見出し画像

COLLECTIVE レビュー #05 IMAZINE 『IMAZINE』 (茨城県)

ZINE という概念は、ぼくがはじめて ZINE に触れた頃に比べて、形骸化して、軽くなってしまっている気がする。なんでもかんでも ZINE と言ってしまっていないだろうか。例えるならば、並んでまで行くサウナ、インスタで話題の町中華、ネオンサインの立ち飲み屋、クリエイターが集うオルタナティブスペース、スナック女子、バンクシー展、PARCO の横丁。そういうのが嫌いで、そういうガスを吸わないように必死に生きてるのに、いつの間にかそういう波に加担して助長している気がして、今年で COLLECTIVE はやめようと思った。
 
ぼくがはじめて ZINE に触れたのは学生時代。おそらくゼロックスのモノクロコピー機の刷り立ての、指先に残る「ザラザラ」としたひっかかる手ざわりが忘れられなかった。その内容は自分以外の誰かに向けられたものなのは確かだけれど、どこかバラバラで、でもこの手ざわりは同じ世界に住んでいる動物のものだということはわかった。それは物理的なものだけではなく、心のざらつきも。例えばそこに描かれていたのは、パーソナルな喜び / または痛み。例えば、声にならない声 / 仕方のなさ。溢れる衝動 / 病、だった。そういう ZINE が、ない。「時代」と片付けてしまうのはかんたんだけれど、例えば今の学生は「ZINE」というメディアをどう捉え、どう考えるのだろうと、手に取ったのが今回レビューするZINE「IMAZINE」だ。
 
 
COLLECTIVE 2022 ZINE レビュー #05
IMAZINE「IMAZINE」

 
 
東京藝大の先端芸術表現科に通う同輩たち9人によって寄稿されたアートワークや写真、テキストで構成された1冊。同じ学科に通いながらも学びのベクトルは自由で、それぞれが好きなことを研究・発信できる「先端芸術表現」の特性を活かしたアラカルト的なアウトプット集。これを1つの冊子にまとめあげる編集力は学生ながらに見事と言える。

しかし良くも悪くもバラバラな感じは否めない。詩、グラフィック、写真、イラスト、現代アート、小説、さまざまなジャンルで「何か発信したい」と思う個々の強いパーソナルなエネルギーがあちらこちらに分散してしまっている印象。ただ、一人ひとりのセンスのよさは十分すぎるほどに伝わってくる。だからこそ、彼ら、彼女らが誰で、何なのかをもっと知りたいと思った。例えばステートメント。例えばプロフィール。例えば自己紹介。

ぼくは<みんな>のことが知りたいのではなく、<きみ>のことが知りたい。

多くの人がそうやって誰かに恋に落ちるように、ZINE も一緒だと思う。

<私>から<私たち>へと主語を大きくしたことで個の表現の輪郭がボケてしまう。もう少し手を伸ばせば<個>が輝くのにとも思った。A5版の32ページの ZINE では、この9人の才能は伝わりきらない、かも、とか。ZINE という「枠」のせいで、逆に窮屈になってしまってはいないだろうか、とか。作ることが目的になってしまっていないだろうか、とか。
 
紙にすることの魅力も強さももちろんある。けれど、「ZINE」という使い勝手のいい言葉の魔法によって表現をセーブされてしまってはいないか。100Pあれば100万あれば、と、もっと自由に柔軟な発想でいるべきだなとも思う。せめて心だけでも。

作り手はいま、改めて考えなくてはいけない。
 
ただ、このZINE をめくりながら、この人たちのことをもっと「知りたい」「話したい」と思った気持ちは、昔、いろいろな ZINE をめくって感じた時の手ざわりに似ている。なんで作ったのか。なぜこの9人なのか etc…。

『IMAZINE』と書かれた黒い表紙に触れた時に、あの時の恋心に近いワクワク感が指先から伝わってきた(ピンクフロイドが好きと言うこともあるかもしれない)。そしてページをめくれば、あの頃の自分がクレジットされているような気さえした。

そして何より「何かはじめる」ということの「心強さ」と「難しさ」を、この1冊が身を持って教えてくれるとも言える。
 
今後が楽しみだなと感じる、はじまりのZINEです。
 
(偉そうに聞こえたらすみません)
 
ちなみに最後のモノクロの写真がすごく好きでした。 


レビュー by 加藤 淳也

---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----

【 ZINE について 】

同じ大学、同じ学科で出会った同期メンバーと制作した ZINE になります。それぞれが興味のある分野を自由に学んでいるような学科の特色から例に漏れず、この冊子も参加していただいたみんなの imagine が元となる原稿が集まっております。

タイトル『IMAZINE』
価格:¥880(税込)
ページ数:32P
サイズ:A5

作家名:IMAZINE(茨城県取手市)
定期発行誌 IMAZINE といいます!
https://www.instagram.com/ike51ke

【 街のオススメ 】
OMONMA TENT… お洒落なお食事と素敵な展示に出会えるアートギャラリーです。
https://www.instagram.com/omonma_tent


🙋‍♂️ 記事がおもしろかったらぜひサポート機能を。お気に入りの雑誌や漫画を買う感覚で、100円から作者へ寄付することができます 💁‍♀️