見積りは意思決定のために。計画づくりは気持ちを繋げるために。

 仕事には見積りと計画づくりがほとんどの場合、欠かせない。ただし、「見積りは意思決定のために。計画づくりは気持ちを繋げるために」に至るまでには、いくつかの段階がある。

見積りと計画づくり1.0

 仕事を始める前に緻密に見積りして、詳細な計画を立てる。勿論大変な作業になる。でも大丈夫だ、この作業をやるのは最初の1回だけだからね。というわけで、容易に計画が変わらないようにWBSなどの管理表に焼き付けておく。現実が計画から乖離し始めただって?現実を計画に合わせるために手を打つんだ。

見積りと計画づくり2.0

 プロジェクトの最初に行う見積りは正確性が低いものだ、その結果、計画の通りにはいかない。…ということを受け入れて、むしろ見積りを計画づくりを頻繁に行おう。何かプロダクトを作っているならば、リリースに向けて(3ヶ月〜半年くらいか)と、一・二週間単位と、今日一日での計画づくりを行うと良い。一日の結果は、一・二週間の計画に影響を与え、一・二週間の結果は、リリースに影響を与えるだろう。結果と見積りを照らし合わせて、次の計画作りに活かそう。少しずつ見積りの正確性はあがっていくはずだ。

見積りと計画づくり3.0

 頻繁に見積りと計画づくりをしていると、その分のオーバーヘッドが大きくなってくる。チームは成熟してきている。細かい見積りや計画づくりをしなくたって、ベストエフォートでも結果がきちんとついてくる。結果が同じなら、見積りと計画づくりの作業を省いた方が良いだろう。「チームがベストを尽くしているって、どうやって分かるのか」だって?もう、その問い自体が終わってるよね。チームを信ぜよ、さらば救われん。

見積りと計画づくり4.0

 とまあ、見積りと計画づくりについての解釈は様々取れる。その上で、冒頭の「見積もりは意思決定のために。計画づくりは気持ちを繋げるために。」に戻ろう。

 チームに、プロダクトオーナーや事業責任者がどっぷり入っているようであれば、やはり見積りは行った方がいい。それは意思決定のためだ。ある期間である機能範囲が開発できる可能性が高いと見立てられた時、プロダクトや事業の観点から戦略的に実現するものの優先度を変える判断がありえる。

 例えば、想定していたよりも実現が困難で、リリースできる機能の範囲が少なくなると見立てられた場合、従前の期待に従いムリに押し込もうとするのではなく、むしろ複雑な機能については後に回してしまおう、とかね。優先度の並びは現実には1本きりの線形ではないので、見立てによっては大幅に入れ替える可能性もある。プロダクトオーナーや事業責任者の関与が薄いようだと、こうした観点でのダイナミックな優先変更が入る可能性が低いため、3.0のスタンスもありえる。

 計画はチームで仕事をする場合の北極星(目指すべき目標、焦点)になりうる。特にチームメンバーの環境がそれぞれで分散しがちな場合(リモートワーク)など、何らかの求心力が欲しくなる。この1ヶ月で何を実現するために我々はここにいるのか、がはっきりしていると各々が自律的に動いていける。そういう意味で「計画づくりは気持ちを繋げるために」行う。

 繋ぎ止める気持ちとは、チームの間だけに限らない。自分自身のも含まれる。人の集中、注意とは有限なリソースである。3ヶ月、半年、1年...ベストを尽くし続けよ!というのは、言葉としては勇ましいが実際のところ現実的ではない。人の集中にも、濃淡が必要だ。計画は、いつ頑張るか、織り込むことができる。そういう意味で「計画づくりは(自分の)気持ちを繋げるために」行う。

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