微苦：ども、微苦笑問題です。
　苦：今回は第2次世界大戦中にロンドンでレジスタンスを呼びかけ、フランス第五共和政初代大統領(任1959～69年)となったシャルル・ド・ゴールです。
　微：安全な場所からラジオで煽ってただけの奴だな。
　苦：まあ、ダンケルクから撤退した後はそうですが、ド・ゴールがいたからフランスは1944年に連合国入りし、国連安保理常任理事国の地位を得たのですから、大したもんです。
　微：あ、そうか。ヴィシー政権は枢軸陣営だもんな。
　苦：彼の家系は一応は貴族ですが、日本で言うと清原、坂上のような下級貴族です。ド・ゴールの「ド」はドイツ人の「フォン」と同じですが、ゴール(＝ガリア)はそれが示す本貫地ではありません。
　微：日本でも「関東」「九州」とかの姓のやつ、いないもんな。「九州男」は実在したけど。
　苦：ド・ゴールは生粋の軍人で、1909年にサン・シール陸軍士官学校に入学し、早速、「アスパラガス」と呼ばれました。
　微：吉本の中条みたいに全身緑色でコーディネートしていたそうです、趣味悪いことに。
　苦：違う！　身長が2mもあったからだよ！　ドゴールは卒業後、歩兵第33連隊に陸軍少尉として配属されますが、それは「あのフィリップ・ペタン」指揮下の連隊でした。
　微：「あの」ということは、つまり英雄から恥知らずになった・・・
　苦：はい、第1次世界大戦のヴェルダン要塞攻防戦で名を馳せ、1940年にナチスに協力したヴィシー政権のトップとなったペタン元帥です。
　微：ああ、戦後日本でも満州国関係者が素知らぬ顔で政界復帰したし、同じだろ。
　苦：はい。戦後、フランスの官僚も政治家も自分がそこで働いたこと、協力したことを一切なかったことにしているフランス版”不都合な真実”です。ま、それはだいぶ先のことですが。
　微：まあ、大人にはそれぞれ、口にしない方がいい話はあるわな。キミが留年したこととか。
　苦：言ってるじゃねえか！　ド・ゴールは第一次世界大戦では大尉としてドイツ軍と戦い、1916年の激戦地ヴェルダンでは部隊指揮中にドイツ軍の砲撃で重傷を負います。
　微：塹壕からド・ゴールの頭が出ていて狙い撃ちされたんだろ？
　苦：アスパラガスから離れなさい！　気絶だったんですが戦死と判断され、そう聞かされたペタンは、すぐにド・ゴールの実績をまとめた「墓碑」を作成しています。
　微：もっと前から用意してたそうです。「ご予約はお早めに」の高益、いや公益社みたいですが。
　苦：せめてキング・クリムゾンの「コンフュージョン・ウィル・ビ・マイ・エピタフ」くらい引用してボケろよな。
　微：オマエこそ半世紀以上前のプログレから離れろよな。
　苦：第一次世界大戦では捕虜生活も経験し、ド・ゴールは5回脱獄を図ったものの、5回とも失敗し、最も厳重な捕虜収容所であるインゴルシュタット城の牢獄に送られます。
　微：・・・やっぱり、その巨体が邪魔したの？
　苦：そうです。
　微：それを見たイエス＝キリストが「金持ちが天国に行くのは、ド・ゴールが穴から脱獄するより難しい」と説教したんだよな。名付けて「戦場の垂訓」。
　苦：ウマイこと言ったと思ってるだろ！　戦争終結後、ド・ゴールはサン・シール陸軍士官学校の教官を勤めました。
　微：教壇に立つと天井にぶつかったそうです。
　苦：ジャイアント馬場かよ!!　1922年にフランス陸軍大学校に入学しました。「勤勉にして敏鋭、博学。しかし友人との折り合い悪く、性格的に円満を欠く」と評価されています。
　微：欧米の評価は客観的だからな。マイナスがマイナスにならない。日本なら一つでもマイナス項目があるのは、余程のことで、その100倍の欠点があることになるからな。
　苦：キミ自身の経験ですね。陸軍大を卒業後、ド・ゴールはヴェルダン要塞攻防戦の体験から、これからの戦争は戦車や飛行機を駆使した機械化部隊による電撃作戦になるを見通していました。
　微：人間物見櫓だもんな、遠くまで見える。
　苦：何回も使い回すのやめなよ!!　著書でも機械化部隊の必要性を主張しました。ですがフランス軍主流派は受け入れず、皮肉にもドイツ軍が積極的にその方針を採用しました。
　微：自分からドイツに営業に行ったそうです。まあ、オレのネタ、オマエが全部パクってるもんな。
　苦：人聞きの悪いことを言うな！　1939年9月に第二次世界大戦が勃発し、1940年早々に北欧諸国をドイツ軍は電撃戦で次々と征服しました。
