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海外大学院留学の真実。イギリス、工学と博士課程。4. その後のキャリアと全体感 | 金 輝俊、Hwi Jun KIM

海外大学院留学の真実。イギリス、工学と博士課程。4. その後のキャリアと全体感 | 金 輝俊、Hwi Jun KIM

目次

  • 日本の大学院

  • イギリスの大学院から合格通知

  • 海外大学院生活 -博士の始まり-

  • 博士課程の環境

  • その他もろもの。労働許可証とか

  • 博士の休日

  • 今思う、ベストな大学院と専門

  • 研究能力について

  • 学士課程時代からの色々な進路

  • 論文の続き

  • その後のキャリアと全体感

  • 博士課程でやり残した事

  • 最近のロバスト制御の研究関連

  • 研究方法論

  • 勉強とか進路とか

  • 博士は色々難しい

  • 博士のコース設定

  • 理想の大学院

  • 大学院後のキャリアプラン

  • 大学院と社会と国家

  • 博士号に対する見解

  • エピローグ

研究能力について

今回は専門用語が多くて、専門外の人にとってはちょっと難しいトピックが多いかもしれないけど、博士候補生のその後の進路とか、参考になるかもしれないと思って、書きます。

M.Phil取ったり、研究提案書を院生の時に出したり、早期にProduct Manager/Chief IT Architectになったり、研究、結構得意な方だと思うけど、何がその力の源泉?IQは旧帝/筑波平均じゃ?

C2cubeにて。自然言語処理の研究:企画or開発「こういう事考えてるんだけど、どうやればいいか分からない。これ、できる?」私:「ちょっと直ぐには分からないけど、時間かければ分かるかもね。三ヶ月ちょうだい」三ヶ月後:「それでは、これよりプレゼンを始めます」

学生時代:「高校の時、ディスクホイールを使うと普通のホイールより重いのに、タイムトライアルで速い。なんでだろう?」長野にて:「物理は面白い。慣性モーメント?興味深い。ディスクホイールはこれで説明が付くな。流体の効果より、こちらの方が支配的では?」

山海研教官室にて。山海先生:「材料?ただ、計測してるだけだよね。それ、何か面白いの?」私の内心:「違うんだな。これが面白いわけ。自転車への応用に、こう言う基礎理論は重要だし。分かってないなー」

IQはAかA#。まあまあ頭いい方。IQじゃ麻布-京大博士には負けるかな。でも、研究はそう言う事じゃ無いと思う。やはり、応用と目的意識ではないだろうか。研究のための研究はできる人にできるのだろうけど、筆者にはできない。制御にしろ、コンピューターサイエンスにしろ、筆者は実際の場面を想像して、研究している。自分自身で全部分かる時もあれば、他の人や職種の人とのコラボもある。チームプレイはスラムダンクじゃ無いけど、大事だと思う。

学士課程時代からの色々な進路

何で、最初中堅国立行ったのか?院勝負だから、学部のレベルはどうでもいいと思ってた。実は試験対策は歴代で、TOEFL、GRE、センター試験しかしてなくて、学部二次試験は信州大も含めて、赤本、買ってもいないんだよね。大学の定期試験も過去問、解いてない。それでも、信州大二次は通った。前期は北大で撃沈。過去問を解いたら、多分、北大も通ったと思う。正直、北大でも信州大でもどっちでも良かった。筑波First Classだから、旧帝レベルで通用すると証明したし。院も後にマンチェスター大学に併合されるUMISTの入学許可証もらったし。受験勉強ばっかするより、部活したり、プログラミングした方がいいと思ってた。勉強に対するモチベーション出るしね。

実際、自転車競技部のトラックレースで関東大会入賞まで行って、自転車の物理に興味を持って、機械に行った。

そもそも、機械工学を勉強出来て、自転車で思う存分走れれば、それで満足だった。Googleの創業者のSergey Brinさんも院はスタンフォードだけど、学部は地元州立。ただし、図書館の問題と幅広く勉強したいから、筑波に移った。シラバス通りに勉強するなら、信州大で十分だけど、そこからはみ出して自律的にやっていたから。院も中堅だけど、奨学金の関係上、落としただけ。しかも博士課程(M.Phil.Ph.D課程)飛び級入学だしね。Warwickの図書館の多年度有効な入館許可証も持ってたし。パソコンもWindows2000で最新。ファシリティ的にも問題なかった。

