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海外大学院留学の真実。イギリス、工学と博士課程。3.博士の休日 | 金 輝俊、Hwi Jun KIM

海外大学院留学の真実。イギリス、工学と博士課程。3.博士の休日 | 金 輝俊、Hwi Jun KIM

目次

  • 日本の大学院

  • イギリスの大学院から合格通知

  • 海外大学院生活 -博士の始まり-

  • 博士課程の環境

  • その他もろもの。労働許可証とか

  • 博士の休日

  • 今思う、ベストな大学院と専門

  • 研究能力について

  • 学士課程時代からの色々な進路

  • 論文の続き

  • 博士課程でやり残した事

  • 最近のロバスト制御の研究関連

  • 研究方法論

  • 勉強とか進路とか

  • 博士は色々難しい

  • 博士のコース設定

  • 理想の大学院

  • 大学院後のキャリアプラン

  • 大学院と社会と国家

  • 博士号に対する見解

  • エピローグ

博士の休日

TGIF、Thanks God It's Fridayの略だったかな。要はもうちょいで週末なんで、酒でも飲もうよ。日本でも昭和には花金って言葉がありましたね、あれと一緒。イングランドのPh.D候補生時代のTGIFはどんな事してたのか?研究室の同僚は金曜の夕方になるとパブに行って、ビールを飲んでた。その後、ケロッとした顔して、仕事をしていた。自分も誘われたけど、流石に行かなかったかな。同僚にはビール飲むとちょっとね、みたいな。

さらに、ちょっと振り返ってみよう。Ph.D候補生時代はどういう週末のすごし方だったのか?隣街の中華街で中華のランチを食べて、スタバでお茶してた。帰りにチャイニーズスーパーマーケットで買い物して帰ってた。隣街は大規模ショッピングセンターも終盤戦でできたし、便利だった。

チャイニーズスーパーマーケットには豆腐とか袋のインスラントラーメンも売っている。豆腐は固く、なんか、まじめに伝統的な方法で作ったんだろうな、という感想。結構美味しい。インスタントラーメンは日本の食品メーカーのものだが、出荷元が大陸ヨーロッパのどこかの国になっていて、ウケた事を覚えている。

でも、ジャポニカ米はどっかで売っているのを見かけたけど、それには頼らないようにしていた。これが無いと、ダメ!となったら、生活と研究に支障が出て困るから。セインズベリー、その辺りにある普通のスーパー、で売っているジャスミンライスを手鍋で炊いていた。結構、いけるものだよ。

後は高速バスでの日帰り旅行と事前購入の鉄道の往復切符。両方とも安い。高速バスは結構、最近では日本でも当たり前かな。高速バスで、結構どこに行くか決めずに、フラッと行って、へー、こういうところがあるんだ、と楽しんでいた。これは高くないだけあって、結構頻度高い。2週に一回くらい。たまに乗るのが、高速列車。これは往復で事前7日とか前に買うと安くなった。行ったのはロンドンとかエディンバラ。両方とも、イギリスと言ったら、こんなところだろうな、という街。ロンドンには何回か泊まった。面白いのは普通、海外のホテルに泊まるチェックインの時にパスポートを要求されると思うけど、イギリスの銀行のクレジットカードを仮オーソリで出すと、パスポートを要求されない事。ロンドンではパスポート要らずだったのは、そういう理由だったのでは、と思っている。

指導教官を含む複数の人にPh.Dは過酷だから、水曜くらいは早上がりして、スポーツでもした方がいいよ、と言われてた。平日23時に図書館にいるのはしょっちゅうだった。ただし、こんなに長時間、夜まで働いているのは大学院時代を最後に終わった。M.Phil論文の終盤戦で集中力が切れて、10-11時に初めて、最初は22-24時終わりだったのが、16:30終わりになった。もう、論文はできかけていたけど。そこまで1.7年くらい。あとはVIVA(最終口頭諮問)の用意と待ち時間。修了直前にVIVAを行った。