　微：ピカチュウ連隊を実戦に投入したんだろ？
　苦：意味が違います。1940年5月にドイツ軍はフランス軍が国境に用意した巨大要塞「マジノ線」まで進軍します。
　微：要塞線を見たドイツ兵は「マジ、マジノ？」と日記に記しました。
　苦：「マジ、マンジ」かよ!!　しかし、正面戦を行わず、機動力のある装甲部隊でベルギーから迂回して進軍して挟み撃ちにし、フランス軍はわずか1か月間で負けました。
　微：イタリア軍ほどではないにしろ、食事が豪華すぎたために、食糧が尽きたんだろ、どうせ。
　苦：第一次世界大戦で徴兵できる男性が激減していたことが最大の原因ですね。
　微：映画『天国でまた会おう』で「これでもか！」と描写されているやつだな。
　苦：開戦直後にド・ゴール大佐は新編制の第4機甲師団長に任命され、機械化戦術を実地に試す機会を得ます。
　微：ガンダムで言うと「ザクⅡ」の実戦投入だな。
　苦：第4師団は戦車の集中運用を行い、ソンム川南岸の敵橋頭堡3つのうち2つまでを取り返す活躍を見せます。
　微：ザク一機で戦艦3隻を沈めたんじゃないのか。
　苦：どこに海があるの!!　その第二次世界大戦緒戦の戦功により、フランス軍史上最年少の将軍となり、国防次官兼陸軍次官に任命され、イギリス軍の協力を得るためロンドンに飛びました。
　微：その時、首相がマクミランだったら絶対、撃墜されているな。
　苦：それは1957年のEEC拒否だろ！　しかし6月15日にパリが陥落したため、そのまま亡命します。ロンドンに「自由フランス政府」を勝手に結成します。まあイギリスも承認しますが。
　微：どっちに転んでも大丈夫なようにしておくのが安全保障の大原則ね。
　苦：ド・ゴールはBBCラジオを通じて、対独レジスタンス運動と親独のヴィシー政権への抵抗をフランス国民に呼びかけました。
　微：”ロンドンの浜村淳”と呼ばれたそうだな。連合国の作戦を実施する前にすべて解説して。
　苦：映画じゃねえよ！　また自らは「自由フランス」軍を指揮してアルジェリア、チュニジアなどのフランスの植民地を中心とした北アフリカ戦線でドイツ軍と戦いました。
　微：もしかしてロンメル将軍とも戦ったの？
　苦：しかし、ノルマンディー上陸作戦までにド・ゴールの元に集まったフランス軍の残存勢力はほんの一握りでした。
　微：偉そうにしている上に、自称「フランス自由政府」には、乗れないよなあ、普通。
　苦：確かに。その独裁的・強権的な姿勢から、チャーチルやＦ・D・ローズヴェルト米大統領と衝突することも多かったのは事実です。
　微：ド・ゴールは「私の上から目線はしかたがない」と言い訳したそうです。
　苦：座れば済むだろ!!　特にローズヴェルトはド・ゴールのことを「選挙で選ばれたわけではないのに指導者として君臨しようとしている」としてあからさまに嫌っていました。
　微：「それはスターリンのことか？　それともエドワード８世のことか？」と聞き返したそうです。
　苦：紛争を煽るな！　1944年6月の連合軍によるノルマンディー上陸作戦が成功すると、ド・ゴールは自由フランス軍を率いて一緒に戦い、8月25日にパリがドイツ占領から解放されます。
　微：まあ、この時、レジスタンス参加者が爆発的に増えたしな。ロシアもそうなるか。
　苦：彼は翌26日に、自由フランス軍を率いてパリに入城、凱旋門からノートルダム大聖堂まで凱旋パレードを行い、シャンゼリゼ大通りを埋め尽くしたパリ市民から熱烈な喝采を浴びました。
　微：狙撃を恐れて、両手がないカーネル・サンダース人形がオープン・カーに乗っていたそうです。
　苦：それは道頓堀から救出されたやつだろ！　フランス解放後、フランス国民議会は満場一致でド・ゴールを「フランス共和国臨時政府」の首相に選出しました。
　微：イギリスとアメリカのパイプがないと国連の常任理事国にもなれないし、ドイツ占領にも参加できない。しかもフランスの協力を英米が求めていることは織り込み済み。
　苦：予想がついたことですが、ド・ゴールは首相になると、民衆の声望を背景に、他の指導者・政党の意見を無視することが多くなり、とりわけ社会党・共産党から独裁的との批判を受けます。
　微：本当はスターリンに言いたかったくせに、八つ当たりだな。
　苦：勝手に推測するな！　1946年1月にド・ゴールは政策上の不一致を理由に首相を辞任します。
　微：いや、戦略はあっても政策ないだろ、ド・ゴールには。
