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雇われのプロダクトデザイナーです。 ジンとカレーが好きです。

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濱口竜介監督映画「悪は存在しない」感想箇条書き

公開初日ほぼ満席のル・シネマ渋谷宮下で観た。 この先、観ていない方への配慮は無しで、観終わった勢いのまま箇条書きで感想を並べます。記憶違いもあると思う。 ・他者って腹の底では何を考えているか分からない、見てないところで何をしているのか分からない、その分からなさが現実と近い感覚のまま映画になっていて、こんなことってあるんだ!!!と驚いた ・分からなさは、巧はもちろん全然分からないんだけど、花も分からなさを醸していた ・自然の中で暮らす人々と、東京の芸能事務所に勤める会社員とで

    • バス・ドゥヴォス監督映画「Here」「ゴースト・トロピック」感想

      今後、親しい人から好きな映画を聞かれたら、Hereを挙げると思う。それくらい好きになった。 2作とも、映像、音楽、配役、エンドロールに至るまで、美意識が一貫していて、すごいなあと。 静かで、素朴で、寂しい、ちょっとおかしみがある。 会話は少なく、大げさなリアクションや、分かりやすい対立関係もない。 でも部屋の様子や、他者との関わり方から、じんわり主人公の人生が伝わってきて、親しみを感じる。 主人公だけではなく、街全体というか、その生活全体というか、そういうぼんやり大きな枠で

      • この景色をバス・ドゥボス監督ならどんな映画にするのかな、と思いながら、満開の桜の中をひとりで歩いた

        • 長く付き合った恋人と別れ、久しぶりにひとりで暮らしはじめた30代同性愛者のぼやきの続き

          私はこうなるまで、自分の人生には、絶対に恋人が必要だと思い込んで、疑いもしなかった。 恋人が欲しいとはイコール、自分と同じレズビアン女性と絆を持ちたいという欲求で、それってつまり、シスヘテロ社会、家父長制の日本で生きる違和感を共有し合える、いわば戦友のような存在を必要としていたからだったのでは、と最近考え至った。社会的な部分での共感を求めて、人と付き合ってきたのかな、と。 最近、彼女が欲しいと思い始めて、レズビアン、バイロマ/セク、パンロマ/セクの女性が集う場にお邪魔してい

        濱口竜介監督映画「悪は存在しない」感想箇条書き

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        • コンテンツ感想
          7本
        • 同性愛者のぼやき
          3本

        記事

          映画「落下の解剖学」感想 - 観客はどこまで先入観を自覚できるのか

          これはネタバレ無しで感想を書くのは難しいと思う。 転落死の事実関係や、登場人物の発言の真意も映画中では説明されず、観る側に判断が委ねられる。 そこで考えさせられるわけです。悪いのは誰か、なぜその人が悪いと感じるのか、そういう判断にいたる自分は、いったいどういうバイアスで物事を判断しているのか。 特に夫婦喧嘩を聞いて、どう思ったかは意見が分かれるところでは。 私は、妻であるサンドラが法廷に被告人として立たされ、バイセクシャルを検察にアウティングされた描写から、サンドラ擁護派だ

          映画「落下の解剖学」感想 - 観客はどこまで先入観を自覚できるのか

          家族や、好きなキャラを同性愛者だと思いたくないというバイアス

          いま「主人公の女性が、30代で初めて恋愛し、相手が女性」という漫画にはまっているので、ネットで感想を読み漁っていたら、主人公をレズビアンと定義するのか否か、いろんな捉え方があるんだなと知った。恋の相手も初めての恋愛で同年代。 「二人はレズビアンとは言い切れない」という感想があり、二人をレズビアンだと感じた私とは違う意見で面白いと思った。一部でレズビアンと言い切る派と議論にもなっていた。これは、男女の物語に置き換えると発生しがたい感想、議論なので面白いと思った。お互いに初めて恋

