見出し画像

バレエ留学をする意味とは?

こんにちは。ぱれすぅ〜です。
今回はバレエ留学の意義について、フランスにバレエ留学した経験をもとにした見解を書いていこうと思います。

私たちはなぜ踊るのか?留学のメリットとは?

世のバレエ少女にとって、そもそも意欲的にバレエを練習する理由とはなんでしょう?
端的に言えば、「踊るのが楽しいから」。その単純な感情が続行の意志につながり、プロを目指す理由になるのではないでしょうか?

では、プロになるにはどうしたらいいか?
そこで最初に挙がるのが、バレエの上達が見込める環境探しなのです。

1. バレエのための環境

バレエは元々、西洋から来たものというのは周知の事実でしょう。
その歴史は15世紀イタリアから始まり、フランス・ルイ14世の下でバレエ教育のシステムが設立され、デンマークやロシアに渡り、20世紀にはバレエリュスのような世界を横断するバレエカンパニーが生まれ…。
日本がバレエを本格的に取り入れ出すのは、戦後のこと。ロシアンバレエを中心に展開され、数々のダンサーの卵たちが正統派バレエを求め留学してきました。

日本と海外のバレエ教育の違い

バレエというダンスジャンルは、身体条件が厳しく選ばれし人間しか続けられないという側面があります。
というのも、バレエの根幹となる「アン・ドゥオール en dehors(脚を外旋させた状況)」は人体にとって不自然なポジションです。バレエを続けるにはポジションを保てる身体条件と、その身体の正しい使い方を時間をかけて教え込む環境が必要不可欠。
日本では「バレエ」といえば習い事の一環で、残念ながら教育という一般的カリキュラムには取り入れられていません。実際に日本の国立バレエ学校は存在しませんし、日本舞踊のお家元制度の影響なのか、バレエ教室という小さな単位で複数存在しています。この環境はバレエ好きの人口を増やすという意味では優れているかもしれませんが、複数のバレエ教室の中から自分にあった先生と出会う難しさも秘めています。加えて、各教室での方針に大きく左右されるため、「正しいバレエ教育であるのか(この問題については後々他の記事で書いていこうと思います)」という問いに対してグレーゾーンな面もあるのです。

その点、外国のバレエ学校は一教育内のシステムとして機能しており、最初からバレエダンサー育成を目的としている場合が多いので、実績のある、専門的な知識を持ち合わせた教師陣の下での指導が見込めます。

フランスの場合

例えば、フランスでバレエ教師になるには国家資格が必要です。この国家資格を取得するためには、実技試験を突破した後、舞踊史、解剖学、音楽、指導法の試験を突破しなければなりません。つまり、プロとしてのダンサー経験がなくとも、「踊り手の身体を守り、正しい踊りを導くための知識」を身につけてからでないとフランスではバレエ教師になれないのです。この取り組みが1989年から国家機関を通して行われている時点で、大きな違いが見て取れると思います。
また、学校についても公立と私立の区分けがはっきりとしており、パリ・オペラ座やコンセルバトワールといった国立の舞踊専門学校が複数存在する他、それらの学校に入学するための私立の学校も存在します。このシステムは、ルイ14世時代から存在するバレエ・ヒエラルキー的シビアな一面もありますが、バレエを本格的に続けられる人が自然と絞られていくので、年齢とともに実技や理論をより専門的に学ぶ環境が充実していくようになっています。



