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【2024年2月】先月聴いた中でお気に入りのアルバム

 こんにちは。毎月その月聴いたアルバムの中からお気に入りの作品を紹介するってことをインスタでやってたんですが、今回からnoteにやっていこうと思います。理由はインスタの投稿の文字数で収まらなくなったからです。決まった枚数選ぶわけではなく、新譜旧譜も混ぜ込んでます。なので新譜レビューみたいな感じではないのでご了承ください。

新東京『NEW TOKYO METRO』(2024)

 超実力派バンドの技術と圧倒的センスがギュッと濃縮されたアルバムでした。ギターレス4ピースバンドの限界に挑むような攻めた演奏とそれをまとめ上げる音作りのこだわりがとても感じられました。全体を通してどのパートもいい意味で生々しく聞こえてきました。2曲目《Escape》から7曲目《Waste》まで曲が途切れなく繋がっていて、次から次へとイケてるコンビネーションを繰り出してくる様はとてもワクワクしました。作詞もまた強烈なワードセンスが爆発していて、難しい熟語から特殊な言葉も使いこなす懐の広さはとても驚きました。

柴田聡子『Your Favorite Things』(2024)

 土台がしっかりしている上に言葉とメロディーが軽やかに飛んでくるキャッチーなアルバムでした。全体的にリズムとベースがハッキリしているのでそこから生まれるグルーヴ感が気持ちよかったです。またそこに展開がAメロやサビという区切りが曖昧気味になっている構成や、ポップでちょっと不思議で独特な言語感覚の歌詞と混ざり合うことで奥行き感と多層的な深みが感じられました。その他にも様々な要素が練りこまれていますがどれもサラッと聞き流せる滑らかな肌触りにまとめられていて、かつ耳に確実に残る完成度の高い作品です。肩ひじ張らずに何度もリピートできる魅力と中毒性がありました。お恥ずかしながら今回初めて知ったアーティストなのでまた旧譜も聴いていきたいです。

野口文『botto』(2023)

 様々な要素が入り乱れ溢れかえっている破壊力のあるアルバムでした。エレクトロであり、歌謡的な瞬間もあり、ヒップホップが飛び回るところにジャズがあり…全てがアバンギャルドでカオスな実験的空間なのに息苦しさや意味もなく訳の分からない雰囲気がなく、どれもキャッチーで聴きやすかったです。曲ごとにジャンルもガラッと変わればゲストボーカルも入れ替わるので、ずっと新鮮さが続いてました。そこにこれまた鋭さをもったシニカルな歌詞が融合して、楽曲全体のパワーを何倍にも増幅させていました。結構刺さりました、色んな意味で。これにしかないある種奇妙な不規則性と調和が楽しめる作品です。Youtubeでアップされている自宅でのレコーディング風景の動画も楽しそうでよかったです。

5kai『行』(2023)

 オルタナでありながらも全く新しい音楽スタイルを見せられました。ツインドラムからなる絶妙なリズムのズレ、ハイトーンがメインのベース、ふわっと現れるフィールドレコーディング、グリッチサウンドのような奇天烈なギターなどとにかく聞き込むほど仕掛けがたくさん出現してくる作品でした。でもそれらがしっちゃかめっちゃかで混みあってるわけではなくむしろ作品全体はとてもミニマルで、乱雑と整列の絶妙な隙間を射抜いてくるようなサウンドでした。曖昧で輪郭がぼやけた哀愁漂う楽曲の中にも、ミックスがとても丁寧にされているのでフレーズやメロディーの美しさがしっかり溶け合って不思議な世界を構築していました。全体が大人しい曲達で構成されたアルバムなので思わずなっているサウンド一つ一つに耳を傾けてします没入感もありました。

冥丁『古風Ⅲ』(2023)

 正直な第一印象、怖かったです。何か見えてくる風景全体がモノクロで、ほんの少し不吉な予感がする雰囲気なのが漂っていました。けどこの作品を調べると、それはこのアルバムコンセプトが明確に表れている証拠なのかなと思いました。古来からある日本の神秘的な空気感を現代的アプローチで蘇らせるというユニークなアイデアがここまで感情に響くものになっているのはとてもすごいなと思いました。聴くほどに前述したおどろおどろしい空気だけでなく、自然ゆたかな原風景や古い様式の生活の一片のようなエッセンスも感じました。全体的なローファイの質感も心地よかったです。こちらは『古風シリーズ』の最終作のようなので前作2作もまた聴いていきたいです。

kauai hirótomo『Anothe Galaxy』(2019)

