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生産型の消費者

街かどに本格のパティシエさんやブーランジェリーさんが個人でやっているパン屋さん&ケーキ屋さんがある…そんな風情がじわじわと定着してきたように思う。しかも、みなさん、ヨーロッパやアメリカの味を真似するんじゃなくて、自分の美味しいに凛として自信を持っていらっしゃる…日本のケーキや日本のパンとして国際的に胸を張れるような品質のものがさりげなく街かどに居る…カッコいい感じ。
そうしたことを背景にしてか、パリから(ショッピッング・モールなどではなく)あえて街場な商店街に出店する人も散見できるようになった。
で、そういうお店が増えてくると、ショッピッング・モールなどでは賃料やら、ロイヤリティやらの負担が大きかったんだなと、改めて思い知らされるようになる。

そもそも…

一億総中流の時代という、こっちがホンモノだって思っていても実はフェイクを掴まされてきた時代でもあったというわけ。高度成長期前半には、コーヒー・キャンディのCMソングの一節に「本場のコーヒーの味」っていうのがあったけど、本場のコーヒー味がする飴玉なんてあるわけがない。僕らもオヤジやオフクロたちも「本場のコーヒー」なんて飲んだことがなかったんだ。

すっかり騙されていた。

でも、ありあまる経済の高度成長っていうのは、それなりに人を育てたんだという側面もあった。バブルの経験も悪いばかりじゃなく、百害はあっても「一利」くらいの美徳はあった…。街かどの若いパティシエさんやブーランジェリーさんの登場は、そういった時代があったればこそ…という気がする。

でも、コロナ災禍からこれからの10年を、こうしたパン屋さん、ケーキ屋さんが持ち堪えられるかどうか。中流が総じて下流へと下っていく時代。やっぱり市場は液状化みたいなことが起こるんでしょう。知価生産に従事するKnowledge Workerは、より安定感を増していくだろうけれど、何せ彼らは少人数。散在する彼らの中から顧客を探すのは生半なことではないでしょう。情報発信といってもマス一辺倒でやってきたわけですから、一歩一歩、手探りで行かざるを得ないし、だから時間がかかる。

たぶん買い手である僕らも試されているんでしょう。ひっそりと、でも凛として居るパティシエさんやブーランジェリーさんを自ら発見し応援してあげられるかどうか。

トフラー先生曰くのprosumer、生産型の消費者ですね。

僕は街が好きだし、いつまでも騙されているのは嫌だから。リハビリ散歩ついでに、失敗覚悟で犬も歩けば棒に当たるを続けていきたいと思っている。

たいてい失敗だけれけれど、だからいいんでね。