家で週末を過ごしているときは、たいてい、コーヒーを飲みながら、BBC Radio Five LiveかClassic FMを聴いていた。オレンジジュースとクロワッサンの朝食もたまにあったかな。Classic FMは一日中、クラシックを流している優良局。皆、「今、Msc論文を書いています。最適な曲をお願いします」とメールを送って、いい感じのクラッシックが流れてくる。残念ながら、日本にはクラッシック専門の曲はないね。のだめは結構メジャーで人気だったと思うけど。

院生はあまりお金がないから、工夫して暮らす。外食もカフェも筆者はせいぜい、週末の一回にしていた。お金を使うのは大学院を終えた後でいい、と割り切っているものだと思っている。日本に帰ってきて、オフィス勤務になると月-金でランチを外で食べている。東京だとランチは大体、1000円くらい。物価安いからね、それで結構美味しいご飯を食べられる。月の営業日が20日くらいだと仮定すると、2万円。学生には無理でも、まあ、いいのかな、と思っている。

日本は労働時間が長すぎると思う。それが原因でクリエイティビティが落ちているし、労働生産性も落ちていると思う。労働生産性=付加価値/労働時間。付加価値=売上 or 粗利 or バリュー。短時間で集中して仕事をして、あとは情報収集とかコミュニケーションの時間。これが、日本に帰ってからのスタイル。職位が上がると、その色が徐々に濃くなっていく。実は、執務執行時間は1.5 - 2.0時間で十分という結論に落ち着いた。

今思う、ベストな大学院と専門

Ph.D候補生の時の専門は制御工学がベストだったのかな?ベストはCoventryでロバスト制御。応用はSmart Material Systems。学類4年で英米の大学院を調べていて、Smart Material Systemsを制御のアプローチで行なっているのは見かけなかった。実はBristolが少なくともモデリングはやっていた。ロバスト制御はやっていない。もっと探せばあったかもしれないが、制御とモデリング同時にやっているのは見つけられなかった。応用は車かロボットをやっている所に行けばいいと考えていた。どちらも制御問題としては考えやすく、自転車への制御のアプローチと共通点が多いと思った。

特に自動車は就職がしやすい。最初は大学で研究者として残ろうかな、と軽く考えたけど、IQはギリ足りても、空きポジションがほとんど、大抵、無い事に気がついて、企業研究所に行こうと切り替えた。自転車会社で制御の研究はできないと考えていたので、自動車会社で応用研究を狙っていた。

非線形もN次元のロバスト制御も実は数学が込み入ってきていて、工学部では難しかったかもしれない。筆者の師匠も純粋数学出身。案外、理学研究科数学専攻で(常&&偏)微分方程式論の研究でアプローチしてもよかったかもしれない。追加で勉強するのは多様体、微分幾何と場合によってはヒルベルト空間(必要かどうかははっきりしないが、興味深い)。モデリングは当然やる。他に、オプションで勉強した方がいいのは機械と物理から非線形制御、非線形ダイナミクス、構造力学、流体力学(後半戦)、熱流体力学、振動力学、固体物理(さわりしか知らない)。理数だとグラントが弱くなるのが欠点かな。応用からアプローチすれば取れるかも。methodologyは解析とPCによる数値実験。

最適な大学院ってどこだったと思う?Coventry University大学院かな、やっぱり。二段階飛び級で研究に没入できて、奨学金付きだから。フルスカラーシップじゃないけどね。これは事後情報があるから、そういう選択になる。事前情報なら、マスター 一年目から、RAを取るのは難しい、研究はRAかPh.D候補生になれないと出来ない。と慎重に考えると、他の所でも書いてある通り、マスターまでは筑波。博士でRA、フルスカラーシップで英米。よくよく考えると海外大学院出身の先生がいたから、RAの取り方とか聞けばよかったんだけどね。

なんで、ロンドン大学とかオックスブリッジじゃなくて、Coventry大学なのか?筑波大学Fist Class卒業じゃん。実は筆者はUMISTから入学許可証を貰っていた。ただし、奨学金なしでMaster of Science。UMISTはマンチェスター大学大学院に併合された。そして、マンチェスター大学大学院のランキングはあまり東大、バークレーと変わらない。ロンドン大学には劣るものの、イギリストップクラスで、全世界でたしかTop30くらい。一流校。

