苦：今回は溜めに溜めたヒトラー編の続編です。
　微：最初からなかったことにするかと思っていたのに、どっかの会社の計画倒産みたいに。
　苦：ハイデガーとは違いますし、北朝鮮みたいにいつまでも続くのもね。アドルフ・ヒトラー(1889～1945)ですが、簡単におさらいしますね。
　微：時数かせぎだな。
　苦：国民社会主義ドイツ労働者党(ナチス)を結成し、反ユダヤ主義とセットのドイツ人＝アーリア民族説を中心に据えた人種思想を掲げ、1929年の世界恐慌後のドイツ政界に彗星の如く現れました。
　微：彗星のように一瞬で消えてくれなかったけどな。でも凶兆としてはぴったり。
　苦：世界恐慌の直撃を受けたドイツでは大量の失業者が溢れかえり、ヤング案への反発が与党SPD政府への反感を増幅しました。その不満の受け皿となったのがナチスとドイツ共産党でした。
　微：共産党はわかるけど、ナチスの何がドイツ国民にアピールしたんだ？
　苦：ナチスの私兵「突撃隊」と共産党の私兵「赤色戦線戦士同盟」の乱闘です。
　微：自民党・財界にとっての維新の会みたいなもんか。
　苦：どちらもウソがうまい点、攻撃対象を作る点、プロパガンダに長けているのは同じです。
　微：これが大衆民主主義における「パンとサーカス」だな。杉田水脈人気に通じるものがある。
　苦：ドイツ財界、保守主義者は、ナチスのイデオロギーをいかがわしく思っていました。
　微：栗原優先生の『ナチズム体制の成立』でもその話はあったな。
　苦：ロシア革命の二の舞だけは避けたいので、共産党への対抗馬としてナチス支持に回りました。
　微：でも運も味方してるよな。大統領がヒンデンブルクだったし。
　苦：1932年の大統領選挙でヒトラーは財界の資金援助で出馬し、第１回投票でヒンデンブルクの過半数獲得を阻止します。決戦投票では現職ヒンデンブルクに敗れましたが。
　微：ヤケクソ感というか虚無感しかない決戦投票だな。!
　苦：ドイツ共産党にとってはナチスとの差が決定的となったことを物語る選挙となりました。
　微：もしも「ドイツ国民ヤケクソ度メーター」があったら、かなりの数字だろうな。
　苦：続く同年7月の国会議員選挙ではナチスは37.8%の得票率を得て230議席を獲得し、社会民主党を抜いて議会第一党に躍進したわけです。
　微：でもヒンデンブルクはボケかけてはいたものの、ヒトラーを首相にするのをためらった、と。
　苦：パーペンを首相に任命しましたが、少数与党でしたので議会は政争に明け暮れ、少し前の日本と同じで「決まらない政治」が常態化しました。
　微：恐ろしい法案が一括法や安保法制やらで100本以上一度に出てきて、すぐ決まる今の日本の方が怖いぞ。
　苦：本当にそうです。中に政治資金を禁止する法案を混ぜても自民党は気づかないでしょう。
　微：ガンガン実名で来るな。まあ、2011年3月11日から怒っているのは知ってるけど。
　苦：話をもどすと、1932年11月にはパーペン内閣不信任案が可決され、総選挙が実施されますが、ゲッベルスはドイツ共産党主導の大規模な交通ストライキに突撃隊員を参加させました。
　微：松井の共産党攻撃ツイートよりも破壊力ありそうだな。
　苦：これがベルリン市民の危機感を生みます。かろうじてナチ党は議会第一党は保持しました。しかし、この選挙で共産党が得票を伸ばしていたことに保守層はもっと危機感を抱いたのです。
　微：野党による候補者一本化にビビる自民党みたいなもんか。
　苦：パーペンの目論見は外れ、後継のシュライヒャーも議会運営に行き詰まります。「万策尽きた感」が満ち、ヒンデンブルクもヒトラー内閣を承認しました。1933年1月末のことでした。