2. バレエダンサーとして生きていくための生活準備

プロの道に進むにあたってぶち当たる点は、成長期に伴う身体の変化もですが、たくさんあります。

ここで、ぱれすぅ〜のちょっとした経験談を。
高校2年の秋、フランス・パリのとあるバレエ学校に留学したぱれすぅ〜。

【問題その1】言語


フランス語はBonjour, Merci, Au renvoirと挨拶しか知らず、コミュニケーションが取れない。バレエのレッスンを受けるも、動きのパの名前しか分からず、先生が何を指摘したのか分からない。
そう。
言語が分からないと、バレエそのものの上達も遅くなります。特にバレエ学校の先生は、複数の生徒を見て回るわけですから、外国人留学生のためにわざわざ現地以外の言葉で懇切丁寧に説明する時間はほぼありません。
この問題は就職にも大きく関わっていて、例えば芸術監督が求める踊りをできないダンサーは雇われなかったり出番が減ったりする可能性も秘めています。
単に現場の空気を読むだけではなく、言語化された指導者側の意図を読み取る訓練として、留学生活は大切なのかもしれません。

【問題その2】やはり、成長期・食事制限問題


バレエ少女ならば、これは絶対考える問題なのではないでしょうか?
そう、ぱれすぅ〜もぶち当たった問題、人は皆、大人になるw
赤裸々な話、ぱれすぅ〜の第二次成長期が来たのは、この留学が決まった瞬間。つまり、高校2年の春でした。それもあり食事環境の変化もあり身体バランスの変化は著しく、3ヶ月で3キロ太りました。
元々ガリガリではなかったぱれすぅ〜。しかも太り方が、「むわっ」としてて(伝わるかしら…)。筋肉太りではないんですが、今まで精神的にも追い詰めて止まっていた身体の成長が急に動き出したせいか、母に支えられていた食事制限がなくなったからか、はたまたフランスのご飯が美味しかったせいか、身体は必死に太り出してしまい、浮腫みやすくなりました。動いても食事を制限しても全然痩せず、むしろ体重は変わらないのにどんどん見た目は膨らむ一方で。
今思えば、この身体の必死の抵抗は健康体になる最後のチャンスだったと捉えれば、正解だったんだと思います。しかし、この当時、他のバレエ学校の受験を控えていた身としては自信をなくし、どうしようもなかったことがとても辛かったです。
この時期は相当な食事制限をしない限り、膨らんで当然の時期です。だからこそ、青年期のバレエダンサーはとても苦労します。しかし、食事制限をなんの知識もなくすることは、後々のダンサー生命、ダンサー引退後の生活に支障をきたすので注意が必要。
海外のバレエ学校では、こうした身体変化を乗り越える難しさを加味した上で、栄養学を授業に取り入れているところが多いです。日本人は、欧米の食生活に慣れていないから太るという観点もありますが、留学生活においてもっとも着目すべき点は実は別にあります。
ぱれすぅ〜的には、「今後国内外で独立したバレエダンサーとなるために、どうやって食生活を工夫するか」という知恵を身につけることです。
実家では料理をしたことがなかったぱれすぅ〜。栄養の知識といえば、義務教育の家庭科で習ったこと程度。それゆえに、ジャンクフードは避けるとか、炭水化物を抜くなど、ミーハーな視点での対策しかできず、身体を健康でかつ引き締まった状態に仕上げるための食生活の知恵が全くなかったのです。
海外においては日本とはまた違ったダイエットの観点もあり、その方法の向き不向きもあります。例えば、グルテンフリー。ぱれすぅ〜は、二度目の留学以降グルテンの取りすぎやビタミン摂取を気をつけるようになってから、日本にいる時よりむしろ痩せて浮腫まなくなりました。また、海外留学生活を通して、醤油や身の回りの和食には思いのほか砂糖や小麦粉が含まれていることを知り、自炊での栄養に対する意識も少しずつ変わってきています。
いずれにせよ、こうした問題を留学生活を通して再認識しつつ、かつ周りのプロフェッショナルに尋ねることが大事なのだと思います。

