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源氏物語とフラワーエッセンス〜浮舟 2

前回、浮舟に手渡したいフラワーエッセンスはどれかというところまで書きました。それぞれの詳細を書く前に、ひとつの和歌について書いてみたいと思います。

たちばなの 小島は 色もかはらじを この浮舟ぞ ゆくへも知られぬ

源氏物語 第51帖 浮舟

橘の小島の緑が変わらないように、お約束してくださる心は変わらないのでしょうが…、この宇治川に浮かぶ小舟のような私は、一体どこへ漂っていくのでしょう…という意味の歌で浮舟が匂宮に詠んだ歌です。

浮舟と匂宮の逢瀬もこんな平安文学の耽美な世界だったのかな

この歌の中にある『浮舟』という言葉から51帖の帖名は『浮舟』になり、姫君も『浮舟』と呼ばれることとなりましたが、本当に入水前のユラユラと心許なく生きる彼女をとてもよく表現している歌だあなぁと感じています。

ではスターチューリップ、クレマチス、ウォーターヴァイオレットそれぞれについて書いていきたいと思います。


浮舟に手渡したいフラワーエッセンス

スターチューリップ

 スターチューリップは朧月夜に渡したいエッセンスの1つとして以前か書いたことがあります。

朧月夜にも浮舟にも共通しているのは、男性を惹きつける『性』的な魅力がとても強く、でも最終的に潔く出家して『聖』に転ずることです。
薄い紫の色のこのお花から、私は高貴で神聖なイメージを持つため、『聖』を生きようとする人に手渡したくなるのだと思います。
(朧月夜の君も朱雀帝の寵愛を受けながら、光源氏とも関係が続きます)

写真の帰属 © Morgan Stickrod
https://www.inaturalist.org/photos/127114939

スターチューリップについて『フラワーエッセンスエッセンス辞典』には「心の硬直した状態をやわらげ、内面の精妙な声に耳を傾ける受容性をとり戻すのを助ける。」という説明の一説があります。

出家前の浮舟は、自分の心の声を聞くことができず母や男性のなされるがまま、そんな彼女が出家後やっとおぼつかない足取りで自分の心の、魂の声に耳を澄まし歩んでいく人生を生き始めました。

まさに今まで耳を傾けることができなかった自分自身の内側からの精妙な声にしっかりと耳を澄まし、浮舟が浮舟の人生を歩んでいくことを助けてくれるのではないでしょうか。

クレマチス

クレマチスは以前夕顔に選んだエッセンスのひとつです。
夕顔と浮舟も、儚げで透明感溢れ、頼りなげで心許ない感じ、そして2人の男性になされるがまま。というところが共通しています。

エッセンスとしても、バッチ博士が「夢見がち、眠たげ。しっかりと目が覚めていない。人生にあまり興味がない。」と言っている通り、どこか浮世離れしていて、心ここにあらずで、現実感がない人に、必要なエッセンスです。

でも出家後力強く行き始めた浮舟は、クレマチスのもう1つの側面である『表面からは見えない根を地中に深く張り、つる性の逞しい茎をしっかり支柱に巻きつけて、望む広い空へと自分を持ち上げていく』を体現するように、本当の自分を知り、自分らしい道を見出していくことができる。

夕顔は、心許ないままこの世を去ってしまったけれど、浮舟が夕顔と違うのはその強さだと思います。

Observation © Alexishttps://www.inaturalist.org/observations/128677796

ウォーターヴァイオレット

こちらも以前、光源氏の永遠の想い人である藤壺の宮に渡したいエッセンスとして選んだひとつです。

藤壺の宮は冷泉帝の母になった後、非常に強く逞しい女性に変貌しますし、その女性としての成長と、気高く孤高な美しい生き方が浮舟とどこか似通っているように個人的には感じます。

Observation © Юрій Бенгус
https://www.inaturalist.org/observations/125352128


バッチ博士はウォーターヴァイオレットについて「健康な時も病気の時も1人になりたがる。大変静かで物音を立てず、あまり喋らないが話す時は大変穏やかに話す。非常に独立心が強く能力も高く自分に信頼を置いている。他人の意見には左右されない。人々から離れて自分の道を行く。賢く、才能がある人であることが多い。彼らの穏やかで落ち着いた雰囲気は周囲の人々にとって恵みである。」と書いており、まさに出家後の浮舟の姿そのもの。

でも、ウォーターヴァイオレットはそういう人が、その美しさや気高さを保ちつつ、恐れを超えて他者と関わっていくことをそっとサポートしてくれるエッセンスです。
『個として』生きる人と手を取り合い、『個としての女性』として生きる今はまだおぼつかない足取りの浮舟を、そっと護り導き支えてくれるに違いありません。

徒然なるままに


源氏物語を改めて読んでいると、この長い物語の集大成の女性が浮舟であることに感動を覚えます。

彼女が出家という形で「わたしを生きてみせる」を叶えつつある中で、紫式部は源氏物語を終えています。

1000年も昔、わたしを生きよう、と心から願ったときには、出家するしかなかったのかもしれません。
でも、今現代は、出家せずとも「わたしを生きてみせる」ことと「あなたの心を触りたい」の両方を叶えることができる時代だと信じています。

ひとりひとりが、それぞれ魂が願うままの唯一の人生を紡いでいけますように。そして唯一の人生を紡ぐ人同士が心を触れ合いながら生きていくことができる世界でありますように。


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