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よむラジオ耕耕 #17 「夏に読むタッチはもはやアートだ」

加藤:こんにちは。 加藤 淳也 です。

星野:こんにちは、こんばんは、 星野 蒼天(そら) です。

加藤:7月4週目ですね。来週からは8月になるので、トークテーマを夏のカルチャー、サマーカルチャー、『サマカル』と題して募集しましたが⋯。

星野:いいですねえ。絶妙にダサくて(笑)

加藤:サマカルを募集したいと思ってるのですが、どんなのがあるか改めて例として紹介できたらいいなと思っていますが。どうですか、好きな夏の作品ってあったりしますか?

星野:そうですねえ。難しいですねえ。夏の作品といえば⋯。ホラーですかねえ。

加藤:あーやっぱりねえ。

星野:ほんとは苦手なんですけど。

加藤:苦手なんだ(笑)。

実は怖いのが苦手な星野くん

星野:こないだ PUNIO で『ホラーナイト』という企画をしまして。企画してくれた方は、武蔵美を卒業していて、卒業論文でも「ホラー映画と水の関係性」について書いたんですよ。

水ってジメジメした感じが、怖さを生み出してるんでしょうね。クリーチャーとかもべちゃべちゃですもんね。そういうホラーを研究している子に説明されながらホラー映画をみると怖くなくなるんじゃないかと思ったんです。ホラーって話の構成も面白いので。その会以来、ホラー映画が得意になりまして。それもあって、最近見た映画が『きさらぎ駅』という映画です。

加藤:あーあの「実在しない駅」を主題とした映画ですよね。

星野:そうです。異世界に行ってしまうために行き方があって、そういう要素がおもしろかったですね。怖いけれどツッコミどころも満載の映画でした。怖いのニガテだけれど、夏だし怖いものを観たいという人がいれば、友達とツッコミながら見るといいかもしれません。最近のサマカルでした。加藤さんのサマカルはありますか?

自称霊感あり

加藤:僕の実家が山形の山奥で、人口30人もいないような集落に祖父母が住んでいるんだけど、毎年、夏になると、親戚一同が集まって浴衣に着替えて提灯を持ってお墓まで列をなしてお供物を持っていくんです。歩いて10〜15分くらいのところにお墓があって、お墓参りをするんですが、それが原風景で心に残っているね。

提灯の灯り、遅く暮れる夏の夜の空をよく覚えてるな。そのお盆の体験が、ぼんやりあって。それが映画『歩いても歩いても』を見ていて思い出されます。樹木希林 が実家のおばあちゃん役で、日本の夏の原風景が切り取られているいい映画です。夏の映画で好きな映画ですね。

あと、夏の映画なのかは分からないけれど、僕が人生で訪れたいロケーション No. 1 の映画があって。河瀬直美 の『萌の朱雀』という尾野真千子のデビュー作なんですけれど、奈良の西吉野という田舎が舞台で、とてもいいんですよ。車とったら行きたいなと思っていたんですけれど、忘れてました。今年行きたいな。 尾野真千子がここの出身だそうです。

本で言うと、 サリンジャーや村上春樹もあるけど サガンかなあ。フランソワ・サガンの『悲しみよこんにちは』も夏っぽくて、すごく良かったですよ。サガンのデビュー作なんですが、複雑な環境にいる女の子が夏を別荘で過ごし、恋に落ちる。夏の青さとギラついた太陽、砂浜が、映像で突き刺さるような作品で、夏を感じる1冊ですね。

あとは、絵の世界ですけれど、デビッド・ホックニーが夏を感じられて好きです。漫画だと わたせせいぞう もいいですね。

星野:漫画でいうと、 真造圭伍 さんの『台風の目』という短編もおすすめです。夏休みに小学生の主人公の家に宇宙船が墜落(ついらく)して、宇宙人が夏をただただ少年と過ごすという話です。いいんですよねえ。⋯僕ら、なんだか、アッパーな要素ないですね(笑)。

加藤:まずフジロックとか行かないからね。キャンプも暑いし。夏らしいことは外ではそんなにしないなあ。室内で楽しみがちだね。

漫画で言うと20代の頃は愛蔵版の『タッチ』を全巻持っていて、毎年夏になると儀式のよう最初から読んでいました。別に野球少年じゃ無いし、ルールもわかんないんだけれど、『タッチ』を通して、僕が高校生の時に摂取できなかった青春を取り戻していました。「あの時、俺が投げたあの球が⋯」なんて自分のことのように感情移入して(笑)

でも、それがおもしろくて、毎年作品の捉え方が変わってくるんですよ。グッとくるポイントも変わったり。『タッチ』おすすめです。また、スポーツという動きを短縮されたコマで描く。「投げた」と読者に感じさせるその余白が素晴らしいんですよ。また、人間関係の心の動きとか、もつれも説明なしに進んで行くんです。『タッチ』はもはやアートです。最終巻の最後の最後も、まさに⋯。

星野:へえ、気になるなあ。

加藤:まだ20代で読んだことない人は読んでみてください。

星野:ちょっと PUNIO に用意しておきます。

星野:いいですね。甲子園を見るのも楽しくなると思います。


よむラジオ耕耕スタッフかのちゃんによる文字起こし後記

ふたりのサマーカルチャーこと『サマカル』に迫る回。もう耕耕では恒例になりつつある映画トークのほかに、漫画や美術にまで及び、夏を感じる事のできる作品について語り合っていた。

聞いている中で思い出されたのが、星野源さんのオールナイトニッポンのとある回だ。その日は「怖い話をしたい。でも、ホラーが怖い人に怖い思いをさせたくない!」という思いから、なんとマツケンサンバを流しながら怖い話をするという回で、ホラーとマツケンサンバでは驚くほどの温度差があり、しかしうまーく融合していて、聞いていてとてもおもしろかった。また、Spotify のアーカイブで聴くと、著作権の関係で音楽なし音声のみで視聴できる。ノーマツケンで純たるホラー要素を楽しめるというのも二度美味しい。サマカル、意外とあちこちに溢れている。

夏というと、やはりビールだろうということで、私はいつもに増してビールばかり飲んでいる。最近は日本のクラフトビールに興味があって、よく山口や千葉のブルワリーのものを試し飲んでいる。最近のクラフトは味はもちろん、デザインも凝っていて、ジャケ買いも楽しみのひとつだ。

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