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「ROCK飯」PANTAと歩く所沢グルメ街道 第5回 所沢街中華探検隊 幻の醤油焼きそば「栄華」

所沢に幻の焼きそばがあるという。
体調を崩し長期入院を余儀なくされたPANTA。
毎日、YouTubeでネットサーフィン。見ていたのはグルメサイト。
そこで見つけたのが「所沢 幻の醤油焼きそば」だった。
「今日は幻の探検だ!」
とPANTAは鼻息を荒くした。

「場所はわかるんだけどなぁ。初めてなんだよ」
PANTAはもう目をキラキラさせている。
「幻の焼きそばってなんなんですか?」
「Tマネ、所沢には名産『ところざわ焼きそば醤油』があるのだ」
と誇らしげに語るPANTA。
まぁ、焼きそばにはソースだけではなくて醤油味ってのもあったりするけれど、専用醤油が名物?
「所沢の老舗醤油店が焼きそば専用の醤油を開発したんだよ。で、所沢市内では醤油焼きそばを提供する店がたくさんあって、まぁソウルフードなんだな」
「PANTAさんも好物なんですか?」
「いや、食べたことはない」
はぁ〜?またあっけらかんとカラカラ笑うPANTAである。
運転する亀さんも思わずズッコケ、苦笑する。
「いやぁ、食事制限が厳しいし、そもそも食欲もなくてさ。グルメチャンネルばっかし見ていたら見つけたんだよ。でな、この醤油焼きそばを食すと開運するらしいぞ」
とニヤリ。
いやいや焼きそば食って幸せな気分にはなるとは思うけど開運はしないだろう。と察したように
「腹一杯、幸せな気分で開運祈願ってとこだな」
「なるほど。で、どのお店に?」
「栄華ってお店があるんだが、ここがさ、色々グルメ番組やバラエティで取り上げられてるんだ。場所はわかるんだけど入ったこともないし、たどり着くかなぁ」
「ネットで見るといい感じの街中華ですねぇ」
「ここの醤油焼きそばに目玉焼きをトッピングするのがいけるらしんだよ。しかし、所沢の街中華も奥が深いよな。街中華迷宮、幻の醤油焼きそばにたどり着けるかな」
クスクス笑うPANTAは中学2年生そのもの。
「ところでTマネは目玉焼きはソース派か醤油派かどっちだ?」
「僕は醤油派です。目玉焼きの黄身に醤油を垂らして、それを熱々のご飯に海苔で巻いて食べるのが好物です」
「ならば今日の焼きそばの醤油味に目玉焼きは完全食だな」
カラカラ笑うPANTA。
その時、車は見事に所沢駅周辺の渋滞に迷い込んだのだった。

醤油焼きそば「栄華」を前にニコニコのPANTA

この所沢駅周辺の渋滞。近くにある開かずの踏切の影響もあって実に厄介。動きが取れない上に横道に入ると一通で逃げ道なしの迷宮に迷い込む。
とはいえ長い療養生活で足腰が弱っているPANTAを歩かせるわけにも行かない。ここは渋滞に身を任せるしかない。ネットの情報ではそろそろ店の近くだが…。
「Tマネ歩こう。亀ちゃん、駐車場へ頼む」
と助手席のドアを開けると杖を片手に颯爽と歩き始めるPANTA。焼きそばへの溢れる思いを我慢できないらしい。路地を曲がると、果たしてそこに栄華はあった。
「なんという昭和の街中華…」
ここは三ノ輪か浅草かと見まがうばかりの店のたたづまい。これは不味いはずが無い。
絶品街中華の匂いがするのだ。
と、PANTAはもう暖簾をくぐっている。
「待ってください、PANTAさん。写真撮りましょう」
間も無く亀さんもやって来た。

「Tマネ!」
店に入るなりPANTAが叫ぶ。
「どうしましたPANTAさん?」
「カレーがあるぞっ!」
「はいっ?メニューにありますね」
「中華屋のカレーは美味いんだぞ!」
「はぁ、まぁ」
「よし、今日は醤油焼きぞばとカレーだっ!」
焼きぞばとカレー??ジャンクだなぁ(笑)。しかし、こんな味の濃い食事を食べられるってことはだいぶ元気になったのかな。良いことかも。
「では、焼きぞばとカレー。それに餃子といきましょう」
「なんだ、カレーに餃子とはTマネもジャンク飯だなぁ」
いえいえ焼きそばにカレーの方がジャンクですよと心の中で呟きつつ
「コーラを一つ」とPANTA用に頼む。

