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映画「燃えるドレスを紡いで」

先日、「燃えるドレスを紡いで」という映画を観た。

この映画は日本人ファッションデザイナーの中里唯馬さんに密着したドキュメンタリーで、環境負荷が高い産業のひとつであるファッション産業の課題に向き合いながら、パリコレのステージを作り上げていく様子を追っていく。

私がこの映画を見ようと思ったのは、以前から服がたくさん作られてはたくさん処分されているということをなんとなく知っており興味があったことと、単純にファッションが好きだからこそ見てみたいと思ったからである。

映画ではまず中里さんがケニアを訪れ、その課題や実情を目の当たりにする。

ケニアでは先進国で不要となった衣服が毎日大量に送られてくる。そのなかで売れるものは売っているのだが、それでは到底さばききれないほどの量であり、またそもそも安くて質の悪いものも多く、そういうものたちはゴミになるしかないのだった。

このゴミとなった服の山は想像を絶するほどのもので、とても広大な土地が埋め尽くされるほどだった。

ケニアの人々は言う。「もう新しい服は作らないでほしい。」「こんなに溢れているのに新しく作る必要がどこにあるのだろうか。」と。

同じケニアの中に、地球温暖化の影響で干ばつがひどく進み、年単位で雨が降らない土地がある。地球温暖化の現実も目にし、それを深刻化させる一因になっているファッションの課題をより強く感じる中里さん。

日本に戻り、パリコレに向けてその課題をテーマにどのようなステージを作るか考える中里さんとそのチームのメンバー。

パリコレは「新しい流行の発信地」である。そのような場所で「もう新しいものを作らないでほしい」というケニアの人々の思いやファッション業界の課題をどう表現するのか。

安い服ほど複数の素材がミックスされていてリサイクルが難しいらしい。一度素材の形に戻して新しい布を作ったり、地球に還りやすい新素材を試したりしながら、そのメッセージを伝えるためにギリギリまで試行錯誤する。

迎えたパリコレの本番のステージの様子も映画のなかで見ることができる。

中里さんは、これはスタートで1回で終わらせても意味がない、これからも続けていきたいとおっしゃっていた。

日本でも最近はよく聞くようになったSDGsという言葉。確かに以前よりはそういう関心も高まっているのかもしれない。

けれど実際ひとりひとりが何をしているかと言えば、エコバッグを使うとかプラゴミを減らすとかそういうところまでにとどまっていて、それも確かに立派な地球環境にやさしい行動だとは思うけど、現実はその程度では間に合わないんじゃないかってくらい深刻に地球温暖化は進んでいると感じた。

ひとりひとりの意識の変化と同時に、産業という大きな単位で考え方を変えなければもう本当に時間が無さすぎるというか、状況が好転していくことはないと、この映画を見て強く思った。

先進国のしわ寄せが発展途上国にいっていて、それでいいわけがない。

もちろん新しいものを作ることすべてが悪とは思わない。けれどこれからは何かを作るなら、その終わりまで責任を持たなければならないのだろう。

ひとりひとりのできることは小さいけれど、ひとりひとりが知らなければ大きな力を動かすことはできない。

だからこそ、この映画を観たり、他のなんでもいいからリアルな地球の姿を知るための行動をしたりして、意識を少しずつでも変えていけたらいいと思うし変えなければもう、自分自身が苦しむことになる未来も遠くはないのだと知った。

そして変えることのできる立場にいる中里さんのような方がそれを伝えていく、メッセージをファッションそのものを通して発信していく、その姿に感動したしシンプルにすごいなと思った。

私にできることは本当に本当に微々たるものかもしれないけれど、もう少し環境問題を自分事として考えていきたい。

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