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【メキシコの詩人の翻訳】オクタビオ・パスの詩「La calle(ラ カジェ:通り)」をスペイン語から日本語へ翻訳する

ラテンアメリカ文学と翻訳が好きです。

今回は、ぼくが18才の時に読んだ本で出会った詩人「オクタビオ・パス」と彼の詩をひとつ翻訳します。

詩人紹介:オクタビオ・パス

Octavio Paz Lozano:オクタビオ・パス・ロサーノ
メキシコシティ生まれ
1914/3/31 – 1998/4/19
外交官・作家・詩人


スペイン語の詩を日本語に翻訳


通り

それは、長く静かな通り。
私は暗闇の中を歩き、つまずき、倒れ、起き上がる。

私は盲目の両足で、沈黙する石と乾いた木の葉の上を歩く。
そして、私の後ろにいる誰かが、同じように石と葉の上を歩く。

私が止まると、誰かは止まる。
私が走ると、誰かは走る。

私は振り返る。
誰もいない。

全ては暗く、出口がない。
そして、私はいつもの通りの街角を引き返す。
だれも私を待っていないし、誰も私を追ってこない、その街角を。

そこで私は、ある人間を追いかける。
そいつはつまずき、立ち上がり、私を見て言う。
誰もいない
と。


スペイン語本文と発音と日本語翻訳文

La calle
ラ カジェ
通り

Es una calle larga y silenciosa.
エス ウナ カジェ ラルガ イ シレンシオサ。
それは、静かで長い通り。

Ando en tinieblas
アンド エン ティニエブラ
私は暗闇の中を歩く

y tropiezo
イ トロピエソ
つまずく

y caigo
イ カイゴ
倒れる

y me levanto
イ メ レンバント
起き上がる。

y piso con pies ciegos las piedras mudas y las hojas secas
イ ピソ コン ピエス シエゴス ラス ピエデュラス イ ラス オハス セカス。
私は盲目の両足と一緒に歩く。沈黙する石と乾いた木の葉の上を。

y alguien detrás de mí también las pisa:
イ アルギエン デトゥラス デ ミ タンビエン ラス ピザ。
そして、私の後ろにいる誰かが、同じように石と木の葉を歩く。

si me detengo, se detiene;
シ メ デテンゴ、セ デティエネ
私が止まると、誰かは止まる。

si corro, corre.
シ コロロッ コレレッ
私が走ると、誰かは走る。

Vuelvo el rostro: nadie.
ブエルボ エル ロロストロ。ナディエ。
私は振り返る。誰もいない。

Todo está oscuro y sin salida,
トード エスタ オスクーロ イ シン サリーダ。
全ては暗く、出口がない。

y doy vueltas en esquina que dan siempre a la calle
イ ドイ ブエルタス エン エスキーナ ケ ダン シエンプレ ア ラ カジェ
そして、私はいつもの通りの街角を引き返す。


donde nadie me espera ni me sigue,
ドンデ ナディエ メ エスペーラ ニ メ シーゲ。 
だれも私を待っていないし、誰も私を追ってこない、その街角を。

donde yo sigo a un hombre
ドンデ ジョ シーゴ ア ウン オンブレ
そこで私は、ある人間を追いかける。

que tropieza y se levanta y dice al verme: nadie.
ケ トロピエサ イ セ レバンタ イ ディーセ アル ベールメ。
ナディエ。
そいつはつまずき、立ち上がり、私を見て言う。
誰もいない
と。

スペイン語原文

La calle

Es una calle larga y silenciosa.
Ando en tinieblas y tropiezo y caigo
y me levanto y piso con pies ciegos
las piedras mudas y las hojas secas
y alguien detrás de mí también las pisa:
si me detengo, se detiene;
si corro, corre. Vuelvo el rostro: nadie.
Todo está oscuro y sin salida,
y doy vueltas y vueltas en esquinas
que dan siempre a la calle
donde nadie me espera ni me sigue,
donde yo sigo a un hombre que tropieza
y se levanta y dice al verme: nadie.

引用:5 poemas de Octavio Paz(zenda)
https://www.zendalibros.com/5-poemas-octavio-paz/


15才のぼくと鶴見俊輔とオクタビオ・パス

ぼくは15才のとき、高校を中退しました。
そして、答えを探すようにいろいろな本を読みました。

ぼくの本の読み方は、好きな人物を見つけて、その人が紹介している別の人物の本を読んでいく、という方法でした。

その好きな人物の一人目が、プラグマティズムを日本語に持ち込んだ哲学者、鶴見俊輔でした。

数年後、哲学者の鶴見俊輔と詩人の長田弘がシリーズの本を出版します。
そこに紹介されていた世界中の数々のラテンアメリカ文学の詩人たち。

その中の一人が「オクタビオ・パス」でした。

ぼくはスペイン語を習得することを決心します。
18才のときのこと。


敬愛するオクタビオ・パスと、ラテンアメリカ文学へ。
そして、彼らへ導いてくれた敬愛する哲学者、鶴見俊輔へ捧げます。

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