　微：個人的には「NHKから国民を守る党」内閣的なイメージだな。
　苦：ちなみにヒトラーは首相就任直後の施政方針演説の3大方針を挙げておきますね。
　　(1)国際協調と平和外交
　　(2)ヴァイマル憲法の遵守と憲法第48条(大統領緊急令による基本的人権の停止条項)の濫用抑止
　　(3)多党制の維持(共産党の活動も制限しない)
　微：すごい！　全部破壊している。
　苦：「大衆は小さな嘘より大きな嘘にだまされやすい。なぜなら大きな嘘は怖くてつけないからだ」の一言に尽きますね。
　微：「大衆とは怠惰で無責任な存在である」と言い放つだけのことはある。
　苦：ヒトラーは内閣発足の2日後の2月1日に議会を解散し、総選挙投票日を3月5日と決定しました。2月27日の深夜、国会議事堂が炎上する事件が発生します。
　微：２ちゃんねらーに狙われたんだな。
　苦：ネット上の祭りでも炎上でもありません。ドイツ国会議事堂放火事件です。ヒトラーとゲーリングは証拠もないまま、共産主義者の武装蜂起と断定し、直ちに共産主義者の逮捕を始めました。
　微：確かに「大きな嘘」は強い。
　苦：翌28日にヒンデンブルク大統領に緊急令を発令させます。これは憲法の基本的人権条項を停止し、共産党員などを法手続に拠らずに逮捕できる権限を首相に認めるものです。
　微：自作自演の国家の危機的状況を大統領に認めさせたと。
　苦：それでも総選挙でナチスは288議席を獲得しましたが、単独過半数は届きませんでした。
　微：ヒトラーは一人でＣＤを200枚買って投票したそうです。
　苦：AKBじゃねえよ!!　共産党議員はすでに逮捕・拘禁され、社会民主党の一部議員も逮捕されたので、国会成立要件を満たさないので法案審議・成立は無理だったんです。
　微：けどこれらの議員を「出席したが、投票に参加しない者と見なす」セコ技使うんだろ。
　苦：国家人民党と中央党の協力で全権委任法を成立し、7月にはナチ以外の政党を禁止しました。
　微：しかし、暴力団が副業で政治をやってるようなナチスがどう政党化していくんだ？
　苦：患部切除です。レームを筆頭に突撃隊も含めて党内外の政敵を非合法的手段で粛清しました。
　微：日本なら秘書が自殺してくれたり、重要参考人が事故死してくれるのにな。
　苦：1934年8月2日、ヒンデンブルクが在任のまま死去し、ヒトラーは直ちに全権委任法を発効させ、国民投票で信任を問います。賛成は90%を占め、フューラーの地位は安定します。
　微：親愛なる将軍様だったら、えらいことだな。けど、この辺はオクタヴィアヌスっぽいな。
　苦：権力掌握以降、ヒトラーは従来合議制であった閣議をほとんど開催せず、書類は回覧決裁で処理し、重要な方針については大筋を決めるだけで、詳細は所轄官庁に丸投げしました。
　微：安倍でも閣議は持ち回りでも開いたのに。
　苦：この「口頭政治」は官庁やナチス関連組織の間で利権を巡る競合と軋轢を生み、そしてそれが却って指導者ヒトラーが調停者・決裁者として権威と権力を高める効果を発揮しました。
　微：この辺は維新っぽいな。思いつきに振り回される職員がかわいそう。
　苦：党と国家の一体化、再軍備を推し進める一方、失業対策をしている演出には力を入れました。
　微：平松市長の成果を橋下が自分の手柄としてアピールしたようなもんだな。
　苦：ヒトラー政権以前にアウトバーン建設は始まっていましたし、失業対策のラインハルト計画により、1933年には600万人いた失業者も1934年には300万人に減少していました。
　微：失業者の半分はダッハウに送られたため、そうなったです。
