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3日目 ~ヤギとご飯とBBQ~

 起床。友人hの手により7:10に起こされる。
 あれ?確か6:10にアラームをかけ、一度起きたはずなのだが………。……まぁ、絵の具を使う時とかも二度塗りをすると良いし、二度寝も悪いことじゃあない。串カツのソースの二度漬けは御法度だけど。

 ベッドに別れを告げて着替えると、おばあちゃんが既に朝食を用意してくださっていた。
 お盆とプレートを足して2で割ったような面白い器に、色々な料理が載っている。当然どれも美味い。
 そうそう、デザートが面白かった。おそらくは杏仁豆腐だと思うのだが、妙にモチモチしていて、仄かに豆の甘味がする。アレはなんだったのだろう……。何にせよ美味かった。

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 朝食をいただいた後は、民泊先のNさんの旦那さん(以下おとうさん)に投網(文字通り投げることで、魚を捕る網)をしに連れて行ってもらった。
 おとうさんは他の生徒の民泊も担当していたので、その生徒たちとも合流して港へ行くことに。


 
 投網は広げると釣鐘型の様になっていて、投げるとひとりでにブワッと広がって、魚を捕らえる包囲網になる仕組みだ。
 私は以前これを「釣りキチ三平」という漫画で見た事があり、実際に投げれるとなってもう気分は最高、マックスハイテンション!!

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 まずはおとうさんのお手本から。細く畳んだ投網を手に持ち、三分の一は肩にかける。もう三分の一はもう片方の手に持ち、振りかぶっていっぺんに投げた!
 鮮やかに広がる網。恐らく網を3点に分配して投げることによって、上手く広がる仕組みになっているのだろう。

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 お手本を見た後は、我々の番だ。おとうさんに網を持たせてもらい、いざ初投げ。
 脳内でお手本をリピート再生する。きっと、投げる際に大切なのは手ではない。腰の回転だ。振りかぶった反動を利用し、腰と背中のひねりで放り出す様に投げる__________

 
 ________円形を描き、水面に着地する投網。やった!広がった!! 魚は獲れはしなかったが、難しいと聞いていた投網を一発で広げられてめちゃくちゃ嬉しかった。おとうさんにも褒めていただいた。

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 その後、おとうさん含む皆で漁師さんの家へ魚や海産物を見せてもらいに。

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 まず見せてもらったのは、立派な伊勢エビ。4匹で1.5kgとかなりのサイズ。そして、ナンヨウブダイ(イラブチャー)、タカサゴ(グルクン)、イシガキダイなど、沖縄といえば!!な魚が沢山。

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どれも水族館や図鑑で見たことはあっても、実際に食用としてお目にかかれたのは初めて!
 よく見ると体に穴が穿たれている。漁師さんによると、これらはどれも「水中銃(銛が自動で発射される装置)」を使って、潜って獲ったらしい。






  …………………これら全部?!
 今一度魚の量を確認し、目を疑う。 

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 スーパーの買い物カゴより、二回りは大きいクーラーボックスがいっぱいになる程の量の魚。これら全部を、網も竿も使わず一人で………。


 やっぱり漁師は半端ねぇ。

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 今度は、シークワーサーを収穫しにNさん宅の畑(?)へ。
 向かう途中に、アダンの実(1枚目)や島バナナ(2枚目)、それから月桃(お皿代わりなどに使われる葉っぱ。消毒作用もあるらしい)など、いろんな植物を紹介してもらった。

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 それから、少し歩くと動物園のような匂いがして。おとうさんの指差す方を見ると、そこにはヤギ小屋が。

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 なんでも伊平屋島では、お祝いの際にはヤギの肉を食べるらしく、ヤギを飼っている農家も割といるのだとか。
 羊は食べた事があるが、ヤギはない。一体どんな味がするのだろう。刺身で食べることもあるらしい。機会があれば是非いただいてみたいものだ。

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 ヤギ小屋から更に数分歩いて、Nさん宅のシークワーサーの木へたどり着く。いざいざ、収穫の時間である。
 結構沢山の実がなっていた。密度で言うと、ラッシュの時間から1時間ズレた東西線くらいか。とはいえ、皮の色は緑に近く、葉っぱと混じっている。見つけるのはなかなか困難だ。
 そして、実を回収するのも結構難しい。枝との結合部分はかなり頑丈で、慎重に採らないと皮が枝側に持ってかれて、実が剥き出しになってしまう。ガサツで注意力が無いことに定評のある筆者には、なかなか困難を極める作業であった。

