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動物×アート思考で考える「あなたの自分ゴト化の範囲は?展」イベントレポート(2/2)

Bulldozerの吉池です。前回に引き続き、2023年2/17,18に渋谷キャストスペースで行なったイベントのレポートをしたいと思います。
渋谷・日本・地球と自分ゴトの範囲が拡がったあなた、さらに種を超えて自分ゴトの範囲を拡げてみませんか?


会場にはなんとパンダのうんちも展示されました!
「自分ゴトの範囲について考える」ワークショップも行いました!

今回行った渋谷イベントに引き続き、アドベンチャーワールドさんにて、1泊2日のプログラムを開催します。
動物にも会えて、アート思考にも触れられて、地球も自分ゴト化できちゃう!そんな密度MAXのプログラムです。5月のプログラムにはまだ間に合います!興味ある方は是非是非お申し込みください。
▼動物×アート思考で、100年先の地球に提案を 企業を対象に「地球の自分ゴト化」プログラムをテスト開催

3月のプログラムは、「常識とらわれない人材育成プログラム」として和歌山テレビさんでも取り上げて頂きました!


それでは、動物の多様性から自分ゴトの範囲を拡げる旅へ・・・

その鳥は、どこから来た鳥?

渡り鳥と渡らない鳥

世界には、渡る鳥と渡らない鳥が存在します。鳥が渡る一番の目的は、食べ物を得るため。渡らない鳥は、季節を問わず一年中同じエサがある地域に生息しているため、渡る必要がありません。渡り鳥は、途中で力尽きたり、敵に襲われる危険を背負っても渡ります。
彼らが渡らない鳥と同じ地域に住み続けない理由は、同じ地域に多数の生き物がいることによって、食べ物を取り合うことになり、効率が悪くなってしまうからです。
人間にとっての働く目的の根底は食べるためだとすると、都市部に人が集まり続けるのはどんな理由があるからなのでしょうか?
今日みなさんはどんな目的で今いる場所に来たでしょうか?

ベニイロフラミンゴ・チリーフラミンゴ

14,000kmの距離を超えて

冷たい氷の上にいるイメージのペンギンたち。しかし、ペンギンが生息しているのは南極とその周辺のみで、北極にはいません。どうしてだと思いますか?アドベンチャーワールドでは、1978年からペンギン類の飼育を開始、1990年からは「ペンギン繁殖プロジェクト」としてペンギンの域外保全に取り組んできました。
アドベンチャーワールドで暮らすペンギンたちも、卵やヒナの時に遠く離れた南極周辺からやってきた、またはその子孫たちです。
その距離なんと14,000km 以上!信じられないくらいの長旅を経て、私たちの前にいるのです。

アドベンチャーワールド 海獣館

ペンギンの「親」になるということ

長い旅を経て和歌山県・白浜まできてくれたエンペラー ペンギン。まずは繁殖適齢期になるまでしっかりと搬入したヒナを育てること、そしてその次には親鳥が卵を産める環境を整えること、さらには卵が孵化し、新しい命を守り育てることが課題となりました。
様々な試行錯誤を経て、数羽の命が誕生し無事に育ってからは新しい課題が
生まれました。それは「人工育雛で育ったヒナが人間のことを親だと認識して、仲間であるペンギンと繁殖ができないこと」
新しい世代へ命をつないでいくためには、生まれた赤ちゃんたちにも成長後は繁殖してもらわなくてはいけません。
その問題を解決するため、飼育スタッフは①着ぐるみを着て、ペンギンに見立てた手袋をはめた手で餌をあげる②餌をあげるときには親鳥の鳴き声が入った音声を流し、人は声を発さない等の工夫をしています。
人間とペンギン、まったく違う種である二者の関係によって紡がれている命ですが、「人間」という存在はペンギンたちには知らせないよう、あくまで親鳥になりきるそのスタンスは、彼らの本来の生態を尊重し、観察・考察した結果なのです。


エンペラーペンギンの人工育雛


生まれ方、 子ども時代、生き残り戦略の多様性

17年ごとに大量発生する「周期ゼミ」

17年あるいは13年ことに成虫になり、大量発生するセミが存在します。
セミの仲間は世界中に分布していますが、この周期ゼミという現象が確認できるのは、世界の中でも北アメリカのみ。17年ゼミは北アメリカの北部、13年ゼミは南部の、複数の地方で発生します。17年周期の17年ゼミが3種、13年周期の13年ゼミが4種存在し、17年ゼミと13年ゼミが共に生息する地方はほとんどありません。
ほぼ毎年どこかの地方で発生しているものの、全米のどこにも周期ゼミが発生しない年もあります。周期年数が素数であることから素数ゼミとも言われています。まとまって発生することで、個体が捕食される可能性を低下させることができ、個体の生存(または個別遺伝子の存続)に有利である、と考えられています。
動植物はそれぞれに多様な生まれ方、生き残り方の戦略を持ってこの世に存在しています。人間の生存戦略はどのような特徴で、動植物にどんな影響を及ぼしているでしょうか?