　苦：まだ早いよ!!　その一方で新聞の統制化も行い、情報と宣伝の一元化も進められました。
　微：維新と在阪TV局みたいなもんか。神戸新聞も2021年からひどいもんな。
　苦：1935年には再軍備宣言で軍備拡張の既成事実を誇示しましたが、イギリスは黙ります。
　微：マクドナルド首相は海軍協定で追認したよな。育成してソ連と戦わせようとしたんだろ。
　苦：そして1936年にはオリンピック・ベルリン大会を開催します。合法的にギリシアまでの軍用地図作製のため、オリンピアでの聖火採取と聖火リレーが始められたのもこの大会からです。
　微：景気づけにギリシアからドイツまでの各地で放火して回ったそうです。
　苦：その1936年から再開します。3月にヴェルサイユ条約とロカルノ条約に反して非武装地帯ラインラントへの軍隊進駐を決行します。
　微：ちゃんと引っ越しの挨拶をしなかったことにフランスは激怒したそうです。さすが態度大国。
　苦：ヒトラー自身は「その48時間は私の人生で最も不安な時であった。もし、フランスが進軍してきたら、貧弱な軍備のドイツ軍部隊は尻尾を巻いて逃げ出さなければいけなかった」と述べてます。
　微：「ばれなきゃイカサマじゃねえんだぜ」とジョセフ・ジョースターに教えられたそうです。
　苦：そのハッタリというか幻惑がオーストリア併合、ミュンヘン会談でも効きました。この年は日本との関係が親密化し、11月には日独防共協定が結ばれます。
　微：これって要するに「ワタシたち反共なんで、アメリカはんやイギリスはんが許してくれるんやったら、"資本主義の鉄砲玉"として頑張りますさかい」だよな。吉本訳だけど。
　苦：その通りです。これに孤立していたイタリアも翌年に加わり、日独伊三国防共協定になります。そして11月5日にヒトラーは陸海空軍の首脳に「東方生存圏」獲得のための戦争計画を告げました。
　微：「東方神起延命計画」だな、最近批判を集めているK-POPの。
　苦：「ホスバッハ覚書」だよ!!　批判的なブロンベルク国防相らは追放され、ヒトラーはドイツ国防軍を完全に掌握しました。その後はヒトラーのシナリオ通りに欧州情勢は進みます。
　微：脚本を書いていたのは三谷幸喜だったそうです。
　苦：1938年3月には軍事的威嚇でオーストリア首相にインクヴァルトを就任させ、オーストリアからの申し出を受ける形で"アンシュルシュ"、オーストリア併合を実現しました。
　微：言わせておきながら受諾してやる、というのは戦前日本の得意技だな。防共協定の成果だな。
　苦：チェコスロヴァキア併合ですが、まず「民族ドイツ人」がほとんどを占めるズデーテン地方を口実にし、併合しようとしました。「これが最後の領土的要求だ」と言って。
　微：ヤクザの金づる脅しと同じだな。
　苦：同年9月29日にミュンヘン会談に持ち込み、チェコス代表抜きでズデーテン割譲を決めました。凱旋帰国したネヴィル＝チェンバレンは覚書を「我らの時代の平和の証書」と掲げました。
　微：そのシーン、モンティ・パイソンの「殺人ジョーク」スケッチでネタにされていたよな。
　苦：高校生は知らないよ！　イギリスの宥和政策の背後には、植民地への戦争協力を要請すればインドを筆頭にその独立要求を呑まなければならないという「帝国の論理」が働いていました。
　微：スターウォーズ的には「帝国への逆襲」ってとこか。
　苦：しかし、宥和政策はスターリンの猜疑心を刺激し、1939年8月23日の独ソ不可侵条約に繋がります。日本では事態を理解できない平沼騏一郎の「欧州情勢複雑怪奇」の名言を生みました。
　微：イギリスの「王室情勢」も「複雑怪奇」だもんな。
