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傍観者は有罪か、無罪か? 韓国映画【幼い依頼人】

あぁ、とんでもなくどよんとする映画を観てしまいました。幼い依頼人は、漆谷継母児童虐待死亡事件という実話を基にした、幼児虐待を扱った映画です。2019年公開作品(日本は2020年)

この映画、オフィシャルサイトのあらすじでもYOUTUBEでの予告編でも、後半に起こることを公開しすぎなので、なるべく情報を仕入れず観るのがおすすめです。(そんなこと言って映画について書いてる私(汗))。一応YOUTUBEを貼ってありますが、詳細が分かりにくいように韓国語のものにしました。私はあらすじも予告編もほぼ見ないままこの映画を観たので、その後の展開が衝撃的すぎました。

幼児虐待が題材となっている映画ではあるけれど、本当のテーマは違います。映画の初っ端、イ・ドンフィ演じるジョンヨプが法律事務所の面接で尋ねられることが全てです。

「暴漢に30分も刺され続けて女性が殺された事件(キティ・ジェノヴィーズ事件)では38人の傍観者がいた。彼らは有罪か、無罪か?」


ジョンヨプが求職中、臨時で働いた児童福祉館で出会った姉と弟の幼い兄弟。彼らは新しい継母に虐待を受けていて(実父はネグレクト)、大人にSOSを求めたけれど警察も福祉館も、家庭内の問題は法律の壁が厚いとの言い訳に親身に話を聴いてくれません。そして先生も近所の人達も実情を知っているのに知らんぷり。

その中で、腰掛け福祉職員のジョンヨプは嫌々ながらも姉弟に付き合ってあげるんです。ハンバーガーをおごってあげたり動物園に連れてってあげたり。子供たちからすれば初めての楽しい経験。特に弟はジョンヨプにすぐになついてしまうのですが、ジョンヨプは大手法律事務所への就職が決まってソウルに引っ越してしまい、そのまま疎遠になっていくんです。

そもそも姉弟のことを面倒に思っていたジョンヨプなので、電話が来ても出なかったりとわざと距離を置いていく・・・。そんな中、大きな事件が起こってしまいます・・・。

この映画、幼児虐待を扱っているといえど、前半は結構ほのぼのタッチでかなり油断してたんです。なんだかそれほど過酷な展開にはならなそうだぞと。弟役の子がめちゃくちゃ可愛いし。ところがどっこい、想像以上に過酷でしたよ!

もう、ユソン演じる継母の虐待っぷりがひどいんです。日本の映画やドラマでは子供への虐待はファジーにされるけど、韓国ではしっかり描く。これはある意味大切なことだと思います。そこからしか見えてこない本質があるから・・・。

この継母について言えば、虐待に罪悪感を感じていないし、自分の怒りの感情をコントロールできずに突発的にやってしまう…、いわばサイコパス、ていうか完全に気が狂ってる…。だから、虐待の加害者を辛抱強く説得して是正させようとかそんなレベルではないのです。本来なら絶対、子供と一緒にいさせてはいけない人物。

そんなこと、一度警察やら福祉館が強制力を持って徹底的に調査すれば分かることだったんです。でもそれをしなかった。先生も近所の人達も虐待を知っていたのに何もしない。
その理由は明確で、みんな、ただただ面倒だったから。

でも、そのせいで取り返しがつかなくなってしまうこともある。
その後に自分たちの行動を後悔して、できる限りのことをやったとしても、大きすぎる代償は決してチャラにはならない。

ここで出てくる傍観者はかなり極端なので、実際の社会にはもっと善意の人がいると思います。考えさせられるのはもっと曖昧で複雑な状況の時にどうするのかということ。明らかな虐待などの事件を目撃して警察に通報することは簡単なことです。だけど例えば困っているお年寄りや子供に気づいて、一時的ではなく継続して手を差し伸べる必要がある時、果たしてそれができるのか?

最初から見なかったフリをしたり、ジョンヨプのようにだんだんフェードアウトしてしまうのではないか?もし、手を差し伸べる気持ちがあっても、他人がそこまで踏み込んでいいものなのか・・・。結局は実際に直面しないと分からないことだけれど、もう少し周りにアンテナを張っていこうと、色々考えさせられた映画でした。

でもやっぱり辛い映画だったなー(笑)。

↑ このサイトの解説にはネタバレが含まれているのでご注意を。

極私的スキ度★★★★★★★(7)



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