星野博区議の発言について②:同区議への質問状

星野博区議の発言について①で予告した、
私たちの質問状を公開します。

なお、質問状はメンバー全員で作成しましたが、
下書きを作ったメンバー個人としては、
同区議がLGBTQの権利保障のみならず
男女平等の議論に対しても
信じられない発言をしていること、
女性差別と性的マイノリティへの差別が根っこでは繋がっていることを
知ってもらいたいです。

それでは、以下、
質問状のテキストのコピー(ただし私たちの連絡先については迷惑メール対策のため一部改変しています)と、
質問状のファイル(pdf)を載せておきます。

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2022年9月30日

江東区議会自由民主党
星野博様

クロスオーバー・こうとう

公開質問状

拝啓 平素より、区政にご尽力いただきありがとうございます。
 私たちは江東区内でジェンダーやセクシュアリティについて考えたり、行動を起こしたりする団体「クロスオーバー・こうとう」です。
 私たちは2022年9月20日の江東区議会本会議(以下、「本会議」)での貴殿の一般質問を拝聴し、重大な懸念を抱きました。ただ、正確に申しますと、少なくとも今年度貴殿が企画総務委員会の所属となって以来の貴殿のジェンダーやセクシュアリティに関する発言についても同様の懸念を抱いていたところです。
つきましては、以下の各点について明確なご回答を頂きたく存じます。

・パートナーシップ制度が伝統的な家族制度を壊すとの主張について
 貴殿は「本会議」にて、パートナーシップ制度が伝統的な結婚や家族の観念を変質させ、婚姻制度を壊し少子化を助長しかねない旨、発言されています。しかしながら、そもそもパートナーシップ制度は様々な家族の在り方を保障するものであり、この保障の対象には子連れの性的マイノリティや、代理出産及び精子卵子提供を始めとした手段により子どもを将来産み育てようとする性的マイノリティが含まれるのは明らかです。それゆえ当該制度が少子化どころか、幸せな子どものいる家庭を増やすことにつながる可能性すら大いにあります。また、より広範な、異性愛者も利用可能なパートナーシップ制度は、何らかの理由ゆえに婚姻制度以外の制度による社会的承認を求める異性愛カップルの生活をも安定化させ、子どもを産み育てる環境をさらに改善するでしょう。加えて、同性婚やパートナーシップ制度を導入した多くの国において、当該制度が少子化につながったことを示すデータは得られていません。それどころか、当該制度との関係性は明らかでないにせよ、導入の後に少子化に歯止めがかかった国すらあります。
 上述の明らかな可能性や事実にもかかわらず、パートナーシップ制度を少子化助長の一因と推論した具体的根拠をお聞かせください。

・制度の不要性を説く主張及び問題を個人化する言説の不適切さについて
 貴殿は、性的マイノリティに対し自治体でパートナーシップ制度が出来た場合に利用したいかどうか尋ねる港区の2017年度の調査を引用し、利用したいと思わないの人のうち「そっとしておいてほしい」人々が多くいることを示し、同性愛は「内心の問題」だと考える性的マイノリティが多数派だと推論し、パートナーシップ制度の不要性を説かれています。しかしながら、そもそも制度を利用したいと思わない人々がいるからといって、パートナーシップ制度を含む市民サービスや権利保障制度が不要になるわけでは必ずしもありません。生活保護制度を利用したいと思う人々が少なかったとしても生活保護制度が不要になるわけではないのと同様に、人々の暮らしと権利を保障する制度の必要性は、制度を潜在的に利用しうる人々の意思のみに依存するわけではなく、それを実際に切に利用したいと思う人々の権利及び生活の保障という観点からも導かれるべきです。
 また、内心の問題という点について言えば、性的指向は確かに個人のものである一方で、性的指向の社会的取り計らいが社会的な問題であることは、言うまでもありません。個人の性質についての社会的な問題を、社会が対応する必要のない個人的問題と見なすことは、そもそも議論のスタートラインにすら立っていないどころか、社会的な問題の自己責任化につながりかねない議論です。
 上述のように、貴殿は本来価値中立的なデータを利用しつつも、社会制度の必要性に関する認識の不足や議論の前提の曲解により、過剰に法的対応を厭う結論を導こうとしております。このように極めて恣意的な解釈をするに至った理由をご教示ください。

