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ブルース名盤紹介34 THE GUITAR WIZARD/TAMPA RED

老若男女、人種を問わず
アメリカ中で歌われた大ヒット曲
”It’s Tight Like That”。

これを録音したのが、
「”The Guitar Wizard”(ギターの魔術師)」
の異名を持つタンパ・レッドです。

彼の特徴は、ギターの音色を
”キレイに”きちんと響かせる
スライド・プレー。

そして、南部のブルースが
主に泥臭い表現をすることが多い中、
タンパ・レッドは、
「ホーカム”Hokum”」という
都会風な、楽しい雰囲気で
演奏するスタイルを持っていました。

そんな彼の生い立ちについても
紹介していきましょう。

・生い立ち

タンパ・レッドは1903年か1904年、
ジョージア州スミスヴィルに生まれます。

本名はハドソン・ウッドブリッジ、
そしてフロリダ州タンパで、
祖母の家庭であるウィッテカー家で
育てられたため、
ハドソン・ウィッテカーと名乗っていました。

1928年のレコード・デビューの頃には、
育った土地の「タンパ」を用いて、
タンパ・レッドの芸名で活動していました。

・盟友ジョージア・トム

ブルース界屈指の
ヒットメーカーである彼ですが、
作曲面で活躍したパートナーのことも
忘れてはいけません。

タンパ・レッドとコンビを組んだのは
ピアニストの
ジョージア・トム”Georgia Thom”こと、
トーマス・ドーシー”Thomas Dorsey”。

ジョージア・トムはきちんとした
音楽教育を受けており、
ゴスペルに傾倒していました。

神様の音楽であるゴスペルに対し、
当時、ブルースは
悪魔の音楽とされていました。

悪魔と契約しブルースをとるか、
神の道ゴスペルをとるか、
戦前の黒人ミュージシャンたちは
少なからず、このような葛藤を
抱えていました。

しかし、
相棒のタンパ・レッドに説得された
ジョージア・トムは、ブルースの世界に
とどまることになります。

神聖なゴスペルとは真逆の、
レッドの書いたセクシャルな歌詞。
ジョージア・トムはその詞に
曲をつけました。

そうして完成したのが、
”It's Tight Like That”は大ヒット。

神様は、俗なものにも
ちゃんと恩恵を与えてくれるようです。

この”It's Tight Like That”は
白人も黒人も問わず、
子供たちでさえも
街で口ずさむ歌になりました。

まだまだ差別が横行していたアメリカで、
音楽が人種の壁をかるく超えていく所、
素敵ですよね。

・曲紹介

さてこの曲、
何種類かバージョン違いがあるので、
まとめて紹介します。

"It's Tight Like That"

①まずは1928年10月24日の録音。
レッドとトムのデュオです。
(今回紹介アルバム未収録)


②そしてその7日後、
10月31日の
Tampa Red's Hokum Jug Band名義の録音。

女性の声真似で歌う、
フランキー”ハーフ・パイント”ジャクソンを
ヴォーカルに起用したバージョン。
(今回紹介のアルバム未収録)

③そして、本アルバムにも収録の
“Papa Too Sweet(なんちゅう芸名)”と
Harry Jonesをヴォーカルに起用した
バージョン。
①とは、大分違うメロディです。


もちろんタンパ・レッドの魅力は
”It's Tight Like That”
だけではありません。

紹介していきましょう。
”No Matter How She Done It”

タンパ・レッドと
ジョージア・トムのデュオによる演奏。

この曲も”It's Tight Like That”同様、
洒脱な歌詞と
ハモリがキャッチーな曲。
1932年の作品とはいえ、
ロックンロール時代を
完全に先取りしています。

そこに絡むレッドのスライドギター。
極上の演奏です。

”Western Bound Blues”

“If you lose your money,
Don’t lose your mind”
金を失っても、正気をなくすなよ

という冒頭のフレーズが、
耳に残る曲。

印象に残るキャッチーな詞は
外国語であっても、耳に残ります。

エリック・クラプトンが在籍したバンド、
クリームの”Outside Woman Blues”でも
同じ歌詞が使われてますね。

ディープなブルースを好む人からは
軽く見られがちなタンパ・レッドですが、
このように深いブルース表現も
聴かせてくれます。

このような演奏が
マディやエルモア・ジェイムズに
強く影響を与えたことが想像できます。

いかがでしたでしょうか。

タンパ・レッドは
バンドやサイドメンとしての活動など
録音数も多く、
ブルースの歴史において
とても重要な人物です。

さらに色々聴いていきたいですね。

今回は以上です。
ありがとうございました。

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