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日本の産業ロック的男性J-POPシンガーを再評価してみよう。

本日は、再評価されずらいJ-POPマエストロたち、とくにその中でも「産業ロック」的に処理されがちな男性シンガーについて書いていきたいと思います。むろん「産業ロック」という言葉は、便宜上使っているだけで、否定的に捉えているわけではありませんので、念のため。

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J-POPといっても、聴きやすい部分においてはロックよりも一般性がある分ヒットしやす面があるとは思いますが、実際埋もれてしまうと、この手の音は、なかなか再評価されません。
例えば、“アーバン・シティポップ”という括りであれば、クラブなどでのフロアライクなチューンとして注目を浴びることもあるかと思いますし、同様な意味で“和モノ”と言われる一連のグルーヴ歌謡なども、目につきやすいと言えましょう。

ところが、本来王道であったはずのロック、ポップ、歌謡曲の融合体で…特にハードロック的イディオムを持った「産業ロック」的な立ち位置のアーティストは、なかなか評価されない傾向があるように思います。

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補足として、上記で「王道」と言ったのは、この手の“音”は本来大きなうねりを形成していたし、ヒットも多い存在だからです。
かつて、ロック御三家と言われたCharこと竹中尚人、世良公則&ツイスト原田真二が、70年代後半に大活躍していたことはご存知でしょう。このあたりを起点として、こういった“音”の流れが形成されていったの事実でしょう。
そして、以降の展開として、中川勝彦、本田恭章、甲斐バンド、ARB、小山卓司、鈴木雄大、HOUND DOG…さらにはTHE ALFEE、織田哲郎、B'Zといったところも、その延長線上にいる存在として考えてもいいと思っています。

そうした方々は、いくつかのヒットもありましたし、いまも熱狂的なファンにも恵まれている方も多いわけです。
しかしながら、実際のところ、革新性や同時代性に乏しいと捉えられてしまう傾向があるように思います。
したがって、マニア筋というか、J-POP、J-ROCKの歴史の中では、ミュージックマガジンや、ロキノンなどのマスコミ対応も含め、評価が高いとは正直言えないようです。
Charさんしてに関しては、JOHNNY, LOUIS & CHAR~PINK CLOUDとしてのまっとうな実績や、スーパーギタリストという側面からの再評価はありますが、かつての注目度から考えると、地味な捉え方をされていることは否めません(なので、先日のレココレの「究極のギター・ソロ〜日本のロック編」の結果はあっぱれでした!)。

繰り返しになりますが、売れた場合でもこうなのですから、そういったアプローチをとりながら注目を浴びなかった場合、ディグ的な発掘などによって、再評価という俎上にのぼることは、ほぼほぼ無いような気がしてしまうのです。
まぁ、ディガーの方々は無名であれば無差別で仕分けしていくとは思うので、耳にしてもらえた可能性はあるとは思うのですが、この一連の“音”は外れとして処理されてしまう部分は否定できないでしょう。
ただ、それらがイケてないと判断されるのは少しもったいないし、残念なことだと思うのです。

そこで、今回は個人的なセレクトになってしまいますが、そんな中でお気に入りを紹介していきたいと思ったわけです。特に埋もれがちな80年代後半から90年代前半が、個人的に男性シンガーを追及していた時期とかさなるので、今回はまず、そのあたりを綴っていこうと思います。

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佐木伸誘「To Be Free」(ALBUM『Smile』より)
88年デビュー。個人的には高野寛のオープニングアクトをしていたということで名を覚えたのでした。小さかった頃の雑誌POP IND'S誌でも高野寛、古賀森男に次ぐ感じで推されていた気もします。無論それだけのポテンシャルを秘めた良質のハードポップなのは聴いての通り。92年に同郷(北海道)の松崎真人と組んだデュオ、BIRTHDAY SUITも良作多し。


米川英之「奇跡」(ALBUM『Sweet Voyage』より)
C-C-Bのギタリストによる90年のソロデビュー作。初めて聴いたとき、予想に反して結構ハードだったので驚いた記憶があります。ウィキをみるとスティーヴ・ルカサーに傾倒していたそうで、それも納得の流れでしょうか。このアルバムには、レーベルメイトのジャパメタバンド、REACTINも参加してたりして、ハードさを補強してたりします。


小松康伸「The LONELY NIGHT」(SINGLE)
86年デビュー曲。布袋寅泰参加。当時いっぱいいたハードポップサイドのシンガーの一人といってよいかと思います。横山輝一、池田聡、松岡英明あたりがライバル筋にあたるのかな。当時イケイケだったCBSソニー所属していたので、それなりのプロモーション的仕掛けがあったはずなのですが、イマイチ知名度が低いのが悲しいです。


河内淳一「Dream Of You」(ALBUM『SWEET』より)
88年ソロデビュー。元KUWATA BANDのG. です。甘い歌声も〇。
それ以前に、ジャンプ原作のアニメ「よろしくメカドック」のOPテーマ曲「よろしくチューニング」に参加していたのを知った時はのけぞりました。 
そんなわけで、セッションはとにかく多数。埋もれさせてはいけない名バイプレイヤーですね。


木嶋浩史『流花 ~ルカ~』(ALBUM『Angels』より)
88年デビュー。こんなことをいったらなんなんだけど、尾崎豊チルドレン的“音”です。(正確には彼のが生まれは早いのだが)
とはいえ、こちらも歌詞がいい。そして、本家以上にナチュラルで耳障りがいいのです…つまりは凄くポップなんですよね。外れ曲もないし、なぜ売れなかったのかわかんない…。


安藤晴彦「誰かが君のことを」(SINGLE)
90年デビュー。こんなことをいったらなんなんだけど、大沢誉志幸チルドレン的“音”です。
とはいえ、アルバムを聴くと結構バラエティに富んでいるんですよに。たとえば、1stのカラフルな曲「ありったけの 愛をこめてKISS」と、のちにリメイクした「ありったけの 愛をこめて」を聴き比べると懐が深いなぁ…と感心します。たしか、彼もPOP IND'S誌で結構推してたような。


荒木真樹彦「Poison Dark」(ALBUM『SYBER BEAT』より)
88年デビュー。なぜかこういう新人を探すのが得意な姉から教えてもらいました。ロックでありながらファンク的な要素の強い方で、自ら“サイバー・ビート”と名乗ってました。
そのサウンドアプローチは岡村靖幸同様、時代に早すぎたとも言えます。ただ、フロアライクではあるので、“アーバン・シティポップ”的にとららえられることもありますね。実際、ここでボヤくまでもないほど再評価はされてます、かね…。

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…ということで、一旦終わります。

ふと、当時はガールポップという言葉があって、必要以上に女性シンガーがもてはやされていた背景があったので、男性シンガーを追求してみようと思ったことを思い出しましたw
あと、実はこの原稿をまとめていて、この手の男性シンガーでネオアコ寄りのアプローチをしていた人が結構多かったので、そういったアコースティックな感性の方々も、また別の機会に編集しようと思いました。
そんなわけで、いつになるかわかりませんが、ネオアコ編もご期待ください。


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