いい風
10代、20代、30代と、あまりいい思い出はない。
ホントにない。
だいたい「中二病」をこじらせていたような
あの頃の僕を、僕は嫌いだ。
正直に生きていなかったなぁ。
自分を飾り立てていた。
自分にも他人にも。
でも、なぜか。
あの頃の楽曲のいくつかには、聴くと、美しいサウダージな気分に包まれて、脳内がα波で満たされるような気がするものがある。
ほんの数曲なんだけど。
いい思い出がないのに、なぜだろう。
何にサウダージなのか。
それに熱心に聴いていたとか、当時の僕に取って、マイ・フェイバリットだっという楽曲ではない。例えば、高校生のとき、映画研に頼まれて劇版に既存の音楽を選曲して、ウケ線を狙って普段はあまり聴かない…というか。バカにしていた楽曲を並べた、その中の一曲だったり、後輩から貰って一回ぐらいしか聴いたことがないカセット(当時)の一曲だったり。
でも、妙にいい気分になるし、いっとき「憂世」をすっかり忘れることができる。
最近は、そういう楽曲が十曲ぐらいはあるのに気づいてIPad にプレイリストをつくった。なんでだろうと腑に落ちないまま、気分は急速によくなっていく。少年時代を微笑みながら思い出して、いい気分になっていくような(散歩しながら、ホントに微笑んでいるかもしれない)。
なんなんだろうな。
共通点といえば、外面を意識して、わけ知り顔で評価していた楽曲じゃない。…ということかな。だって、評価してなかったわけだから。
それと
楽曲の内容やアレンジに惹かれているのではなく「歌声の質」みたいなものに、もっぱら右脳だけが感応している感じ。
あえて言えば、70〜80年代、あの時代の空気なのかな。
もっと開放的だったからね。空気が軽かった。あの頃に比べれば、この頃は、ずっと曇り空のようだ。
いい風も吹かないし。