大ぶりで食べ応えたっぷりの餃子

餃子をパクつきながらPANTAが話し始めたのは、これまた突飛なエピソード。
「昔なぁ、水曜スペシャルから頭腦警察へ出演依頼があったんだよ」
「水曜スペシャルって川口浩とか藤岡弘の探検隊のやつですか?」
「そうなんだよ。フィリピンの孤島に行って現地の人の前でロックを演奏してくれっていうんだよ」
「なんですか、そのメチャクチャな企画?」
「なんでもな、フィリピンのモロ湾に撮影のために入ったオランダのロケ隊が行方不明なったんだって。で、オランダ政府からフィリピン政府に調査の依頼があって、フィリピンのレンジャー部隊が二機の輸送機に分乗し向かったらしいんだ。そうしたら谷あいから十字砲火で一機撃墜されちゃった。で、調査が滞っているのが現状らしいんだ」
「はぁ」
「Tマネ、谷あいからの十字砲火は旧日本軍のやりかた以外の何ものでもなく、残存日本兵なのか、訓練を受けた現地住民なのかも定かではないのだ」
「いや、いきなり歴史ミステリーですか?」
「まぁ、チェコ製のマシンガンを装備したモーターボートも徘徊しているらしいモロ湾の島に行って頭脳警察がロックを演奏して現地の人々と盛り上がるって企画だったんだよ」
「そもそもPA音響機器とか電源用の発電機とかどうやって持ってくんですか?海賊に狙われちゃいますよ(笑)」
「そうなんだよ(笑)。機材とかどうすんの?ってところから始まった打ち合わせなんだけど、現地に向かっていた台湾の水先案内人が行方不明になっちゃってさ。大騒ぎになって、それは無理だって俺が断る前に企画が無しになっちゃった(爆笑)」
「いやいや笑い事じゃありませんよ」
「全くバカな企画を考えたもんだけど、PANTA冒険隊って企画が続いたかもなぁ」

カレーライス、普通盛りです

とここでカレーライスが届く。
う〜ん、カレーだ。昭和のカレー。真紅の福神漬け。舌が赤くなるやつ。
そして、照り返すカレーのルー。
「この出汁の効いた感じが蕎麦屋とはまた違って中華屋のカレーは美味しいんだよなぁ。うん、咖喱って感じだな」
と、悦に入るPANTA。
「一口いただきます」
とスプーンですくって口に入れる俺と亀さん。あ、これはおいいしいやつだ。なんとも懐かしい味。妙にスパイスとか加わってない普通だけど今は普通ではないカレー。
昔、出前を頼むと来たカレーの味。いいなぁ、これ。思わずにっこりする感じ。

醤油焼きそば目玉焼きダブルトッピング


と、お待ちかねの醤油焼きそばの登場。
上に載っている目玉焼きが2個で端っこが焦げてる感じがまた昭和っぽい。醤油味だから刻み海苔がかかってるのも納得。鰹節がどっさりなのも醤油味だからだろうなぁ。
早速、箸を伸ばしたPANTAが目玉焼きをちょうど黄身と白身をバランスよく切り分けて焼きそばと一緒に小皿にとりわけ一口。とろりと黄身が流れて、いかにも美味しそうな感じ。
「うん、醤油味に卵の黄身の甘さが絡まって、卵かけご飯焼きそばって感じだぁ」
それは美味しいだろうと俺と亀さんもそれぞれ目玉焼きを半分づつ、最後の一口をPANTAに残してとりわける。これまた昭和の味。いいんだよ、味の素。俺は好きだぜ。

PANTA、ご満足!

「よし、TKGYSBと名付けよう」とPANTAがにっこり。
「なんですか、それ?」
「うん?卵かけご飯焼きそばの略だよ」とカラカラと笑うPANTA。
塩分多めだけど、PANTAの笑顔にほっと一安心する所沢昭和街中華のランチだった。

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