なんで、日本に帰ってから出会った東大、京大がそうでもないと思えたか最近、やっと分かった。ランキング的にUMISTと五分だから、かな。

本当の第一志望はMITでも、プリンストンでもなく、カルフォルニア大学バークレー校。マンチェスター大学大学院はバークレーとあんまランキング変わらないんだよね。バークレーは単に書類不備で落ちただけ。あと、奨学金付きじゃないと認めないとこちらが書いたから、ちょっと難しかったかもね。どっちにしろ、9.11でアメリカはちょっとヤバかったのかも。結果的にイギリスは凄く国際的で面白くて、こっちに行って、良かったと心底思う。

筆者はS#は無理でも、AかA#くらいなら行ける。そういう人。Googleは無理でも、DeNAから内々定貰えたようにね。ちなみに、Googleは選考の最初期で降りたので、実際、Googleに行けたかは知らない。

そして、Coventryは奨学金付きでM.Phil/Ph.D課程、飛び級入学なので、こちらを選んだ。実は筆者は大学院卒であるが、普通のmasterを持っていない。Upper MasterであるM.Philだけである。Coventryは実はジャガーとかデンソーUKと繋がりがある隠れ優良校なんだけどね。ライブラリは上位校のWarwickのを好き放題使えたし。

日本の銀行から自分の与信と自分の負債という設定で借りられるのなら、マンチェスター大学大学院に行ったかもしれない。マスターのうちにデジタルラグランジアンを編み出して、多少制御問題の発端と考察を積んで、3年目、Ph.D課程2年目からRAでフルスカラーシップかな。2年だけ、銀行で乗り切る。合計、650万円くらい借りればなんとかなるはず。これくらいなら、余裕で返せる。銀行は学資ローンについて、再考して頂きたい。何度も書くようだけど、イギリスのグローバル金融機関であるHSBCは私個人の与信で貸せると言いました。下手をすると、日本の銀行は世界A級、日本A#級の制御工学者 兼 コンピュータサイエンティストを潰しかけた、というロジックも組めなくはない。

日本に帰ってからの就職も戦略なら、マッキンゼーよりアクセンチュアのがいいかな。ランキング的にもITと戦略両方できるって点においても。

PS:銀行の方へ。学資ローンは余裕で返せて、銀行も利子で儲かるのも事実だと思うけど、その後、その銀行にロックインできるんだけどな。クレジットカード、カードローンも作るだろうし、オートローンも住宅ローンも結構いい値段で組んで、上顧客間違いなし。経済合理的に考えて、院生、特に工学系の院生に貸すのは得だと思いますよ。

今回はここで、終わり。続きはまた次回。

著者略歴

金輝俊 / Hwi Jun KIM
戦略コンサルタント 兼 ITアーキテクト

ハイテクITベンチャーのProduct Manager / Chief IT Architect、Webベンチャーのグループリーダー、外資系IT企業のProject Manager 兼 Systems Architectなどを経験。会社を離れて数年後、Webベンチャーと外資系IT企業グローバル本社は、それぞれ東証マザーズとNYSEに上場した。

ファッションテックベンチャーのグロースハック室 室長 兼 システム開発部スペシャリストに。30人4部門を参謀長として指揮統括し、約10億円の株式による増資に成功。シーリズCへと導く。その後、起業。NMD Soft, Principalとして活動を開始。

社会貢献活動として、原爆の実相を伝えるためと、東日本大震災の解析のために、Nagasaki Archive、Hiroshima Archive、Mass Media Coverage Map of The East Japan Earthquakeなどの開発と一部企画に関わった。

主な著作にThe Real M.Phil Thesis: The Mathematical Foundation of Smart Material Systems / Yet Another Mori-TanakaMBA Thesis: The Modern Strategy from Japanがある。

筑波大学 第三学群 工学システム学類 学士(工学) First Class (イングランド基準。70%以上がA評価)

Coventry University大学院 Control Theory and Applications Centre, Master of Philosophy (Upper Master, Research Degree)。飛び級入学。返済義務無し奨学金付き。

主な受賞にアレスエレクトロニカ展Honory mention、経済産業大臣賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。

詳細なプロフィールはこちら:https://www.khj1977.net/profile/

以上

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