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連載 『ON THE WAY TO PARK』 by ivy

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〈PARK GALLERY〉から徒歩5分に住む編集者・ライター ivy(アイビー)が隔週でお届け。「みんなのPARK(公園)」へ辿り着くまでの寄り道を楽しむためのコラムシリーズ。… もっと読む
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記事一覧

ON THE WAY TO PARK #015 『上野の片隅、ようこそ幻のビリヤニマウンテンへ』 (ハリマ ケバブ ビリヤニ)

上野のディープな方。JR 上野駅でいえば入谷口から出る、東上野というエリアがある。古くから韓国にルーツを持つ方のコミュニティが存在したり、現地仕様の中華料理(いわゆる“ガチ中華”)が食べられたり、多国籍な土地柄で一本裏通りに入ればかなり面白い。 さて、今回はそんな東上野にある知る人ぞ知る名店『ハリマ ケバブ ビリヤニ』を紹介する。その名の通り、ビリヤニが看板メニューのインド料理店なのだが、この強烈さと病みつきの旨さは他の追随を許さない。 決して新しい店ではないが、隅々まで

ON THE WAY TO PARK #014 『上野で飲もう、帰りにアイスを食べよう』 (ジェラテリア マンマ・ミーア)

「上野でいい店、知らない?」 私の地元を覚えてくれていたのか、仕事仲間やよく行く店の人からたまにこんなことを聞かれる。ただの雑談としての場合もあれば、本当に翌日の店を探していることもあるだろう。どちらにせよ、結構答えに困る。 上野の飲み屋は、どこも似ている。まずいこともないけれど飛び抜けて旨い店はあまり思い浮かばない。作りも似ているから、雰囲気で選ぶわけにもいかない。 「適当に、空いている店へ入ればいいと思いますよ。どこも似たような感じで安定感あるので ……」 たぶん

ON THE WAY TO PARK #013 『黙々と、ちょっといい飯を食べたい日、分厚いトンカツがいい』 (丸五)

「今日は、トンカツを食べよう」 そう思う日は、どんな日か。安価なチェーン店やスーパーの惣菜で買うトンカツしか知らなかったら、あまり思わないかもしれない。 実はトンカツ屋は、ランチにしては比較的値が張る店が多い。とんでもなく高いこともあまりないけれど、2000円くらいが相場になる。そういう「ちょっといい」トンカツ屋に行くと価値観が変わる。 秋葉原電気街の裏道、ジャンク品を売る店(最近はコンカフェやメイド喫茶)が集まる通りの一角にやけに風格のある店構えのトンカツ屋がある。そ

ON THE WAY TO PARK #012 『コーヒーが飲めなかった15歳の私へ、おすすめしたい地元の店』 (シャンズカフェ)

コーヒーは元々飲めるようになってからこの街を好きになれた。 今でこそコーヒーマグを手放せない日々を過ごしているけれど、思えば成人するまでコーヒーが飲めなかった。だから、神田周辺に美味しいコーヒーが飲める喫茶店がたくさんあることに気づいたのは社会人になってからのこと。結構昔からあるはずなのにその良さを知らないままだったお店も、もっと早く行っておきたかった(なくなってしまった)場所もたくさんある。 さて、記憶の限りずっとそこにコーヒー屋があることを知っていたけれど、長らく入っ

ON THE WAY TO PARK #011 『春のコーヒータイムは、ポルトガルへ思いを馳せて』(ドース・イスピーガ)

ポルトガルのイメージって何だろう。私の場合、小学生の頃図書館で手に取った小松義夫氏の名著『地球生活気・世界ぐるりと家巡り』に登場した首都リスボンの街並みが思い浮かぶ。狭い路地に石造りの家が並び、曲がりくねった道や急な坂が張り巡らされた迷路のような旧市街。小さな路地が生活の場として定着していて、写真でしか見たことがないけれど、どこか温かいイメージが残っている。 さて、かれこれあれから20年がたち、未だにリスボンには行けていないのだけど、思いもよらぬところで我がホームタウン神田

ON THE WAY TO PARK #010 『金曜日、ジャズとお酒で夜を更かす』 (Bar SLIGHT)

ある金曜日、終電で渋谷から銀座線に乗って末広町駅まで帰る途中。まだ帰りたくないから、一駅手前の神田駅で降りた。行先は駅前のいなたい飲み屋街を抜けて、日本橋方面へと向かう途中のビル。人通りも殆どない夜中のオフィス街に、かすかなジャズの音色が聴こえてくる。その音を頼りに、ビルの入口までたどり着けたら、あとは勇気を出してエレベータで二階へ上がるだけ。 扉が空いたら、そこは神田で最も上質な音楽に触れられる空間『Bar Slight』だ。思わず外の雑多な街並みを忘れてしまうくらい、う

ON THE WAY TO PARK #009 『完全現地仕様!こってり、がっつり系ベジカレー』 (ベジキッチン)

ベジタリアンメニューをわざわざ食べたい、非菜食主義者はあまりいないのでは……? 私は肉も魚も大好きなので、わざわざヴィーガンレストランを探すこともないし、日頃代用肉を調べることもない。ただ、広い世界には様々な理由で肉を使わない料理があることも確かで、そのクオラリティは確かに肉なしでも充分に欲を満たしてくれるものも少なくない。 『PARK GALLERY』から歩いて15分。少し遠いけど行ってほしいのがベジカレーの名店『ベジキッチン』だ。ベジカレーと言いつつ、流行りのビーガン

