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1961年公開の映画

特技で円谷英二監督が参加されているから、そういう意味では特撮映画なのかもしれない。主演はフランキー堺さんと乙羽信子さん(ご夫婦役)、その長女が星由里子さんで、彼女の恋人で若き船員役に宝田明さん、脇を固めるのは、山村聰さん、東野英治郎さん、笠智衆さん、上原謙さん(加山雄三さんのお父さん)などなど、当時、いわゆるオールスターオールスター・キャストで製作された作品だ。

映画「世界大戦争」(東宝)

1961(昭和36)年10月に公開されたこの映画は、東西冷戦の中、ついに両陣営による核戦争が勃発、世界中の大都市、もちろん東京も核の閃光に包まれ、溶解する…という、この作品は「当時」という時代状況の上に、原爆投下のわずか15年後に描かれたこそ、リアリティのあるフィクションだ。

大都市から避難しようとする人々の大混乱の中、フランキー堺さん一家は自宅に残り、最後の晩餐を開く。長女の星由里子さんは、再び長い航海に出た恋人に向け、覚えたてのアマチュア無線で最後のモールス通信を行い、洋上の恋人もそれに応える。「サエコ・サエコ・コウフクダッタネ」「タカノサン・アリガトウ」…

フランキー堺さんは夕陽を前にして二階の物干しから叫けぶ。「母ちゃんには別荘を建ててやるんだ! 冴子(星由里子さん)には凄い婚礼をさせてやるんだ! 春江(次女)はスチュワーデスになるんだ! 一郎(長男)は大学に行かせてやるんだ! 俺の行けなかった大学に!」

そのあとは、ミサイルの飛来から、東京が真っ赤に溶けていくシーンになり、雨の降り続く中、廃墟が映し出され、世界中のメジャーな都市も東京に続く。翌朝、洋上に宝田明さんたちの船は残っていますが、死に至る残留放射能を覚悟のうえで、夜明けの珈琲を飲みながら、全員総意で、東京へ帰ることを決意する。

山村聰さんは首相の役だが、最後まで世界に向けて、病身を押して公務を行い、両陣営の緊張をこれ以上高めまいと懸命の努力を行うといった設定になっている。
結局、東京は真っ赤に溶けていってしまうわけだg、それでも、好戦的にならない日本政府や日本人を描いた。それが当時の日本だった。

さて

当時の人々が、現在のこの国の状況を知ったらどう思うのか。
NTT株を売って武器を買おうとしている。武器を輸出しようとしている。
核戦争に対しての反対姿勢も曖昧だ。

宮沢喜一元首相は三木内閣の外相時代に

「日本は武器を輸出して稼ぐほど落ちぶれてはいない」

とおっしゃったんだという。

闘わない日本がステキに描かれた時代もあったという…
この映画も今となってはエピタフのような作品だ。

「世界大戦争」(1961年 東宝)
監督 松林宗恵
脚本 八住利雄/馬淵薫
音楽 團伊玖磨
出演 フランキー堺/宝田明/乙羽信子/星由里子/山村聡
東野英治郎/笠智衆/上原謙 他

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