17年セミ

あっという間に大変身?

よく「子供の成長は早いね」と言いますが、それは動物たちも同じ、いやそのスピードは人間以上かもしれません。
人間の子供は、生まれたばかりの時は歩くことはできず、視力も発達していない状態で生まれてきます。対して動物の赤ちゃんはどうでしょう?
草食動物の赤ちゃんなどは、歩くことができて視力も発達しているという状態で生まれてきます。捕食動物から身を守るため、生後すぐに動けるようになっていると言われますが、それにしても1 年半~2 年ほどの間お腹の中で赤ちゃんを育てるキリンやゾウのお母さんには頭が下がる思いです。
対してジャイアントパンダは、成獣が約100kgという体重の中赤ちゃんは100g~200gほどというとても小さな大きさで生まれてきます。目もよく見えていませんが、その小さな体からは想像できないくらい大きな鳴き声で母親を呼びます。そんな小さな赤ちゃんは1 年で約30kgという大きさにまで
成長します。
成長の早さは、大きさ以外の外見に表れることも!アドベンチャーワールドでも昨年の9月にマレーバクの赤ちゃんが誕生しました。生まれたばかりはウリ坊模様だった赤ちゃんは、成長に伴いあっという間に2 ヶ月半ほどでお母さんと一緒の白黒模様に大変身!
こんなに短い期間に外見がガラッと変わってしまうなんて、人間では考えられないですよね。
ちなみに生まれてから約20年間もの間親がこどもを保護する動物は人間だけ。この20年、長いですか?それとも短いですか…?

絶滅も回復もヒト次第!?

地球で残り2頭のサイの命運

世界には5種のサイが現生しており、アフリカ大陸の東部と南部(シロサイ、クロサイ)、インド北部からネパール南部(インドサイ)、マレーシアとインドネシアの限られた地域(ジャワサイ、スマトラサイ) に分布しています。サイ科の属する奇蹄目(きていもく) は、約5,600万年前から2303万年前ころにかけて繁栄し、240属の多様性を誇り、ほぼ全ての可住地域に分布しました。しかしながら、生息域の開発と、金よりも高値で取引される角を目当てにした密猟により、現生のサイはたった5種となり、そのいずれもが絶滅の危機に瀕しています。
しかし、2022年雌2頭だけで絶滅寸前となっているキタシロサイ(野生下では絶滅) の精子や卵子の元になる生殖細胞を作製することに、大阪大学とドイツ、イタリアなどの国際研究チームが成功。研究が進めばケニアの自然保護区で凍結されている精子との体外受精で、キタシロサイ保全への道が開ける可能性もあります。アドベンチャーワールドでも、様々な動物の凍結精子をワイルドアニマルメディカルセンターに保存しています。大事に保管されたその小さな命の源から、新しい命が誕生することを願い日々繁殖研究に努めていきます。
このように実は私たちの努力次第で守られていく’'種”は多くあることを知った時、あなたは未来に何を残したいと思いますか? 

液体窒素内の凍結精子 アドベンチャーワールド ワイルドアニマルメディカルセンター

種によって異なる命の長さ

動物の年齢を考える時「人間に例えると~」という表現をよく見かけます。アドベンチャーワールドにいる動物たちも、寿命は様々。数年で命を終えるモルモットやウサギもいれば、20年ほどの寿命のキリン、そして40年以上生きることもあるゾウやイルカなど、命の長さは動物種によってかなりの違いがあります。
よく意外と言われるのがふれあい広場にいる大型のインコたち。たまにペットとして飼われる方もいますが、彼らの寿命はなんと50年~60年と言われています。45年前の開園当初からいるシロサイやゾウ、イルカたちは、長くパークでゲストの皆様をお迎えしてきた大先輩です。
地球からお預かりした彼らの命は歴代の飼育員たちが責任を持って繋いできました。スタッフたちは動物の死に直面することも、もちろんあります。
時に数日、数ヶ月だった命、時に数十年にわたる命。どの命にも、私たちは敬意を払い、彼らをパートナーとしていのちをみつめ問い続けていきます。

アフリカゾウ

パンダで循讚する竹林と人閻関係のエコシステム

パンダが食べ残した竹の行方

アドベンチャーワールドでは、現在7頭のジャイアントパンダを飼育しています。パンダには1 頭あたり約20~30 kgの竹を与えているのですが、実はそのうち食べるのは半分~ 1/3 だけ。パンダたちが食べなかった、かたい竹幹や美味しくない部分は廃棄になってしまっていました。また、アドベンチャーワールドのパンダたちのために竹を切っていただいていた大阪府岸和田市をはじめ、日本各地では放置竹林の問題が深刻化しています。
アドベンチャーワールドでは、里山を荒廃させる竹を4 伐採し、ジャイアントパンダの食事として活用することで里山の環境を守りつつ、これまで廃棄していたジャイアントパンダが食べない竹幹や食べ残した竹、糞を有効資源としてアップサイクルを推進する「パンダバンブープロジェクト」を立ち上げました。竹あかりの作成やタンブラー等の商品へのアップサイクル、食べ残した竹や糞を活用した堆肥の開発に取り組むなど、「竹」と「ジャイアントパンダ」を中心にSmileの循環を生み出しています。