　苦：維新の会に落選確実なバカ候補が衆議院・参議院比例区に集まってくるように、日本も南進論が強まります。それよりもスターリン自身が指示した人民戦線戦術を否定した方が重大です。
　微：レオン・ブルムは何もできずに終わったよな。しかも関係者が顔割れしちゃったし。
　苦：9月1日のポーランドに電撃侵攻で大戦は始まりました。1940年にデンマークとノルウェーを占領、少し「休憩」してベネルクス三国とフランスに大戦車部隊で侵攻します。
　微：機械洗車しすぎると、塗装がはげるんだよな。
　苦：自動車を洗ってどうするんだよ!!　フランスの誇るマジノ要塞線もアルデンヌの森から背後を突かれて全く無意味でした。まあ、これも第1次世界大戦の人的損失が原因ですが。
　微：映画『天国でまた会おう』で容赦なく描かれているやつだな。
　苦：6月21日にペタンを首班とするフランス政府は休戦を申し込み、ヒトラー自ら第一次世界大戦の降伏文書の調印場でフランス代表との降伏調印式に臨みました。
　微：バカなんでOKとサインしたんだろ？
　苦：ジャクソンじゃねえよ!!　しかし対イギリス戦はレーダー探査システムによりドイツ空軍は撃退され、侵略の矛先はバルカン、そしてソ連に向かいました。
　微：だいたい、東に進んで無事に帰った奴はヨーロッパにはいないよ。歴史に学べよな。
　苦：ただ、問題は東欧でナチスが起こしたユダヤ人の組織的・機械的ユダヤ人虐殺＝ホロコーストです。最近は「ショアー」とも言います。これは人類史の汚点と言ってもいいでしょう。
　微：そうだな、我が道を行くイスラエル建国という大義名分を生み出したもんな。
　苦：そっちの意味じゃねえよ!!　ヒトラーの東方計画は東欧にドイツ人自作農のフォルクスラント(民族の土地)建設を夢想していました。有機農業も推進してましたしね。
　微：誤算だったのが、ドイツと違って東欧ユダヤ人は農業をしていたことだった、と。
　苦：ドイツの快進撃が続くほど、その農地の所有者であった東欧ユダヤ人の「大量処分」という問題に直面し、行き当たりばったりで対応しなければならなくなった、というのが栗原先生の見解です。
　微：埼玉の愛犬家殺人事件、尼崎の友人家族殺害事件の比ではないと。
　苦：ヒトラーの人種主義＝アーリア人ですが、その遺伝的可能性をユダヤ人との混血が低め、知的・経済的可能性をユダヤ人が牛耳るマスコミと経済界が潰していると考えました。
　微：ユダヤ人との通婚を禁止したニュルンベルク法も、アメリカの有色人種との通婚・性交を禁止した南部州法を参考にしてるしな。そう言えばリンドバーグもナチ贔屓だったな。
　苦：ドイツ医学界はナチス政権と結託し、犯罪者、遺伝病患者、精神異常者を使った生体人体実験で長足の進歩を遂げて来ました。国内で調達したユダヤ人も人体実験に使っていたのですが。
　微：日本でも京都帝大医学部と七三一部隊が連携して中国人捕虜を使った生体人体実験を行ってたな。そのコーディネーターが戦後にミドリ十字を設立し、さらに生体人体実験で利益をあげたけど。
　苦：倫理的麻痺を起こした人間の会社ですから薬害なんて気にしません。問題は、リヴィジョニスト、歴史修正主義者たちです。自分たちに不都合な歴史的事実を否定する。
　微：日本の場合、そういう危ない発言を杉田、高市、稲田、山東など女性にさせるのが汚いな。
　苦：頼まれなくても言うでしょう。さて、プーチンはさかんにナチ、ネオナチを叫んでますね。
　苦：ゼレンスキーがユダヤ人だから混乱するよな。さすがに「チビ！」っては言えないけど。
　微：ソ連がナチスを破ったので、敵をナチ呼ばわりして自分の正義を主張してるんです。