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 だが班の皆で採った成果もあり、バスケットいっぱいのシークワーサーをget。今度はNさん達のお店でジュースにしていく。

 まずはシークワーサーを皮ごと半分に切り、手で絞って果汁を取り出す。この時残った皮や薄皮は、ジャムやゼリーにするらしい。
 搾った果汁はそのままだと結構酸っぱいので、シロップと水で割る。割合は 果汁1:シロップ1:水2 くらいだったろうか。

 こう書くと結構薄目に感じるかもしれないが、全くそんなことはない!

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 これでもかってくらいのシークワーサーの味と、鼻を通り抜けて頭まで通り抜ける、柑橘の匂い。美味い!!!!!!!!!!!!! しかもそれでいて全くしつこくなく、後味はさっぱりしている。

 旅行期間中、ペットボトルのシークワーサージュースもいただく機会があったが、正直圧倒的に搾りたては美味い(ペットボトルのも美味かったけどね)。

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 ジュースをいただいた後は、お待ちかねのランチタイムだ。献立は、ソーキそば(豚の塊が入った、麺が太めのそば)ともずく丼。

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 もずく丼はひき肉ともずくが甘めのタレで和えてあって、それが温かいご飯の上にかけてある。もはや言うまでもないかもしれないが、うまい。

 ソーキそばも当然美味かった。つゆも麺も肉も美味いし、温かくてほっとする味だ。もはや敵なしか?

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 昼食が終わった後は、おばあちゃんと一緒にサーターアンダギー作りをした。

 世の中には「サーターアンダギーミックス」なる便利なものが存在しているらしく、生地はそれと卵を混ぜるだけだそうな。

 生地が出来たらウズラの卵くらいの大きさに丸くして揚げるのだが、これが結構難しい。この生地はかなりべたついていて、手に水をつけて丸めなければ手にくっついて取れなくなる。しかしかと言って水をつけすぎると、ふやけて球体にはならなくなってしまう。

 手に必要最低限の水をとり、生地がふやける前に丸め切るということが、一流のサーターアンダギー職人には求められる訳だ。来年の全日本統一サーターアンダギーチャンピオンリーグに出場する方々には、ぜひ頑張ってもらいたい(適当)。

 熱した油に入れてしばらくすると、沈んでいた生地が浮いてくる。そこから表面の色が変わり膨らむと、火が通って完成だ。冷めたらいよいよ実食タイム。

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 美味い!!昼食からそれほど時間は経っていないにも関わらず、揚げたてならではのサクサクと香ばしさが食欲をそそる。いつか家でも作ってみたい。

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 まだまだ伊平屋島の一日は終わらない。次は待ちに待った、シュノーケリングのお時間だ。

 漁船で少し沖のほうまで連れて行ってもらい、水面から海中を覗くシュノーケリング。おそらく水深は4~6mほど。伊平屋島の海は透明度がものすごく高い!!!!海底は勿論、海底にいる小さいハゼまでありありと見えた。

 水中は基本的にサンゴ礁か砂地になっていて、ベラやスズメダイ、それから二ザダイの仲間が多かった。魚もサンゴも色鮮やかで、見ていて全く飽きない!

 いると噂されていた子ガメは見られなかったが、ハコフグやモンガラカワハギ、ホンソメワケベラなど大好きな魚が見られた至福の時であった。

 しかしそれとは裏腹に、軽石も多く見られたのも事実だ。水面に浮いているだけではなく、水中にも~5mmくらいのが結構漂っている。小魚が間違えて食べてしまう、というのも頷ける。我々が思っている以上に、軽石問題は深刻なのだと痛感させられた。


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 シュノーケリングから帰ってしばらくすると、おとうさんが投網いっぱいのイワシやアジを持って帰ってきた!!!!