パンダバンブー プロジェクト

国境を越えた熱い想い

ジャイアントバンダは日本でもとても人気のある動物の一つですが、ではもともと中国固有の動物であるジャイアントパンダがなぜ日本にいるかご存知ですか?
ジャイアントパンダが絶滅に瀕しているというお話はこ存知かもしれませんが、特に1970 年代には餌不足や生息域の減少により、全生息数が約1000 頭
という数まで減ってしまいました。ここで、中国政府がジャイアントパンダ
の保護に乗り出し、その中でアドベンチャーワールドは世界で初めてブリー
ディングローンを利用して、中国・成都ジャイアントパンダ繋育研究基地との共同繁殖という形をとりジャイアントパンダを迎え入れました。
中国外でジャイアントパンダを飼育する目的としては、
・中国外の専門家とともに繁殖研究に取り組める
・海外にジャイアントパンダの現状を発信することができる
・中国内で感染症等が流行した時に、ジャイアントパンダが絶滅する可能性
を減らすリスク回避になる
などがあります。
この取り組みを皮切りに今では世界各国でジャイアントパンダを飼育・繁殖に取り組んでおり、ジャイアントパンダ全体の生息数は約1800 頭となりました。ジャイアントパンダを想う先人たちが国を超えてつながってくれたからこその今がある、そのことを忘れずにいたいですね。
※ブリーディングローン… 繁殖を目的として動物を貸し借りする制度。

ジャイアントパンダ項浜」r楓浜」

動物も人間もダイバーシティで社会が強くなる!?

カピバラと小鳥の共存関係

この写真のカピバラと小鳥、 いったいどんな関係だと思いますか?
遊んでいるようにも見える彼ら、 実はもっと関係が深く、一緒に生きています。写真には写っていませんが、 カピバラの周囲には小さい虫が群れで飛んでおり、 小鳥はそれを狙ってカピバラたちの背中をちょこちょこと動き回っています。
カピバラたちはこの共生関係に慣れきっており、 小鳥が背中に乗っていても気にすることなくマイペースにのんびりしたり草を食べたりしています。陸、 海問わず、 彼らのように他の生き物と共生関係にある生き物はたくさんいます。 私たちも、 カピバラのように、見えていないだけで、 何かと共生しているかもしれません。あなたの周りにも、 普段は目に見えないけれど共生関係にある生き物がきっといるはずです。

カピバラと小烏 ブラジル ・ パンタナールにて

種を越えたつながり

「動物同士の関係」というと、 群れや親子関係をイメー ジされることが多いかもしれませんが、 必ずしもそれだけではありません。 前述のカピバラと 小鳥のように、 種を超えた関係は多く、 もしかしたら同種間の関係以上に多種多様なものかもしれません。
動物園でも少しずつその関係性を取り入れようと、 複数の動物種を同じエリアで飼育する 「混合展示」 という手法が取られるようになってきました。アドベンチャーワ ールドでは例えばサファリワ ールドのサバンナエリアにてアミメキリンやエランド、 チャップマンシマウマが同じエリアで暮らしています。
また、 草食動物と肉食動物は互いの気配を感じた方が刺激になる とも言われ、 例えばチー タ ーの展示場に、 チー タ ーが寝室にいる際ヤギを連れて行って草を食べてもらい、 そのときした糞をそのままにしておく、 なんてこともしています。心身ともに問題ない範囲でのちょっとした刺激が動物たちの暮らしのスパイスになっていますように。

あなたの自分ゴト化の範囲は??

人間が認識する世界 生物が認識する世界

たとえば5感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)をとってみても、人間の感じ方と、その他の生物の感じ方では、個々の種によって大きな差があります。嗅覚は人間より優れているけれど、視覚は光の明暗だけを知覚している種も存在します。
今からおよそ100年前、生物学者のユクスキュルは、このような「それぞれの生物がそれぞれの感覚や身体を通して生きている世界」を「環世界(Umwelt)」と名付けました。生物にはそれぞれの生物ならではの「世界」がある、という考え方です。
「環世界」において大事な点は「世界をどう知覚(インプット)しているか」というだけではなく「世界にどう働きかける(アウトプット)しているか」という観点です。あらゆる種による2つの連動がおりなす「世界」は、人間が認識しているよりはるかに多様であり、それぞれの「世界」はかなり異なるはず。
人間は、自分たちがふだん当たり前に感じる世界について、他の生物も同じ前提で生存していると思い込みがちですが、ユクスキュルは「生物の「知覚世界」はそれぞれが意思を持って構築したのではなく、あらかじめ自然設計に組み込まれたもの」と考えました。

私たち人間ひとりひとりがその自然感覚を持ち、人間の多様性だけでなく生き物の世界も自分ゴトとして想像してみながら、人間として「世界にどう働きかけるか?」を共に考えてみませんか?

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