大阪府の「私立」高校授業料完全無償化に思うこと

 つい最近,大阪府の吉村知事が打ち出してる高校授業料無償化施策に対して,近畿2府4県の私学連合会が反対の意向を示した。所得制限撤廃に伴う追加無償化分を私立高校に負担させるとか,大阪府外の私立高校にも大阪在住の高校生に対してだけ負担させるとか,反対するのは至極当然である。

 そもそも私立校は公立校に対する選択肢であって代替ではない。国民の教育は基本的に公がその任務を負うもの。従って,端的に言えば,私立高がなくても,公立校で国民の教育レベルを上げる事が責務。私立校は,公立校に対する選択肢として,例えば,「歴史・伝統」「超難関大学進学」「スポーツ強化」「宗教」など,公立校にない「特色・理念」も持ち合わせて教育運営されてるのが一般的である。従って,公立校の授業料を上回る私立高の「オプション料」は自己負担が原則であり,公金で助成するのは公教育の否定に他ならない。

 この話,中学校と高校で分けて考えれば簡単なことで,公立中学校の授業料は義務教育ゆえ無償であり,自らの意思で進学した私立中学校の授業料を行政・自治体が助成してるという話を聞いた事がない。高校は義務教育でないから「公立高校進学」「私立高校進学」「中卒社会人」のいづれかの道に進むことになるが,自治体として高校教育を義務教育相応に重要と鑑みて無償化を施策とするのであれば,公教育である公立高校進学者に限るのを基本とすべきである。ここで「基本」と書いたのは,私立高校進学者には,自らの意思で進むものもいれば(第一志望高,単願志望校),公立高校の受験に失敗して進むものもおり(滑り止め高),後者については無償化助成を配慮する余地があるかも知れない。ただ,無償化施策が義務教育相応指向なのであれば,中学校同様に,全入学できる公立校整備を図る事に公金を投入すればいいのであって,公立高校を減らして代替的に私立高校に投入するのは筋違いである。先にも書いたが,自治体が必要と考える教育の基本を担うのは公立校であるべきなのである。

 そもそも,大阪府は私立高校の無償化施策を打ち出しているが,概して,関西で超難関校や伝統校と言われる私立高校の多くは中高一貫校で,その中学校の入学金・授業料は自己負担であり,また,関西では小学校,中学校,高校で学習塾に行くのが「日常化」しており,これらの学校受験のために,小学校の時から通っているであろう学習塾代も自己負担と考える。したがって,これら費用を自己負担できる家計環境にありながら,高校に内部進学したとたん「無条件(所得制限なし)」に「公(自治体)の方針」で授業料が無償となるのは,公権力で経済格差を助長してるに他ならないなのである。

 全国を見渡せば,公立中学校・公立高校から,超難関大学に進学するもの,全国スポーツ大会に出場するもの,社会的地位を築くものなど,私立中学校・私立高校に行かなくても,結果的に同じ位置,あるいは,それ以上の位置に進んでいるものが数多くいるのが現実である。公金を高校教育に投じるのであれば,「選択肢」の私立高校よりも「基本」の公立高校に行きたいと思わせる施策を打ち出すべきで,大阪府の私立高校授業料無償化の施策は,自治体としてはその任を放棄してると言っても過言ではない。

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