　苦：彼は1947年にフランス国民連合を結成しましたが、これも1952年に政争が発生しました。1955年にド・ゴールは「公的生活から引退する」と宣言しました。
　微：傷が浅いうちに引くのは軍人として適切な判断だな。
　苦：この間、第四共和制政府は1954年にインドシナ戦争でホー・チ・ミンに完敗するなど、その時代遅れの植民地主義はフランスに混乱をもたらしていました。
　微：「態度も植民地の面積もでかくないとフランスではない」と真顔で言いそうだな。
　苦：ド・ゴールの権力の座への復帰は、1958年5月のアルジェリア危機からです。
　微：コロン(フランス植民者)のわがままだろ？
　苦：アルジェリアのコロンたちが、アルジェリアの独立運動に対抗するため、アルジェリア駐留軍と結託して本国政府に反旗を翻したんです。
　微：これも映画『アルジェの戦い』で描かれているな。拷問の多彩さには感服する。
　苦：その反乱鎮圧に向かった共和国保安隊も到着後に反乱軍に同調しちゃいました。横柄なコロンたちは、アルジェリアを失わないために本国にも反旗を翻したのです。
　苦：この緊急事態に、政府は軍部を抑えることのできる人物としてド・ゴールに出馬を要請し、首相に任命しました。
　微：「ゴールじゃなくてゴルゴだ」「俺の後ろに立つな」と、一層横柄になったそうです。
　苦：んなわけねえだろ！
　微：しまいには「給与はスイス銀行の指定した講座に振り込め」って命令して。
　苦：ド・ゴールは、これを好機として、すぐに大統領に強権を与え、議会の力を抑制する新憲法を立案し、これを国民投票に付します。
　微：自作自演乙！
　苦：同年9月の国民投票で圧倒的な賛成を得て新憲法が制定されてフランス第五共和政が成立し、ド・ゴールはその初代大統領に就任しました。
　微：本人は”永世大統領”のつもりだったそうです。
　苦：将棋の名人位かよ！　しかしアルジェリアに対して、ド・ゴールは担ぎ出した人々の思惑とは逆に、アルジェリアの独立は必至と判断していました。
　微：「独立する気があるからアルジェリア、ないのがナイジェリアだ」って言ってたそうです。
　苦：ド・ゴールはバカかよ！
　微：ただ、「サイゼリヤはイタリアの店よりおいしい」と回顧録に書かれています。
　苦：お前の言ってることの方がわかんねえよ。将軍たちの反乱、アルジェリア領有に拘る右翼組織「OAS」のテロを押し切って、1962年にエヴィアン協定で独立を承認しました。
　微：それは、将来、過去の遺恨は「水に流す」って言うための伏線か？
　苦：仏心で無視します。政治家ド・ゴールですが、さて国際政治について、冷戦が続く中にあってド・ゴールはヨーロッパ諸国による「第三の極」を作るべきだという思想を持っていました。
　微：出たっ、フランス中華思想！　ヌーヴェル・キュイジーヌ・シノワ！
　苦：それはフランスの中華料理だろ！　それを具体化するため、まずアメリカ主導の北大西洋条約機構（NATO）や国連には批判的な態度を取ります。
　苦：そしてNATO本部をフランスから撤退させ、NATOからも脱退しました。またアメリカと近い立場を取るイギリスの欧州経済共同体への加盟拒否も表明しました。
　微：狂牛病を恐れていたんだな。
　苦：だいぶ先だろ！　また、核兵器の開発を推進し、1960年に４番目の核保有国となります。
　微：そのためにアルジェリア独立は認めたけど、核実験継続は飲ませたもんな。ほんと、アメリカ嫌いだな。余程、ローズヴェルトに嫌みを言われたんだろうな。
　苦：いや、言わせる人です、こいつ。しかし、世界的な学生運動の高まりと共に、左派的な発想から現代社会を「管理社会」として告発する機運が高まります。運命の1968年です。
　微：若者の反乱だな。日本では水俣病だったけど。アメリカが1969年、日本が1970年だったな。
　苦：フランスでカルチェ・ラタンから五月革命が起き、ド・ゴールは一時は亡命すら考えますが、ポンピドゥー首相などの勧めもあり、議会を解散して国民の意思を問い、圧勝しました。
　微：ここにルペン父がいなかったことが幸いだったな。
　苦：危機を乗り越えて燃え尽きたのか、ド・ゴールは同年に辞任、翌年に亡くなりました。
　微：葬儀の時、ラジオから「私はド・ゴール将軍、今ロンドンにいる」って放送が入って、大騒ぎになったそうです。
　苦：んなわけねえだろ！(ペシッ！)