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中島貞夫監督 逝去


中島貞夫監督のご逝去を知らされ、深い悲しみに包まれているところです。
ビクターのロビーであった監督は皮のベレー帽らしきものを被り、サングラス姿。
中島監督は、まさに自分の頭の中に描かれた中島貞夫監督そのものだった。
新作映画の音楽の依頼ということで、生意気にも監督に
「まず絵を見せてもらえませんか」
と問いかけたところ、不可思議な笑みを口元に浮かべ、
「いやまだ撮っていない、まず曲を書いてくれれば、映画はそれに合わせて撮るから」
と返された。
映画の世界とはそんなものなのかと唖然としている自分に、「鉄砲玉の美学」というタイトルともコンセプトともいうべきものを語りだしてくれた。
それから近くの店に河岸を替え、朝まで、鉄砲玉とは・・・の説明解説を延々聴かせてくれたものだった。
話を頭脳警察に戻せば、ファースト、そしてセカンドアルバムと正規の販売ルートを取れなくなってしまった。その監督の映画のテーマソングが入るだろうアルバムも、今度こそ発売禁止の憂き目には会いたくないという理由もあり、「ふざけるんじゃねえよ(仮)」という曲もレコ倫に提出するにあたり、自分でもこれはひどすぎるだろうという歌詞で埋め尽くした。
案の定、レコ倫から突き返されてきたので「ふざけるんじゃねえよ(仮)」のオリジナルの歌詞で再度提出。見事にというか、頭脳警察が歌詞を直してくれたということでスムーズに会議を通り、見事サードアルバムに入れられることとなった。
後日談だが、同じGAMレーベルのアイドル麻丘めぐみとヒット賞をもらうことになる。
【アルバム GAM-1001 麻丘めぐみ『さわやか』 GAM-1002 頭脳警察『頭脳警察3』】
それからずいぶんと時を経て、鉄砲玉の美学のリバイバル上映ということで、中島貞夫監督、主演の渡瀬恒彦さんとおなじ壇上に上がらせてもらい、上映後のトークショーに加えさせてもらった。
主演の渡瀬恒彦さんから、やたら低姿勢で椅子をすすめられ、この業界一の腕っぷしの強さを知られる男からのこれ以上ないくらいの低姿勢がやたら不気味で、笑顔でさえもホラー映画に見えてしまったのが笑えてしまえるエピソードだ。
そして渡瀬さんも他界し、いま日本映画界の黒金の柱ともいうべき中島貞夫監督も旅立たれてしまった。
ついついマーティン・スコセッシの、「グッドフェローズ」とヤクザ映画を同列視してしまう自分なのだが、日本映画界も哀しみに包まれていることだろう。
中島貞夫監督のご逝去にあたり、深く哀悼の意をささげながら、これからの日本映画を担っていく精気溢れるものたちにエールを送りたい6月の夕べです。

PANTA


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