見出し画像

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー ⑫ 猫屋敷 温 『さよなら、トーキョーオリンピック』(東京都大田区)

COLLECTIVE もついに明日。毎日のように届く ZINE に感謝をしながらも、今日も東京!東京!東京! コロナ禍で激動する TOKYO の見えない重圧が、静かに膿を出すかのように、東京から集まってくる。

「剣ではなくペンを持て!表現しそして自由を手に入れよ!」と言わんばかりに ZINE が届く。去年おととし、10タイトルあれば、その中で東京は1、2件あればいい方だったけれど(意外と東京少ないよねが定番でしたが)、今年は申し込みの半分以上が『東京』。パークが東京の中でも少しは知名度があがったのかと考えればうれしいけれど、コロナによる焦りじゃあないといいけれど。

他県からのエントリーが例年より少ないのはすこし寂しい。ZINE さえも「東京に行くのはよそう」と言っているかい(東京以外の地域で ZINE を作ってるひとがいたらぜひ紹介ください)。

それにしても東京。TOKYO。口にするたびに擦り切れる感じがしますね。ここ最近は。

画像2

令和デカダンス蒲田修羅街挽歌

つくり話か、本当の話か区別はつくか

さて、そんな東京からエントリーの ZINE『さよならトーキョーオリンピック』は、石子秋貞さん著の小説(挽歌)に今回の参加者の猫屋敷温(ネコヤシキハル)さんが石子さんの小説を受けて、写真を撮り下ろし、添えたもの。デザインも猫屋敷さんによるもの。題字もかな。いい文字だ。

最初手にした時は『小説』だとは思わず、写真集かと思った(小説とは思わない判型)。宵か朝焼けかわからない都会を切り取った写真に『さよならトーキョーオリンピック』と殴り書きされた装丁が、写真への期待を膨らませた。ページをめくり、「なんだ写真集じゃないのか」と一瞬がっかりしたけれど、小説の横に添えられた写真が昭和の輝かしい時代の日本映画のワンシーンみたいで、その写真に触れたく、文章を読み進めた(ちなみにぼくは小説が苦手だ)。上海の安いホテルで、窓の向こうに干された女性ものの赤い下着を眺めならが胃もたれした体を床に横たわらせていた時のことを思い出した。東京も1つのアジアのピースで、ある意味発展途上してる。つまり本当はまだまだ猥雑な部分が多いし、見せてないだけで大きいそれを、まるでないかのように蓋をして、メディアでは美しい国のように報道してる。ちょっと滑ったら気軽にダークサイドなんだよね。日本は。そう思わせる文章の連続に時々、写真が生々しい。新井英樹の漫画みたい。説明的なんだけれど、説明しすぎているわけではない。これは架空の話なんじゃなくて、現実の話なんだよ、と突きつけてくるような写真というか。作者のレトリックな意図を、見抜いた上で撮影してそうな感じ。意図を汲もうとすると逃げて、本を閉じると近づいてくる。名前に猫とつくだけのことはある。


画像3

実話と思わせる写真っていうのは強いな。すごいと思った。欲を言えばもっと写真が見たかった。小説には負けない、力のこもったカットがたくさんあるだろうな。

それとなんだろう、小説特有の、終わり際の高揚感。エンドロールまであと少しがわかってしまう感。そこに挟まれた1枚の美しい光を見るためだけにもこの1冊はいいかもしれない。最初に全部めくらずに。


画像4

久しぶりに小説を読んでみて、なんか懐かしい気持ちになったな。

ちなみに、COLLECTIVE に参加している ZINE『magazine 一服』 にてこの ZINE の作者と猫屋敷さんの対談が読めます。こちらも併せてどぅぞ。


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)

*ZINE が差し替えとなりました。現在出展中の ZINE はこちら👇


画像1

作家名:猫屋敷 温(東京都大田区)
1989年春、東京都大田区羽田生まれ。
小五よりカメラを持ち始める。日本大学芸術学部写真学科中退。
24歳の頃に発達障害の診断を受ける。
デジタル写真についてはほぼ独学で学んできた。日常の風景に潜む頽廃的抒情や、人間が奥底に隠そうとする孤独を炙り出す。
https://www.instagram.com/halu.n2n
【 街の魅力 】
まずは何より「羽田空港」「蒲田の羽付餃子」
【 街のオススメ 】
ブックスフジ ... 地域密着型の書店。大田区本がたくさん置いてあります。
店主も優しい。
https://www.booksfuji.co.jp
【 同じ地域で活動するひと 】
石子秋貞 / この本の文章を書いた人
https://note.com/kamatanoir
Hara Takatoshi / 蒲田カルチャートーク主催者
https://note.com/haratakatoshi


🙋‍♂️ 記事がおもしろかったらぜひサポート機能を。お気に入りの雑誌や漫画を買う感覚で、100円から作者へ寄付することができます 💁‍♀️