見出し画像

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (57) やまだ なおと 『この部屋で夏を待つ』(北海道札幌市)

COLLECTIVE の会場となっている PARK GALLERY 。ぼくが昔、ライブハウスで働いていたり、ラップユニットや積極的に音楽イベントやフェスをやっていたということもあるけれど、パークスタッフやアルバイトはみんな音楽が好きで詳しい。なので外や会場で流れている音楽に反応して店に寄ってくれたり、中でそのバンドの話が弾んだりする。SNS ではなかなか伝わらない『音』『空気』の部分ですよね、これは。ギャラリーというと小さな音でピロピロとナイスで小粋な音楽がかかってればいい(なんなら作品の邪魔になる!)っていう感じのところが多いと思うけれど、うちはわりと BGM も店のアイデンティティになってるんじゃないかと時々常連のお客さんとも話してます。展示作家のおすすめの音楽をかけて過ごす時もあるし、お互いのおすすめを教えあったり。ライブイベントでもないのでみんなで歌ってご近所さんにクレームをもらったり(懐かしい)。去年まではよくパークで音楽のライブも開催してました。コロナが落ち着いたらまたライブイベントも積極的にやっていきたいなと思ってます。音楽が好きな作家さんの展示も大歓迎です。音楽が聞こえてくる作品というのももちろん大好きです。

画像1

この部屋で夏を待つ

今回紹介するのは、北海道札幌市からエントリー(←うれしすぎる!)の ZINE『この部屋で夏を待つ』です。作者は、イラストレーター、絵本作家、グラフィックデザイナーとマルチな肩書を持つ、やまだなおとさん。えほん大賞絵本部門で大賞を受賞した経験もある実力派のやまださんによる ZINE は、絵本ではなく、音楽が詰まった『レコード』のような1冊、いや1冊という言い方ではないですね、ひと足早い北海道の自粛生活の中で日々感じたことや、その期間に聴いていた音楽などの断片を「綴じずに」シングルレコードサイズのジャケットに詰め込んだ、新感覚の ZINE です。レコードのスリーブから、おもちゃばこをひっくり返したかのようにポップな色合いの様々なカードが出てきて、その1枚1枚に、絵や言葉(時に写真)が表現されています。デザイナーというだけあって、その1つ1つの仕事がとてもていねい。レコード、カセットテープ、MD、様々なメディアからはまるで音楽が聞こえてくるし、添えられた言葉はまるで歌詞のよう。音楽好きなんだな〜というのが全体から滲み出るように伝わってきます。その証拠に、1つ1つのカードにはその時に聴いていた(またはその想いに寄せた)BGM がセレクトされ、クレジットされています。そのジャンルも、年代も幅広く、思わず感心しながら読み耽ってしまったよ、おじさんは。ちなみにジャケットは作者がこの夏に一番聴いているという銀杏BOYZのオマージュ。

画像5

作品中に描かれている、「泣いているひとを見て、見てみぬふりをしたくない」という子どもの頃の思い。コロナという状況で大変な思いをしている作家や友達がたくさんいる中で、ここまで気丈に、強く明るくやさしく、創作を続ける、やまださんの姿を、会ったことはないけれど、ZINE を通じて感じ取れる。ZINE って『伝える』ためのツールでもあるんだと、改めて思えるなんだか勇気をもらえる ZINE です。レコードの貸し借りをするみたいに、誰かに貸したいな。これ。

画像5

BGM のセレクトに共感してうなずいてるひとたちがパークにたくさん。どんな音楽が紹介されてるか、気になる人はぜひ会場でチェックを。

それにしても絵のタッチの幅、デザインのセンス、文章の力、音楽の吸収力、すさまじい。感服。

画像5


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


画像4

作家名:やまだ なおと(北海道札幌市)
1991年生まれ。北海道札幌市で絵本作家、イラストレーター、グラフィックデザイナーとして活動しています。本や映画、音楽などが好きで自分の好きなアレコレや日々感じたことなどをZINEで表現しています。第14回えほん大賞受賞作「プップクプードル 」が発売中。
https://yamadamono.wixsite.com/yamada
【 街の魅力 】
少し歩くと自然が豊か。
【 街のオススメ 】
① 第三モッキリセンター(居酒屋) ... 「THE 大衆酒場」と言った佇まいで、70年以上の歴史があります。昼間からお酒を飲めるので地元の飲んべえが集まってるお店です。
https://tabelog.com/hokkaido/A0101/A010102/1005856

② フレッシュエアー(レコード店) ... 狸小路になるレコード屋さん。
小さなお店ですが品揃えや立地が魅力的。
http://www.freshair-record.com/index.html

③ レトロスペース 坂会館(私設博物館) ... ビスケットで有名なお菓子屋さんの工場に併設されています。捨てられていく昭和の日用品から人形、マネキン、おもちゃなどがゴチャゴチャっと集められた秘宝館のような場所です。館長が一人で収集したコレクションでその猥雑さも含めて人気な場所です。入場無料。
https://www.facebook.com/rsp.saka
【 同じ地域で活動するひと 】
森迫 暁夫 / 美術家
https://www.facebook.com/akio.morisako
獅子 原和子 / アーティスト
https://twitter.com/jladyleo
那珂 隆之 / グラフィックデザイナー
https://shimauma-design.com

🙋‍♂️ 記事がおもしろかったらぜひサポート機能を。お気に入りの雑誌や漫画を買う感覚で、100円から作者へ寄付することができます 💁‍♀️