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【今読みたい!パラスポーツ関連本】世界を手で見る、耳で見る 目で見ない族からのメッセージ」

「世界を手で見る、耳で見る 目で見ない族からのメッセージ」(堀越喜晴・著)

パラアスリートに限った話ではないが、「子どもを見ていると、親の様子が透けて見える」という感じがすることがある。

子どもの言葉や態度を見ていると、その子がどんな関係性の中で育てられているのか、なんとなくわかる気がするのだ。実際に、お父さん、お母さんと知り合いになると、「透けてみえた」ものがより濃く見えてくることが多い。子育てをしたことのない私が言うのは、とてもオカシイのだが、「一人の人間を育てる・育つことって、表面的な誤魔化しが効かないんだな」と思う。

親の影響が100%とは思わないけれど、家庭の中で親は、子どもに大きな影響を及ぼす。もうすっかり大人になっている他人に対して、何かの拍子に「親に愛されて育った人だな」と感じることもあれば、「似なくていいところも、そっくりだな」なんて思うこともある。

私自身も、たぶん、両親から何かしら受け継いでいる部分を持っている。

子どもが成人して、親ともある程度、対等に話ができる年代になると、子どもの言動が親に影響を与えるものだと思う。親にとっては、「いつまでも子ども」だけど、子どもは親のことを自分を庇護する存在というだけでなく、一人の「大人」として見るようになるからだ。子どもは一番身近にいる「他人」となり、親に対して厳しい視線を注ぐ人にもなりうる。親の価値観、人生観に共感するところもあれば、「私は、ああはなりたくない」などと思い、親にモノ申す子どもも出てくるだろう。

本書の著者・堀越喜晴さんは、2歳半までに網膜芽細胞腫(目のがんの一種)で両眼を摘出している。「目で見ない族」の人だ。専門は言語学、キリスト教文学で、大学で教鞭をとっている。

網膜芽細胞腫は、遺伝性が高い疾患で、1988年に生まれた息子の信司さんは片眼を摘出し、もう片方の眼の視力も大幅に奪われた。信司(ただし)さんは、パラ陸上の選手で活躍しており、昨年夏の東京パラリンピックのマラソンで銅メダルを獲得した。

私は、信司さんが学生だった頃から取材していて、2010年、たまたま図書館で著者の「バリアオーバーコミュニケーション」を見つけて読み、お二人が親子であることを知った。

実際に、喜晴さんといろいろお話するようになったのは、「バリアオーバーコミュニケーション」を読んでから5年ほど経ってからになる。

大学の講義で教えている学生さんのこと、社会で起こった障害者に関わる事件や現象のことなどに対する、善晴さんの見方や考え方を伺うと、それまで私自身が気が付かなかったり、見落としていたような部分に気が付かされることが多い。

一方、信司さんに、陸上のレースの後で伺う話は、陸上選手としての考えや感覚に関するものだ。

喜晴さんと信司さんの2人をを思い浮かべて、「子どもの姿から、親の姿が透けて見える」と感じる場面があったか?と考えてみたが、あまり記憶がなかった。言語学や障害学、大学教育の話と、プロのアスリートの話は、それぞれ専門的な内容になることが多いからかもしれない。

ただ、この新刊「世界を手で見る、耳で見る」を読んで、善晴さんと信司さんに対して、「ああ、やっぱり親子なんだなぁ」と強く感じたところがあった。

本書に収められたエッセイには、「パラスポーツ」に触れるものもいくつか含まれている。また、「障害」と社会、教育に触れるものも多い。子育て中の方、教育に携わっている方、パラアスリートの指導者などにお勧めしたい1冊。(パラスポ!代表:河原レイカ)


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