【問題その3】教養・実体験は表現力につながる


やはり、西洋芸術の担い手となる上で必要なのは、そのバックグラウンドにある西洋文化を身をもって知っているか否か。生活圏を日本から西洋に移すだけで、見えてくる風景も感覚も不思議と変わってくるもの。
パリでバレエ留学をしていた際の最も大きな収穫はこの身体感覚の変化かもしれません。
語学学校が終わってバレエ学校まで行く時のちょっとした時間に、パリの街並みを眺めながら散歩する。このちょっとしたアクティビティの中で見えてくるもの、それを全て言語化することは非常に難しいのですが、一つ挙げるとすれば「バレエがどうしてシンメトリー好きで、どうしてああいう形式になったのか」を感じる文化的バックグラウンドを身をもって感じること。
例えば、パリの公園や門、その街並み全体を通して見えてくるものは、西洋建築のベースにある遠近法だったり、シンメトリーを意識した建築様式。バレエにおいても真ん中へ行くほど主役のように、配置的なヒエラルキーが存在していて、これは西洋の図像学に関係しているんだなぁと、美術館巡りをしながら感じたり。
日本の庭園文化は元々アシンメトリーで、日本人的美は「侘び寂び」だったり「枯山水」だったり、はたまた「原宿ファッション」だったり、少し独特。そのアイデンティティも尊いのですが、西洋的世界観の中で生活するとその国でのバレエはどういうものを求められていて、どういう表現が適正なのかを感じることがあります。
もっとバレエに根ざした経験から言えば、フランスの各カンパニーのプログラムを知り、実際に見に行けること。日本では、ロシア的古典レパートリーを再現することが正統派バレエだと思われがちですが、フランスでは古典のレパートリーよりもコンテンポラリー・モダンな作品が流行っていたり、それらの作品を踏まえて再度古典に落とし込める(つまり、現代的な身体の使い方を古典作品に昇華する)考えが定着しています。

こうした経験を通して見えてくるバレエは日本で必死にレッスンだけを受けてきた時とは異なり、また一つ一つのマイムや動作を演じる上でも大切な要素であると感じました。
生活圏を変えること、そのものがその後のダンサー人生、あるいはダンサー以外の人生に関わってくることは間違いありません。



3. 就職活動

これに関しては、世界の情勢やバレエブームの波によって変化しやすい部分なので一概には言えないのですが、一つ確かなのは「バレエ・ダンサー」だけで食べていける場は日本では少ないということです。
私はダンサーにおける就職活動はしていないので、ざっと説明に留めます。(詳しいことは他の方の体験談をご覧ください。)

私の知り合いでバレエダンサーとして海外で働く人はたくさんいるのですが、その中で最も多かったのは「収入」についてでした。

日本にも確かにバレエ・カンパニーは存在しますが、その多くは東京、あるいは大阪。都会の生活費を賄うだけのお給料をもらえる人は一握りだそうです。そのため、他でアルバイトをしながら踊っているという人がいるのも事実。
その点、海外のバレエ団に入団できた場合、身の回りのバレエに関するサポート(トウシューズ無料配給、怪我をした時のカウンセリングなど)がある他、新しい振付作品や著作権を保持している古典作品に携われる可能性が広がったり、光熱費や家賃で頭を悩ませることなく働ける可能性があるそう。
海外においてもバレエダンサーになれる人はほんのひと握りですが、クオリティー・オブ・ライフの観点やダンサー引退後のセカンドライフの観点から見て魅力的なようです。
留学を通して就職活動に幅が広がり、視野が広がることを考えると、これは大きなメリットと言えるのではないでしょうか。

最後に

今回は私のちょっとした経験をもとに、バレエ留学のメリットをまとめてみました。もちろん留学生活において良くないことも沢山ありますが、読者の誰かを勇気づけられていたら幸いです。
私の個人的見解を多く反映しているので、参考程度でお願いします。

質問がある場合は、コメントやInstagram, TwitterでのDMをご利用ください。
※誹謗中傷、心ないメッセージはお控えください。
Insta: @reveuse_paresseux_fr

次回は、私の高校時代のフランス・バレエ留学について書きます。お楽しみに!
Salut!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?