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網から外すのも大変なほどの量の小魚たち。ざっと100匹はいただろうか。おばあちゃんと一緒に、表の水道場に並んで捌いた。

 唐揚げにするのでウロコと頭とワタ(内臓)をとるだけだったが、それでも100匹分、結構な時間がかかった。

 おばあちゃんはいつもコレをやっているらしく、見惚れるほどの手際の良さ。曰く、もっと量が多い日もあるんだとか。

 逞しい。おばあちゃんやべえ。


 そういえば野良猫が近くに来ていて、友人が余った頭の部分をあげていた。私も上げてみたが、ソロソロ近づいてさっと奪っていく姿がなんだか可愛らしい。友人もハマったらしく、捌いている私にエサのおかわりを求めてきた。俺の手から、友人を通じて猫様の元へ。もしかすると友人は仲卸業者に向いているかもしれない。

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 伊平屋島は夕方が長い。16時くらいから少し橙色になってくる空は、18時を過ぎないと暗くはならない。その長い夕方が終わり、暗くなると公民館で「伊平屋ナイト」が始まった。

 伊平屋ナイトは我らが修学旅行委員が企画したもので、伊平屋島の方々と我々生徒が一緒に参加して、クイズなどを行うイベントだった。

 最後はみんなで歌を聴きながら踊って、楽しい時を過ごせた。委員さんありがとう!

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 伊平屋ナイトが終わり、家に帰るといよいよ夜ごはんのBBQ!

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 お寿司やおにぎり、それから先ほどのイワシのから揚げが庭の机に並べられ、更にお肉を網で焼いてもらった。Nさんのお孫さんたちも遊びに来ていて、雰囲気はまるでホームパーティー。おいおい、オイラはいつの間にロスへ帰ってきたんだい?

 冗談はさておき、本当に楽しい時間だった。美味しい食べ物をいただき、お孫さん達とも交流を深め(何故か「シスコ・カーライル」に改名させられた)、楽しいBBQの時間はあっという間に終わりを迎えた・・・



・・・・・かと思われた。



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 肉もお寿司も粗方食べ終わり、友人たちも夕食に満足な雰囲気。お孫さん達と遊んでいると、道の向こうからおとうさんが歩いてきた。・・・何か持っている。アレは・・・・・

 ・・・・炊飯器?

 絶句する我々の元に、次々と運ばれてくる料理たち。炊飯器いっぱいの炊き込みご飯に、コブシメのイカスミそば。そしてお刺身の舟盛り。

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 そう、BBQはまだまだ終わらない。今まさに、第二部が始まりを迎えたのだ。

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 この旅行始まって以来の大ピンチ。料理はどれもおいしそうだが、私を含め生徒12名はかなり満腹に近い様子。

 ____しかし、しかしだ。我々のためにNさん達が腕を振るってくれた料理たち。そして料理となって運ばれてきた海や山の命。残すことは許されない。

 今ここに、七人の侍が立ち上がった(5名はほぼダウン)。

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 炊き込みご飯といかすみそば、そして舟盛りが取り分けられ、それぞれ手を付ける。

 うむ、うまい!量が多いとはいえ、やはりさすがはNさん達。どの料理も手が込んでいて、味も食感も最高だ。満腹といえども箸のスピードは衰えない。

 しかし、いくら美味しくても胃袋には容量というものが存在する。しばらく食べていくうちに侍達も次々に限界を迎え、一人、また一人と箸が遅くなっていった。私も限界が近づき、なんとか腹を空かせようと四股を踏んでみたり(成果無し)。

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 そんな風に、生き残った精鋭たちと山を切り崩していく。その過程で、私の体には変化が訪れた。どうやら私はタガが外れたらしい。満腹感というものを感じなくなってきた。ゾーン、というやつだ。胃袋は容量なんていう概念を突破し、そこにはただ美味があるだけ。そう、私は人間を超越したのだ。

 人間を超えた私を含む、ここまで生き残ってきた侍にもはや怖いものはない。とうとう、我々は完食を迎えた(炊き込みご飯は残ってしまったが、日は持つしノーカンでいいだろう)。

 BBQが始まってから、およそ3時間にもわたる死闘。間違いなく胃袋は広げられていることだろう。完食した瞬間、拍手が自然に沸き起こる。それ程の闘いであった。

 来年の教科書の年表には、この偉業が書き加えられていることだろう。

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 食事が終わり、ハイレベルな風呂に入って布団を敷く。もうあとは寝るだけだが、興奮の熱は冷めやらぬ。結局遅くまで友人と会話をし、それから眠るのだった。

 明日は6時から海に行き、再び投網をさせてもらえるらしい。・・・俺、起きられるか?

 ・・・友人h、頼む!起こしてくれ!!そう祈りつつ、私は目を閉じたのだった。

おまけ

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家の近くの売店にあったヤツ。主に貝殻でできている。

かわいいね。

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