ON THE WAY TO PARK #008 『いつものご褒美も、ちょっと奮発する日も。行きたくなる、近くのワイン屋さん』 (ワインスタイルズ)

年末年始、飲む口実には困らないからいつもより良い酒を冷蔵庫にストックしておく。ビールや日本酒、クラフトジンも素敵だけど、食事に合わせるならワインがいい。趣味の料理に没頭したり、お歳暮のハムを食べたり、カルディのセールで洒落たつまみを衝動買いしたり……。そんなときに冷蔵庫からとっておきのワインが出せたら、なんて素敵なんだろう。 『PARK GALLERY』にも時折、旨い日本ワインがあるけれど、せっかくだから家でも飲みたい。納得がいくワインを買える店って案外そう身近にはないもの

ON THE WAY TO PARK #007 『これを食わずに年は越せない!?神田の老舗、盤石の味』 (神田まつや)

1年も終わりが近づくと、神田や上野はいつにも増して騒がしくなる。クリスマスよりも年末、仕事納め後のこの辺りは楽しい。アメ横には朝から飲んだくれている人がそこら中にいるし、気の早い店が大売出しを始めて、御節料理の材料を買い出しにきている人でごった返す。そして、神田あたりに来たら毎年恒例、“年越しそば戦争”が巻き起こる。 『神田薮そば』、『更科』、『尾張屋』…… 錚々たる老舗そば屋が軒を連ねるこの地域。年の瀬ギリギリ、裏通りに目を疑うような行列があったら、間違いなく年越しそば待

ON THE WAY TO PARK #006 『神田の異空間で、髪を切る』(びようしつ seki.)

異彩を放っている。店構えは勿論、店主自身も。 神田須田町にある美容室、その名も『びようしつ seki.』。古民家の一階、木が茂り、窓からは店内がうっすら見える。骨董品や本、アートで埋め尽くされた店内にこれまたアンティークの椅子と鏡が1台ずつ鎮座。初めて通りがかったら美容室というよりも作家のアトリエだと思うはずだ。 神田の裏通り、老舗の飲食店や昔ながらの事務所兼住居型ビルが集まる一角にまさかこんな異世界があるなんて思わない。初めて通りがかった時、思わず二度見したのを覚えてい

ON THE WAY TO PARK #005 『外神田で42年、愛された「町」のスパゲッティ屋』(ブルーベリー)

食の好みというものは気まぐれだ。さすがに大人になってから嫌いだった食べ物が好きになったり、好きだった食べ物を大嫌いになることは珍しい。それでも、何とも思っていなかった料理をたまたま食べたらそのおいしさに感動してその日以降わざわざ食べに行きたくなることはある。あとは逆に大人になってから、幼い頃好きだったメニューを久々に食べたら、思いのほか今でもおいしく感じて、定期的に食べたくなることも。 PARK GALLERY の向かいにある区営住宅の一階、商業テナントの一角にあった老舗の

ON THE WAY TO PARK #004 『急な坂道の途中にある、素敵な日常に寄り添う古着』(Sirturday)

いい古着屋の基準なんて人それぞれだ。基本的には一点物しかないから、「いいものがある」というのもそう単純な話ではない。ある日素敵だなあと思ったものが、1カ月後に行ったらもうない可能性が高い。 そういう中でも、『Sirturday』は「いい古着屋」だと太鼓判を押したい。元々は本郷三丁目駅からすぐの場所にあって、今ではもう少し湯島寄りの場所へ移転している、恐らく PARK GALLERY から最も近い古着屋だ。ユーロ古着を中心にワークウェアやミリタリー、日常着に加えてスポーツもの

ON THE WAY TO PARK #003 『お腹をすかせて遊びに行きたい、僕らのダイナー』(CRANE)

アメコミに出てくるダイナーがそのまま現実世界へ飛び出してきたような店がある。PARK GALLERY から徒歩5分の場所。壁はピンク、巨大なステレオから音楽が流れ、金属の棚には色鮮やかな缶が並び、大柄なオーナーシェフがにこやかに立つ(『スポンジボブ』のカーニィさんを彷彿とさせる)。その名も『CRANE』。 東京の東側で美味しいものが好きな人なら、知らない人はいない、グルメハンバーガーショップだ。土日のお昼時となれば真夏でも長蛇の列ができて、遅めに行ったら品切れ覚悟。正直、飲

ON THE WAY TO PARK #002 『最近食べてないものが頼みたくなる、老舗喫茶店』(French Vouge)

『クッキングパパ』の第2巻、ハヤシライスが登場する回を読むと、この店を思い出す。湯島駅前の喫茶店『フレンチォーグ』のランチ、定番メニューはハヤシライスだ。敢えて書き並べるような尖った特徴があるものではなくて、コクがあって、まろやかで、ほのかな酸味があって、まさに“普通のハヤシライス”。具材も肉とマッシュルームと玉ねぎだけ、ごくシンプル。食後のコーヒーのためにほんの少し腹にゆとりが残るようなボリューム感も喫茶店として完璧だ。 ハヤシライスって、よく考えてみたらここで食べるまで