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これまでの仕事、これからの仕事

 もし、明日不慮の事故に遭い、この世を去るとしたら、この本は「遺書」になるのだろうと思った。書きながら、そんなことを感じたのははじめてのことだった。自分の中にある「仕事」について、言い残したいことをぐつぐつと煮詰めた本。それが「これまでの仕事 これからの仕事」だ。

 現場、チームのこと、プロダクト作りのこと、組織のこと、これまで何度となく変遷してきた語るべき対象は、「仕事」の考え方、方法、込める思いへと言った。アジャイル開発、仮説検証、デジタルトランスフォーメーション、組織アジャイルと切り口は様々あるが、そこにある重なりを一つ取り出してみると、共通するものが見えてくる。

 この本は「アジャイル」についての本と言える。ただし、これまで「アジャイル」を説明するために用いてきた、いつものあれこれを引っ張り出してくることはしていない。
 「これまでの仕事」と「これからの仕事」というFrom-Toを得るための橋渡しの役割として、アジャイルを用いている。そう、語る対象はアジャイルそのものではなく、私たちがいかにしてまともで充実した日々を送れるかだ。

 考えてみれば「アジャイル」をどのようにして語るか、どうすれば伝わるのか、ということに20年以上を費やしてきた。結局のところアジャイルとは何なのか。ときに概念的で、ときには単なるタスクマネジメントとして誤解される。この本質をどこに乗せれば、もっと理解が得られるのか。

 その手がかりはもっとも手近なところにあった。私たちの、仕事そのもの。日々向き合う仕事で表現できないとしたら、アジャイルとはやはり「ソフトウェア開発」というあくまで限られた世界の中の話になる。しかし、私たちが期待したことは、そうではない。私たちの日常をきっとより良く変えられるという思いにほかならない。

 この本は、そんな思いを残したくて書き記した。


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