ただし、制御だけなら、Coventryは筑波と並び世界トップ5に入ると思ってる。しかも、事実上の無限次元、任意のN次元の適応ロバスト制御の理論的な研究ができるのは世界中探しても、多分あそこだけかな。進路は完璧に正しかったと思う。ファイナンス的には筑波の方がいいかもしれないけどね。育英会で8.6万出るし、授業料全額免除も英米行く時より取りやすいし。そもそも、就職が目的なら中堅国立機械系でかなりいいとこ行けるんだよね。Coventryもジャガーとかデンソーの研究開発部門行けるよ。MSc by Research取って、ジャガーに行って、WarwickのパートタイムPh.Dに行った先輩もいる。私もそれで良かったかもね、M.Philの後、ジャガーに行っても良かった。別の先輩はPh.Dを取った後、デンソーUKに行ったから、BtoBにしたかったら、デンソーUKに行っても良かった。労働許可証もM.Philでそこそこの初任給なら出るみたいだし。別の目的が出来たから、やめたけどね。

論文の続き

学類4年の研究トピックは本当の正解は有限要素法による複合材料のモデリング?よくよく考えてみたら、Mori-Tanakaでも有限要素法でもどっちでもいい。なぜなら、数学的に考えると本質は両者はあまり差がないから。ただし、Mori-Tanakaだと流体への応用ができない。

Mori-Tanakaというのは材料を細かい格子状に分けて、モデリングする技法。この格子はプラスティック。この格子はファイバー、などとやって、モデリングしていく。広くはマイクロメカニクスに分類される。この考え方の発端は制御工学のdisturbance observerに関係がある可能性が高いと思っている。両者の考え方はある意味、そっくり。実は筆者はロバスト制御でSmart Material Systemsのためのdisturbance observerの一種の研究をしていた。この接続は実に興味深いと思っている。

Mori-Tanakaでも、多分、Smart Material Systemはモデリングできると直感的に思う。Mori-Tanakaの本質を学類の時は掴んでなかった。公式に囚われすぎたかな。3年の途中までは公式を作ったり、検証して遊んでいたんだけどね。勉強量をちょっと増やしすぎたかな。筑波で修士まで残って、Mori-TanakaでSmart Material Systemsに取り組んでもいいんじゃないかな複合材料研究室はpiezoも確かやっていたから、そのパーミッションは出たはず。

より正確にはSmart Material Systemを非線形粘弾性でモデリングして、ダイナミクスの実験に持ち込んで、1.モデリングと2.ダイナミクスの解析。それと、3.可観測性、4.可制御性について、合計4本論文を書く。論文は英語で書くのがいいかな。修士論文の推定ページ数は50-80ページ。2本なら、修士。4本なら飛び級博士。飛び級博士はギリギリかな。2本の論文を提出して、RA取って、博士から英米に行くのが妥当かな。

ロバスト制御なら、Coventryが鉄板だと思う。M.Phil/Ph.Dでいきなり研究に行けて、マスターをすっ飛ばせるし。前述したのと違うけど、非線形でMaster of Scienceなら、UC Londonもいいけど、筑波に残った方がいいかな。どちらを選ぶかは難しいところ。一回、外に出た方が、その後の伸びとか考えると良いから、残るのはある意味、難しいけどね。

