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ゴースト・ワールド感想

Xで見かけたポスターがレトロでかわいいので、気になった。
検索すると、「あの・・ ゴースト・ワールドが今劇場公開だなんて」や「ひゃ~でも観るの勇気がいるな~」といったテンションのつぶやきが散見されたので、期待も高まり、それ以上の前情報を入れるのは避けた状態でル・シネマ渋谷宮下へ。

以下ネタバレに配慮せず書きます。


イーニドのことを、モラトリアムだとか、青春の~とか、あの頃の生きづらさ、みたいなパッケージングでは見られなかった。
イーニドの、馴染めなさ、可愛げのなさ、衝動性、性への好奇心、自分に優しくしてくれる人への拒否反応、小奇麗な人生を歩んでる人間への軽蔑、誰とも一緒にされたくないという自意識、それでいて独りが平気なわけでないというところまで、自分の一部のように感じた。
もちろん、自分はイーニドみたいにおしゃれでもないし、いじめっ子でもないだけど。
自分と同じような感想を期待して某レビューサイトを覗いたが、思春期を思い出すというようなものが多く、30代でこんなにくらってる自分ってけっこう痛いのではと、少し焦った。

イーニドと同じくらい、シーモアにも感情移入した。
オタクで、神経質、シングル、変わり者扱い。ただ彼女がいない期間はたった4年と知ったとき、勝手に裏切られたような気持になった。
ダナとうまくいってたのに、一回寝ただけでイーニドにメロメロになったのはなぜなんだろう。いや、イーニドって側にいたらそれだけ強烈なのかもしれない。
あれだけ作中でダサいと言われているシーモアだけど、その暮らしは今の自分から見るとむしろうらやましいとさえ思ったな。自分の趣味が充実し、人に無理に合わせることなく自分の価値観で自分の人生を生きてる。会社員としてもそこそこ上手くやっており、部屋もそこそこ広く、かわいい車に乗っている。電話もかわいい。
そして何より、他人に過度に期待せず、でも広告で女性を探すくらいには他人のことを求めている。人としてちゃんとしている。ずるいな。

箇条書きでその他の感想メモ

・他の同級生と違って、イーニドとレベッカの笑顔の少なさと、いたずらしてるときの意地悪な笑顔が印象に残る
・ヌンチャクマッチョおもしろい
・コンビニ店長もおもしろい
・イーニドの口紅の色が、黄緑っぽいものや、ラベンダー色のもの、濃いレッドなど服装に合わせてころころ変わるのがかわいい。ヘアアクセも、真っ赤なニットベレーに、ファーのカチューシャ、喋々の飾り?まで登場し、かわいい。
・イーニドは、開襟シャツが似合うね。割と体にフィットしているサイズ感チョイスもかわいい。シーモアと初接触のレコードを買った日と、最後に会話したお見舞いの日の服が同じだった。イーニドにしては暗い色。確かブラックウォッチだったような気がする。
・レベッカのファッションについて。まだイーニドと仲良しのころから、何かと高彩度なイーニドに比べて、レベッカはコンサバとは言わないまでもやや大人しく、働きはじめるとかなりナチュラルになっていったのが印象的。
・美術の先生の、社会問題に取り組めみたいなのと、優等生女子のやり取りが不快だった。大人が理解できる浅い問題提起を欲しがってることと、そんな自分に無意識な大人が滑稽だった。でも会社員をしている自分にも、こういう滑稽で筋の通らないことをやっている場面がある気がした。同族嫌悪か。
・終盤、イーニドを置いていく人が左向きに進み、そっちには決していかないぞというイーニドは右向きに歩いてるのではないかと思った。ラスト、イーニドを乗せてバスが奥に進む演出は、そのどちらでもない別の答えを探していくんだということなのではないかと思った。
左向きに進んだのは、仕事に遅刻しちゃうと去ったレベッカ、日常に戻りたいとカウンセリング室から出るときのシーモア、バスに乗って去る老人。


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