          家族や、好きなキャラを同性愛者だと思いたくないというバイアス

          「ミツバチと私」感想 - 自分もアイデンティティの一部に蓋をしたままなのかも

          自分にとっては、かなり刺さる内容でした。パンフレットも買った。 配信ではなく、劇場で集中して観るのがおすすめです。言葉以外の感情表現がたくさんあるし、バスクのきれいな自然にも没入できるため。 特にこの映画をおすすめしたい人は、孤独感を誰も言えず分かってもらえないまま、どこかでアイデンティティの一部に蓋をしたまま大人になったような人かも。 以下、ネタバレ配慮無し感想です。半分は泣き言かも。 ドキュメンタリータッチで生活を切り取ったような画作りの中、”普通”を押し付ける会話が

          「ミツバチと私」感想 - 自分もアイデンティティの一部に蓋をしたままなのかも

          アキ・カウリスマキ監督映画「枯れ葉」感想

          「交友関係が狭く、仕事と家の往復、独身で中年、そんな自分に刺さっちゃって」という話をポッドキャストで聞いて、それはまさしく自分のことでは、と思ったのと、大島依提亜さんのポスターデザインがかわいいのとで気になっていました。観てきました。 以下ネタバレありの感想です。 全体的に孤高で、上品だな~と感じた。なんでなんだろう。 お金はないけど心は貧しくはない、みたいな人間的な豊かさがかっこいいのかな。人間的な豊かさとはなんだって話ではあるけど。 洋服の色がきれい。大事な時にジャケ

          アキ・カウリスマキ監督映画「枯れ葉」感想

          30代同性愛者、数年ぶりにフリーになったら途方に暮れてしまった

          なんていうか、コミュニティ内にも居場所がないと感じてしまう。 20代から長く付き合ってきた元恋人との暮らしが終了して今30代。今と書いたけど、本当は別れてから少し時間が経っている。別れて以降、途方に暮れ続けているとも言える。 その元恋人以外は、当事者の友達と会うこともなくなっていて、やんわり繋がっていたSNSアカウントも休眠状態、二丁目にも久しく足を運んでいなかった。コロナ禍の影響も多少はある。 改めてX、インスタ、Youtube、ポッドキャスト、それぞれの検索窓から繋がりを

          30代同性愛者、数年ぶりにフリーになったら途方に暮れてしまった

          虚実の境が曖昧になりながら歩くことになるーさいたま国際芸術祭2023旧市民会館おおみやに行った感想

          最終日前日の土曜日に見てきた。 まず会場内で、段ボールや使い古された清掃用具が置き去りにされていることに気が付く。あれ、ここって一般客が歩いていい場所なんだろうか、ときょろきょろ辺りを見渡してしまった。晴れの日の昼間にもかかわらず、全体的に暗く、ガラス窓は割れ、閉館した古い市民会館のいかめしさも相まって廃墟感すら感じる。 いたるところが黒い枠と透明板で仕切られており、それが空間内で明らかに異質なものなので、ここはちゃんと芸術祭のルートなんだなと思わせてくれていた。 でも、こ

          虚実の境が曖昧になりながら歩くことになるーさいたま国際芸術祭2023旧市民会館おおみやに行った感想

          ゴースト・ワールド感想

          Xで見かけたポスターがレトロでかわいいので、気になった。 検索すると、「あのゴースト・ワールドが今劇場公開だなんて」や「ひゃ~でも観るの勇気がいるな~」といったテンションのつぶやきが散見されたので、期待も高まり、それ以上の前情報を入れるのは避けた状態でル・シネマ渋谷宮下へ。 以下ネタバレに配慮せず書きます。 イーニドのことを、モラトリアムだとか、青春の~とか、あの頃の生きづらさ、みたいなパッケージングでは見られなかった。 イーニドの、馴染めなさ、可愛げのなさ、衝動性、性へ

          ゴースト・ワールド感想