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[読書感想文] ガニメデの優しい巨人

「星を継ぐもの」の続編とは言うものの、まあそこまで繋がってはいないんだろうと勝手に思っていた。舞台がサラッと数百年、数千年飛んだりするのかな、と。
が、めっちゃめちゃ繋がっていた!

というか、前作でチャーリーが見つかり、ルナリアンの存在が研究され、巨人もいたのでは…という、全てが研究と想像で語られていた、正直なかなか内容が難しくて理解が大変だったのに、今作ではなんとガニメアンそのものがドドンと登場!色んな秘密がガンガンわかってくる!

ひえ〜!話が全然変わってくるよー!というか全然変わった。前作に比べて、圧倒的に会話シーンが多いため、とても分かりやすい。というか分かりやすすぎて、理解する前に読み進めてしまいがちだった。結果としてあんまりわかってない可能性が結構ある。

このガニメアンはミネルヴァから出発した一団だったが、船の故障など何だかんだあって、放浪してる内にものすごい時間が経ってしまって、そのうち地球で人類が生まれ、宇宙に出るほど技術が発達してしまった。なので、ミネルヴァはもうないし母星の人々はどこに行ってしまったのだろうという謎が一応残っている。

でも前作に比べると、やっぱりガニメアンそのものが存在しているというのが強力すぎて謎解きよりも、異星人との交流がメインとなっているSF。

前作にも出てきたキャラクターたちが調査をしていたら、普通にガニメアンたちの調査船と遭遇し、一触即発かと思いきや、有能すぎるAIのおかげもあって意思疎通がサクサク進み、宇宙服越しではあるが地球人側の宇宙船でエンカウントまで済ませる。ガニメアンの宇宙船はだいぶボロボロだったので、まずはガニメデで修理をしようということに。

そこからはもうノンストップで交流が始まり、どんどん仲良くなっていく。あれ、このまま定住の流れ?

8フィートの身長をもつガニメアン。フィートだからピンとこないが、2.4mと言い換えると一気にデカさが伝わる。
見た目は想像するしかないが、体に鱗があったり角質化しているということで、岩っぽい見た目と想像している。だから、後半で地球に来て交流しているときに、目の前に来られると普通に怖くてみんな黙ってしまうというのがリアル。でも子供が気にせず握手を求めてそっからみんな慣れていくというのもまた良い。

そんな強そうな見た目のガニメアンは体の構造上、ちょっとした怪我で死ぬ。なのでめちゃめちゃ慎重で、更に怪我を防ぐために鱗や角質化された皮膚を持つ。そのために闘争心もない。闘争して怪我をしたら死ぬから。
軽い怪我で死ぬので争いなんてもってのほかなため、本能的に危険を避けようとする。

だが地球人は山登りをし、飛行機から飛び降り、そして戦争をする…
地球人は怪我しまくり、死にまくりではあるが、肝心なのはこの「危険と争う」という姿勢で、困難と戦って打ち勝っていること。
分からないことがあったら全力で解決しようとする、これが人類の発展の速度にも影響する。

ガニメアンは慎重だから、科学力がここまで発展するのにものすごい時間がかかった。が、地球人は数百年前には科学の字もなかったのに、今では宇宙を目指している。尋常なスピードではない。

このスピードの差がわかってきたガニメアンは、今はお客さんとしてチヤホヤされているが、近いうちにすぐ地球人はその存在に慣れ、色々と問題が生じてくることを予見し、去っていくことに。賢いけど悲しいなぁ。

しかし、タイトル通りの「優しい巨人たち」であるガニメアン。優しすぎて、地球人がなんかやらかさないか心配で仕方なかった。というか、絶対これ後半で地球人がテロとか誘拐とか殺人とかそういうのをガニメアンにやらかしてガニメアンたちが宇宙に逃げていくとか、絶望的な終わり方をするとかそういう流れだろ!って思ってずっと勝手にハラハラしていた。

結果的に、ガニメアンたちが地球人の暴力的な歴史や性格を発見し、ちょっと不穏なところはあったものの、地球人たちは平和な交流をしたし技術力が格段に上昇したし、ガニメアンはそもそも宇宙船が直って生存できたし、元のミネルヴァのガニメアンたちが移住した星の手がかりがわかって完全に両者得るものしかなかった。

ガニメアンの使っているAIであるゾラックが結構メインキャラクターしている。最初は英語や地球の文化、科学の勉強を始めたところでたどたどしい話し方だったのが、後半ではもうジョークも普通に使い始めるわ、これまでの研究の情報から新しい仮説をガンガン導き出したり、ハントがこういうと思ったから、と勝手に人の会話を録画してたりと好き放題。
これはいなくなったら喪失感すごいぞ。

さて、続きの「巨人たちの星」を読むか。これはきちんと続いているのか、今度はやっぱり数万年後とかになるのか…?


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