常性癖人間、矢田部を誘って水動画を撮りまくることにした。


3人で公園で水動画を撮る際、子供が入ってきたため、子供に水遊びをさせて動画を撮った。
すると佐々木の同僚が公園に来ており、自分の子供が撮られていることを知る。そして佐々木を警察に突き出した。



この本のオチ

佐々木と諸橋は本当に水にしか興味がないが、矢田部がヤバイ奴だった。
矢田部はマジモンのロリコンショタコンで、ガキの買春などをしていた。
押収された矢田部のPCにはガキクソの四肢切断系とかガチグロとかショタを買って強姦した時の動画とかが残っていた。
警察は矢田部と佐々木、諸橋の3人を逮捕し、弁明虚しく起訴される。(起訴されて有罪になったという場面までは描かれていない)
という終わり方。

最悪。



感想


物語中盤までは、ずっと「この世には居場所がない」「自分だけがおかしくて、周りが正しい世界」というような暗くネガティブな世界を描いている。
そして、後半から終盤では、特に佐々木は桐生夏月と結婚して、「こんな自分でもどうにか前を向いて一歩踏み出そう!」というポジティブな描写。
そして最後は、今まで居場所がどこにもなかった佐々木と諸橋が、コミュニティを作ろうとして初めて殻を破った第一歩。その一歩目ですぐに逮捕されるという最悪な終わり方。

そう、結局はこの世界に救いはなく、マイノリティはマイノリティなりに片隅で生きてろという本当に終わってるメッセージ。


ここからは自分語り。

知ってる?頭の中でずっと音楽が鳴ってたり、頭の中の会話が終わらなかったりするのって異常らしいよ?
しかもそのせいで注意力や記憶力が落ちたりして、仕事に影響があるんだって!


終わりだ

人生向いてないよ

当然だと思ってたよね。ずっとアニソンかボカロの曲かゲーム音楽が鳴ってるのって当たり前だって思ってた。
みんなはそうじゃないらしい。
これ読んでるみんなはそうだろうけど、“普通の人”はそうではないらしい。

そんな普通の人たちが作っているこの社会、適応できるワケないよね。


この小説の登場人物は、「性癖」が終わってる人間だった。僕もかなり欲求が偏ってて、「食」に殆ど興味がない。一般人から食欲を97%ぐらい削った人間が僕。
1年間同じ課だった人から「パンヤくん、1年間一緒だったけど、結局食べ物については何が好きなのか本当に全く分からなかった。噂通りだったね。」と言われた。異動の別れ際に言われたんだから相当だったらしい。
みんな食事でコミュニケーションを取ったり、それこそ飲み会で仲良くなろうっていう田舎の職場なのに、元々喋らない。酒は嫌い。何より食べることが嫌い。
そんな人間が誰かと仲良くなれるわけもなく、働き始めて8年?ぐらい経つけど、150人以上いる職場で仲のいい人なんて1人か2人。

食欲は皆無で帰ったら無限にゲームをする。友達はネットにはいっぱいいるけどリアルにはいない。ネットの友達と配信をし合うという理解されない趣味。晩酌なんてしたことないし、タバコも吸ったことない。街に飲みに行くとか意味不明すぎてできない。ゲームしたいし。見たい配信がいっぱいあるし。休日に職場の人と遊ぶとか絶対しない。なんなら一人でこうやってnoteを書くのが楽しいし、聴いてる音楽は誰も知らない曲ばかり。



”世間”を形作る人間たちとは遠く離れた存在。



僕の友達の名言で、『好きなもの 友達。嫌いなもの それ以外の全員』って言ってた人がいた。本当にそう。全員嫌い。僕のフォローフォロワーは全員好き。パンヤchに入ってきてくれた人なんて本当に大好き。大家族。
それ以外、街で歩いている人、職場の人間、職場に来るジジババ、その他初めて出会う人たち・・・
全員が嫌い。
だってお前たちはこの世界を作っている最悪な人間たちだから。お前たちこそが敵。
できることなら全員に一生消えない傷をつけて回りたい。社会に適応できない体にしてやりたい。一生快楽のない世界に堕としてやりたい。全員。
そんなことしたって何にもならないし、解決しないし、この疎外感をわかってほしいなんて思わない。ただこのくだらない世界を作り出している、何も知らない大衆を苦しめたい。



正欲の話に戻るんだけど、大好きな一節があるので紹介します。
『私はあんたが想像もできないような人生を歩んでるんだって叫び散らして、安易に手を差し伸べてきた人間から順に殺してやりたい。』
最高の文章だと思った。本当にそう。理解したような顔をして、共感したフリをして、実際には蔑んだような、異物を見る目で話をする。そういう奴らが無限に存在する。変な人間だなあって思って自分が普通だということを確かめたいだけのカス共。ぐちゃぐちゃにしてやりたい。

この作品では、マイノリティに対して、多様性多様性と言って理解を示そうとしていることに対して噛みついている。「多様性だね」って言って何でも理解した気になった大衆を嫌っている。
「多様性だね」って言葉さえかけられない人間が存在しているのに、そのことに目を向けられない。大衆はそんな存在は知らない。認知したらバカにするか逮捕するかで、それは多様性なんかではなく、異常者として扱われる。


常にこういう考えが頭を支配しているし、僕以外にもこういう人間がいるって分かっているから、自分でコミュニティを形成したいって思ったのかもしれない。
こんな記事を読んでいる人間は、僕みたいな異常者が多いだろう。そんな人は僕のチャンネルに来てみてほしい。異常者が集まっているから、キミでもマジョリティ側になれるかもしれない。




おわり

繰り返すけど、僕は上に書いたようなことを常に思っている。
仕事をしているとき、街に出て歩いているとき、なんかニュースを見てるとき。すべての人間が憎くてしょうがない。常に負の感情が僕を取り巻いている。

みんなはどう?人生終わってる?
俺だけが正しくて、間違った世界に生きてない?
そうなんだよ。間違っているのは世界の方。
キミは間違ってないんだ。


間違っている世界で生きている人には読んでほしい本だったし、もちろん正しい世界だと思い込んで生きてるカス共にも読んでほしい一冊だった。
映画版もNetflixで見られるし見てほしい。救いのないこんな世界では、生きていくのが本当に嫌だけど、この人生は誰にも見つからずに生きていくしかない。結局なにもプラスにならないし見ても問題は解決しないけどね。



以上、『正欲』感想でした。





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