・制度の悪用について
 貴殿は、パートナーシップ制度を利用した公営住宅への入居について問う過程で、疑似カップルによる制度の悪用の可能性を指摘し、昨年大阪府高槻市にて起きた保険金目当ての殺人を例に挙げながら、パートナーシップ制度により同種の事件が増加する可能性を示唆しています。しかしながら、制度の悪用可能性を指摘するなら、異性間の結婚も十分に多くの犯罪の温床となっているとさえ言えるかもしれません。結婚詐欺や婚姻間での保険金目当ての殺人は枚挙に暇がないからです。マイノリティの権利保障を目的とした政策のみを標的として殊更に悪用の可能性を指摘することは、不当な取り扱いであり、その限りで差別です。制度の悪用について差別的な印象操作を行った理由をお聞かせください。

・夫婦別姓を求める陳情について
 貴殿は2022年6月13日の企画総務委員会(以下、「企画総務委員会」)において、婚姻に際し夫婦の姓を必ず同じくする現行制度について、「夫婦間の合意によってどちらでもいいわけですから、別にこれは強制でも何でもない」と述べておられます。しかしながら、カップルのいずれの姓に統一するかについては確かに選べるものの(但しこの点についても多くの場合、女性が姓を変更せざるをえないという現状があります)、いずれかの姓に統一すること自体は当人らの意志にかかわらず必ずすべきことと法的に規定されており、語の正確な意味で強制としか言いようがありません。
 ご指摘の不正確さを認め、撤回なさりますか。撤回なさらない場合、ご発言が正当である理由を明確にお述べください。念のため申し添えますと、いずれかの姓に統一したいカップルの存在は制度の強制性とは無関係であり、ご発言の正当性を担保しません。

・第7次江東区男女共同参画行動計画での数値について
 貴殿は「企画総務委員会」において、令和元年度の区民アンケートの中で「男女が平等だと思う区民の割合」が14.4%と記されていることについて、「共産党の国家の北朝鮮なんかよりももっと、この数値を見るとひでえなあ」と述べ、「この数字自体がおかしい」「そんな数字をここへ出して、男女平等社会をつくるとかなんとかいって、ばかばかしい話だ」と述べておられます。以下、二点の質問です。
 まず、「共産党の国家の北朝鮮」とはそもそも何であるのか不明ですが、それと比べて何がどのような意味で「ひでえ」のか明確にお答えください。
 また、いやしくも江東区役所の一部門が調査主体となって行ったアンケートのデータについて、数字自体の正当性、ひいては江東区民の見解自体を疑う明確な根拠はありますか。

 お忙しいところ恐縮ですが、上記の各点についてご回答をお示しください。ご回答は団体メールアドレス(partnerships.koto☆gmail.com)にご送付いただけますと幸いです。勝手ながら回答期日は10月14日(金)までとさせていただきます。なお、本質問状は公開質問状ですので、近日中に私たちのウェブサイト(https://note.com/partnershipskoto/)にて公開いたします。また、貴殿からのご回答につきましても、同サイトにて公開させていただく予定です。万が一ご回答いただけなかった場合は、その旨を同サイトにて記すことにいたします。
 議論は民主主義の基本と明確にお述べになった貴殿のことですから、当然私たちの懸念に真摯にご回答いただけると信じております。 敬具

【追記】
このシリーズの他の投稿へのリンクは以下の通りです。

星野博区議の発言について①:経緯の説明
https://note.com/partnershipskoto/n/nda9b2d2e9ed5

星野博区議の発言について③:江東区議会自由民主党への質問状
https://note.com/partnershipskoto/n/nd6f83a15e8c5


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