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科学の発展に期待する力

瀉血とは、血液の一部を体外に除去する、中世以降の欧米で行われた治療法。
 
血を抜くことで体内にたまった有害物質を排出し、それによる治療効果を狙ったものです。
 
もちろん現代ではその医学的根拠は否定されていますが、当時は通常医療の一環として行われていました。
 
その背景には、病気や身体に対する知識の発展があると言えます。
 
また、歯の存在が病になるとの理論(というか信念というか)もあり、ベルサイユ宮殿の造営で名高いフランス国王・ルイ14世は全ての歯を抜いたそう。
 
想像しただけでも痛々しいですが、当然その後の生活は不便を極めました。
 
宮廷お抱えの医師と言えば当時の最高峰の役職で、医師としてのクオリティも最高峰とみなされたのでしょう。
 
そういう人がこのような助言をするわけです。
 
今に生きる我々が聞くと、何をそんなバカげたことをとも思えるわけですが、当時は大まじめですよね。


相対論をリニューアルする野望

何が言いたいかというと、科学は常に発展途上だということ。
 
科学者は常に研究活動をしているのであり、冷静に考えれば当たり前のようですが、結構この観点が抜けがち。
 
「今が最高峰」と思いがちなのです。
 
自然理解の奥行きを深めるチャレンジの一例を紹介しましょう。
 
ブラックホールの観測から、一般相対性理論を越える新たな理論を探索する研究です。
 
「越える」とはつまり、一般相対性理論では説明できない現象を探す、ということ。
 
相対論と言うと正しいことがはっきりした確固とした理論のように思われる節もありますが、もちろんそんなことありません。
 
「正しいことがはっきりした確固とした理論」など存在しません。
 
科学において、「正しい」は必ず条件付き、ですね。
 
この相対論にしてもその検証は、宇宙全体から見れば比較的弱い太陽系内の重力場、もしくは全宇宙規模の平均化された重力場でしか行われていません。
 
太陽系より強い、個々の重力系での検証はまだ始まったばかり。
 
相対論の検証が可能となるほどの重力イベントとは例えば、ブラックホール同士の衝突などで生じる重力波発生、電波望遠鏡によるブラックホール直接撮影、そして巨大ブラックホール近傍で起こる、強い重力下での独特の物理現象・「重力ドップラー効果」といったところ。
 
もし相対論で説明不能な現象が見つかれば、当然別の新たな仮説を立てていかなければなりませんね。

重力ドップラー効果に活路はあるか

私たちが住んでいるこの天の川銀河(銀河系)。
 
太陽系はこの銀河系の中心からだいたい3万光年(光の速さで3万年かかる距離)離れたところを周回しています。
 
銀河系の直径は約10万光年と言われているから、結構端っこですね。
 
この銀河系の中心にはいて座A*(エー・スター)と呼ばれる、強力な電波発生天体が存在し、その中心には太陽の400万倍(400倍じゃないよ)という巨大な質量を持った特大ブラックホールが存在します。
 
その直接撮影はごく最近、2022年に国際的な電波望遠鏡ネットワーク・「イベントホライズンテレスコープ(EHT)」によって成し遂げられており、報道でご存じの方も多いでしょう。
 
で、相対論を越える現象を探る前述の3つの重力イベントのうちの重力ドップラー効果という奴を、このいて座A*で一所懸命観測している人たちがいます。
 
重力ドップラー効果とは、ブラックホール近くから放射される光の波長が、元々の波長より延びる(より長波長になる)現象。
 
アメリカのGhezらのグループとドイツのGenzelらのグループは、90年代後半からずっと、いて座A*の近傍を周回している星を観測してきました。
 
それらの星の軌道の観測結果から、いて座A*中心部の巨大質量ブラックホールの存在が判明し、GhezさんとGenzelさんには2020年のノーベル物理学賞。
 
重力ドップラー効果の式は相対論を用いて書き下すことが可能で、その内ニュートン力学効果、特殊相対論効果までは正しいことが分かっています。
 
より高次の(精度が求められる)一般相対論効果の部分は、ブラックホールの周りを周回する星がブラックホールに近接するとき最大となるので、そのタイミングでの測定に期待がかかります。
 
年々進化する観測技術にももちろん依存します。
 
ここ数年内に2つの周回星がブラックホール近接するので(うち一つは2024年)、その観測でひょっとしたら巨大ブラックホール近傍の強い重力場で一般相対論では解釈不能な現象が現れる可能性が指摘されています。
 
ついに相対論のほころびを目にする瞬間が、近々あるかも知れません。

ワクワクしませんか?
 
私は標準的な理論がほころびを見せる、つまり新しい理論が待ち望まれる状況が生まれるというのが個人的に大好きで、ヒッグス粒子が予想通りの質量値で見つかった時は正直言って落胆したクチです(世の物理学者は喜びに沸き立っていましたが)。
 
一般相対論では説明できない重力ドップラー効果よ、来たれ!

超常現象が「超常」なのも理論のほころびなのか

超常現象について考える時も注意が必要です。
 
超常現象とひとくくりにされる諸現象の中にも、ひょっとしたら真実があるのではないか。
 
現代科学の限界を越えた現象を我々は垣間見ていて、解釈できないものを超常の名のもとに無かったことにしている可能性はないのか。
 
例えば私は今、乱数発生器を用いた実験を世界中で展開しているグループと連絡を取り合っています。
 
人の心理作用が機械、特に量子力学的過程に、しかも遠隔的に作用を及ぼす可能性を探る実証実験を、国際協力の下行っている団体です。
 
例えばコンサートであるとか野球場などで起こる、人々の集合的かつ瞬発的興奮状態で、乱数発生器の中での量子効果に統計的に有意な変化が現れる、とのこと。
 
もしこれが本当なら、まさに現代科学では解明できていない現象と言える。
 
ただし解明できないと言っても、そこには「今のところ」という注釈がつきます。
 
まずはその現象自体が、機械の誤作動とか統計的な誤謬などではなく実在するのかどうか。
 
実在するとなれば、それを説明できる仮説を考え検証するという、科学研究の手続きに移行していかなければなりません。
 
そうやって自然理解の奥行きを深めて来たし、これからもそうして行くでしょう。

彼らが私の理論に興味をもって接してきたのも(私としてはありがたい!)、科学研究としては自然な流れと言えます。

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