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セウォル号事件を題材にした韓国映画【君の誕生日】

2014年4月16日に起きたセウォル号沈没事故
たくさんの死者を出し、その多くが高校生だったことから、日本でも大きく報道されました。
その、セウォル号沈没事故を題材にした2019年の映画「君の誕生日」。
日本公開は2020年です。

もちろん、とても重い映画です。
でも、大分変化球なんです。
映画が始まってからかなり長い時間、セウォル号のことは話題にされません。ただちょっと、いや、相当変な夫婦が淡々と映し出されるだけ。

変わった夫婦に、一体何が起きたのか?

夫の(ソル・ギョング)がどこかの国から帰国し、妻と娘が待つ家に帰宅するも、妻(チョン・ドヨン)は居留守を使ってドアを開けず、結局夫は実妹の家に泊まる羽目に。

妹との会話もなんだかおかしく、「小学生の娘に前に会ったのは、よちよち歩きの時でしょ」と言われたりしていて、「あれ、この映画はセウォル号の話なんだよね、なのに何年も父親が帰国しなかったってどういうこと?」と、軽く混乱するありさま…。

一体どんな話なんだろう?という疑問が渦巻き、一瞬にして映画に惹きつけられました。この演出、さすがです。

一方、妻のチョン・ドヨンは、スーパーで働きながら娘を育てているものの、明らかに悲しみを抱えている雰囲気をまとっています。何も言葉を発してはいないのだけど、ものすごい緊張感があるんです。カンヌ女優賞の演技は、やっぱり半端ないです。

徐々に明らかになっていく、家族の事情と深い悲しみ

その後ゆっくりと、夫婦の関係、そしてセウォル号事故との関係が明らかになっていきます。

公式サイトにも最初に書かれているのでちょっとネタバレですが、セウォル号事故で、夫婦は高校生の息子を亡くしているのです。

でも、色々と複雑な事情があり、普通の夫婦として、親として、息子の死を共に悲しむことも、支えあうこともできなかった…。
それぞれ、たった一人で堪えようのない悲しみを抱えて、1年をどうにか乗り切ってきました。

中盤、妻の悲しみが爆発するシーンがあるのですが、正直観ているのが辛かったです。実際にセウォル号で子供を亡くした親御さん達の悲しみに触れたような気がして…。

迫真の演技があってこそ、成り立った映画

そして終盤。もうずっと号泣です。彼ら夫婦だけじゃなく、生き残ってしまった生徒、大切な親友を亡くした生徒など、それぞれの心情も描かれています。

センシティブな題材だったので、映画化には細心の注意が払われたと思います。また、とても難しい内容だからこそ、別格に演技の上手いソル・ギョングとチョン・ドヨンがキャスティングされたんだなぁって思いました。本当に二人の演技があってこそ成立した作品だったと感じました。

この夫婦が直面した悲しみは、そんな簡単に癒されるものではなく、もしかしたら一生癒えないのかもしれない。
だけど、悲しみを共有できる人たちがいて、自分を気にかけてくれる人たちがいるのは一筋の光で、そのことに気づいて、その温かさに触れて、生きていって欲しいなぁって心から思いました。

現在Netflixで視聴できます。
https://www.netflix.com/title/81208887

極私的スキ度 ★★★★★★★★(8)









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