 現在ドハマり中のバンド・山二つのドラマーのソロ作品。創作意欲にあふれたとても色彩豊かなアルバムでした。マルチ奏者の技はどこをとっても一級品で、即興的な趣があるインストでは特にその演奏力がはじけとんでいます。繊細ながらも様々な楽器やコーラスを重ねて、まるでオーケストレーションのような厚さと迫力が生まれていました。少しハスキーで擦れがかったようなボーカルに過干渉しないアコースティックな響きが心地よく、相性ばっちりでした。平均的に1曲の長さが短くそれでいて様々な楽器が出入りしながら緩やかに流れていくので、楽曲から受ける上品で静かな印象以上の情報量と体感値が楽しめる作品だと思いました。

pomodorosa『pomodorosa』(2020)

 ボサノヴァをベースとした落ち着いた雰囲気のアルバムでした。急に早口で回して日本語を外国語のように聞かせたり、英語と日本語を独自の感覚で混ぜ合わせる歌詞などユニークな手法がたくさん織り込ませていました。それがボサノヴァと日本語の相性をよりよくしていてかつ独創性の高いものになってるのではないかなと思いました。途中全歌詞ポルトガル語(?)の楽曲も出てきます。ボサノヴァライクのナンバーが目立ちますが、打ち込みを多用した渋谷系サウンドの楽曲も収録されており、そこのバリエーションも楽しめる作品でした。先月に出た新譜もジャンルはガラッと変わりますがよかったのでそちらもお勧めです。

Pola『Pola Meets Lyrica』(2005)

 有象無象の音像が静穏ながらも強い存在感で次々と奏でられる不思議な作品でした。まるで地下水道のような奥行きと閉塞さがアルバム全体に流れていて、別世界に入り込んだようなSF的雰囲気と没入感がありました。楽曲の構成はどれもミニマルで、退廃的でありどこか幻想的な本作のイメージを最大効率で表現しているかのように思えました。何かが主題とか、一貫したテーマがあるというよりもただこの曲が流れている世界はどんな場所だろうか。目の前に現れるこの空間をどう歩いていくか。そんな想像力を掻き立てられる楽しい作品です。激しくはありませんが音の迫力がゾクゾクするので室内でじっくりイヤホンなどで鑑賞したいアルバムです。

その他の短編ズ『Conga』(2016)

 音数が少ないながらも土着的で肉体的な音楽が楽しめるミニアルバムでした。登場する楽器はほんとに数個だけですがミニマル感はなく、メロディーはありながらもリズムを重視しているような演奏だなと感じました。ツインボーカルの掛け合いも絶妙で、ヒップホップでもポエトリーリーディングとも言い難い独創的なテンションでした。個人的にはそういったポップスではなく、例えば詩吟みたいな伝統芸能のようなニュアンスを強く感じました。または児童唱歌や輪唱のような歌い方もチラッと感じました。総じて日本人的と言いますか、日本人特有のエッセンスが自然と気持ちよく響いてくる作品でした。コンパクトながらもクセとアイデアがギュッと詰め込まれていました。

H.Takahashi『Low Power』(2018)

 ミニマルに洗練されたサウンドが印象的で穏やかで全体のエッジが丸い作品でした。音の数は最小限に抑えられていて、その音の質と配置で最大限の効果と立体感を楽曲に与えています。空間に余裕をもたせるギャラリーや美術館のような静けさと上品さに似たような雰囲気があるなと思いました。この引き算というかわびさびな考え方と表現の仕方が日本人らしい感性が表れているのかなと感じました。聴いている空間に溶け込むような爽やかで透明感のあるメロディーが心地よく、物憂げながらもどこか安心感のある穏やかな作品だなと思いました。ジャケ写に描かれた人物(?)の脱力したような淡い配色の絵もかなりお気に入りです。

小沢健二『Ecology of Everyday Life 毎日の環境学』(2006)

 電子的なサウンドとあらゆるアコースティック楽器のコンビネーションが気持ちいい一枚でした。全編インストの作品ですが、それぞれの楽器が奏でるメロディーがキャッチーで、それぞれが互い違いに重なり合って生まれるグルーヴ感がたまらなかったです。度々登場する木琴やコンガなどのパーカッション群がよりナチュラルな雰囲気を演出していて、どこか異国情緒を感じさせる場面もありました。でもそこがあくまで情緒を引き出す程度で抑えられていて、ドキュメンタリー番組や自然の本を読んでいるような、一枚何かを挟んだ目で見た自然が映し出されるニュアンスがちょうどよかったです。そういった加減の調整がこの聞きやすさに繋がっているのかなと思いました。

 以上。先月聴いたアルバム一覧のリストです↓

 今月は新譜よりも旧譜の方が個人的にグッとくる作品が多かったです。あとはAPPLE VINEGAR –Music Award-にノミネートされた作品も聴いていきました。去年は新譜を一枚も聞き逃さないぞという意気込みだったのにノミネートされた作品の半分以上が聴けてなかったです。まだこんなにたくさん良作があったなんて。リサーチ不足、反省です。一生音楽好きを名乗れない気がしてます。まぁそんな肩書あったらあったで何にもなるわけではないですけど。そんな感じです。


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