その後のキャリアと全体感

Ph.D3年目で何をやろうと思ってたのか?非線形スマートマテリアルシステムの数値実験。非線形ダイナミクスの研究。非線形システムは大体、解析が無理か、難しい場合が多い。仮説ドリブンの数値実験に行くのがいいと、当時思って、今もそう思っている。いきなり制御に行くのは危険だと思って、ダイナミクスの性質を明らかにしようと思ってた。例えば、ベクトル場とかリャプノフ関数を矢印とかヒートマップで可視化したり。ダイナミクスの性質を明らかにして、普通の制御器の研究をした後、非線形ロバスト制御に行こうと思っていた。リャプノフ関数はポテンシャルの一種でエネルギーの場みたいな物だと考えて欲しい。典型的には円錐形のポテンシャルみたいな物が考えられ、線形システムではポテンシャルの下に収束していく。典型的には漸近収束する。

Ph.D課程を2年で自分の意志で辞めたけど、心残りがあったから、C2CubeでNLP(自然言語処理)で当時としては珍しい、2コア-ダブルCPUの高速CPUをブン回して仮説ドリブンの数値実験をしまくった。結果、1年目の研究で500万円、2年目の研究で1億円の株式での資金調達を成功させた。そして、高速のスピードで昇進、昇給を繰り返した。日本のIT業界に来て3年目で課長待遇、4年目で部長待遇だった。退勤時間の自由はさすがに付かなかったが、出勤時間の自由は付いた。

Ph.Dは今のCPUパワーと仮説ドリブンの経験があれば、プラス半年から1年で取れると思う。当時のCPUなら1年から2年かな。数値実験のスピードが遅くて、PDCAサイクルを回すのが落ちるから、CPUは重要。VIVA(最終口頭試問)の後、外に一旦出て、主査と副査の先生達の議論を待った。外にいたが、ハッキリと聞こえた。If it were application, he is Ph.D. 応用なら、彼はPh.Dだ。上で書いた様な事だったのかもしれない。

ここまで、書いて、良くここまで来たなと思う。大学院生、企業での研究、管理職、戦略担当官、コンサルと転調したが、正解だったと思う。こういうのは、ダブルマスターのコンサルが典型だけど、筆者はそういうタイプなんだろうね。

筑波での編入入試でも言った事がある。教授「研究は何がしたいの?」筆者「自転車に関する事全部です」教授「それは無理だよ。普通は何か一つに絞る」。その教授の指摘は正しいと思う。そこにジレンマを感じ、制御工学で全部をやろうとしたり、企業に行ってから、Product Manager(PdM)や室長として、全部を統括しようとしたのだと思う。学生時代にPMやPdMを知っていたら、Ph.Dで研究者でなくて、マスターを取って、PMかPdMを目指したかな。M.Philで終わらして、戦略コンサルタント 兼 ITアーキテクトで良かったと思う。

今回はここで、終わり。続きはまた次回。

著者略歴

金輝俊 / Hwi Jun KIM
戦略コンサルタント 兼 ITアーキテクト

ハイテクITベンチャーのProduct Manager / Chief IT Architect、Webベンチャーのグループリーダー、外資系IT企業のProject Manager 兼 Systems Architectなどを経験。会社を離れて数年後、Webベンチャーと外資系IT企業グローバル本社は、それぞれ東証マザーズとNYSEに上場した。

ファッションテックベンチャーのグロースハック室 室長 兼 システム開発部スペシャリストに。30人4部門を参謀長として指揮統括し、約10億円の株式による増資に成功。シーリズCへと導く。その後、起業。NMD Soft, Principalとして活動を開始。

社会貢献活動として、原爆の実相を伝えるためと、東日本大震災の解析のために、Nagasaki Archive、Hiroshima Archive、Mass Media Coverage Map of The East Japan Earthquakeなどの開発と一部企画に関わった。

主な著作にThe Real M.Phil Thesis: The Mathematical Foundation of Smart Material Systems / Yet Another Mori-TanakaMBA Thesis: The Modern Strategy from Japanがある。

筑波大学 第三学群 工学システム学類 学士(工学) First Class (イングランド基準。70%以上がA評価)

Coventry University大学院 Control Theory and Applications Centre, Master of Philosophy (Upper Master, Research Degree)。飛び級入学。返済義務無し奨学金付き。

主な受賞にアレスエレクトロニカ展Honory mention、経済産業大臣賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。

詳細なプロフィールはこちら:https://www.khj1977.net/profile/

以上

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