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苦しさとの向き合い方をLGBTQの「彼女」に教わる:内緒のお話

どうして大切な人が自分から離れていくんだろう?
どうして上司は自分ばかり責めるのだろう?
どうして叶わない夢ばかり僕は見るんだろう?
どうして自分ばっかりが。

人生を生きるにつれ「自分にはどうしようもなかった」と思えるような苦しさばかりに遭遇する。困難の前で「AかBか」と、二者択一を迫られては、いつも正解とは反対ばかりを選んでしまった人生だった気がする。「被害者ヅラするな!」と世間は言うけれど、じゃあ「どこから」間違ったんだろう?と記憶を遡っても、それは「最初から」だったんじゃないかと地続きの自分は考えてしまう。

LGBTQの「彼女」から聞いた内緒のお話は、僕が長い間抱えていたそんな疑問を解いてしまう物だった。

「自分を演じ続ける人生でした。」

彼女の略歴を簡単に。最初の違和感は4歳ごろ。男友達が〇〇ライダーにはしゃいでいるのを横目に、彼女はおジャ魔女ドレミに憧れた。誰にも教わったことがないそれを「自分はイケナイこと、悪いことをしている」のだと思い、友達にも、先生にも、家族にも。誰にも打ち明けないまま約20年間、男の子を演じ続けた。特に高校は不良学校に入学したこともあって、心は乙女にも関わらずヤンキーを演じ続けたらしい。ドレミちゃんがずっと大好きなまま。

しかし、大学で転機が訪れる。
服装や仕草からLGBTQを察したゼミの教授から「お子さんって、、ですよね??」という確認の連絡が彼女の親に入る。そこから病院で正式に診断されたことにより、彼女は女性として暮らすようになった。その後は、アイドルや執筆など才能を活かして表現に携わるお仕事をこなしている。

「苦しさにも、なにか意味があるんじゃないかと思う」

語り尽くせないような苦しさや葛藤があった思う。比べるようなものではないけれど、僕の悩みなんかより深刻で、それこそ「どうして自分ばっかりが」と思うような出来事ばかりだったと思う。ただ、電話口の彼女は爽やかで、生き生きしていて、何事もなかったかのように人生が楽しいと笑った。苦しさの向き合い方について、彼女の視点で答えてくれた。

「たとえば神様がいたとして、その苦しさを私にくれた意味はちゃんとあるんじゃないかって思うんです。私なりの答えを期待してくれている。そうじゃなかったら、私なんかを選ばないと思う。」

僕は「私なんか」という言葉が自嘲的な意味ではなく、苦しさを貴重な機会として捉えていることにハッとする。その苦しさがあったから「今」があると言える「今」まで、ちゃんと歩き続けた人の言葉だと思った。

「女として暮らしていると、女の生きづらさも凄くわかるんです。男に戻ろうと思えば戻れるよって考えも頭を過ぎる。でも、同時に女でいること選んだのも私だって。一歩、踏みとどまれるんです。」

僕だってきっとそうだった。
大切な人が離れてでも、譲れないものを守ったのは僕だった。理不尽な上司の元で働き続けているのを選んでいるのは僕だった。叶わない夢をいつまでも捨てないのは僕だった。今この瞬間に捨ててしまうことも、持ち続けることも、選んでいるのは全部僕自身だった。

困難の前で「AかBか」と、二者択一を迫られては、いつも正解とは反対ばかりを選んでしまった人生。元に戻りたいならルートを修正してできるだけ元のゴールへ近づけばいい。思っていた場所とは違うけど、引き返さずに別の綺麗な景色を探すのもいい。

LGBTQの「彼女」との会話の中で僕が信じたくなったのは、「人間の多様性」だけじゃなく「人間の可能性」だった。

※本記事はご本人の許可を得て投稿しています。
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