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アトピー性皮膚炎には、どんな衣服がいいですか?

アトピー性皮膚炎には、どんな衣服がいいですか?

アトピー性皮膚炎のお子さんをもつ保護者さんから、「やっぱり綿の服がいいですか?」や、「洗剤は何がいいですか?」という質問をうけることは多いです。

しかしこのテーマに対する報告は決して多くはありません。

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2015」には、

「衣類では肌の密着するもの、通気性の悪いもの、ゴワゴワした素材や縫い方など機械的刺激となるものは避ける。また、羊毛や合成繊維が刺激になる場合もある。さらに柔軟剤や洗剤の残留が問題となる場合があるため、それぞれの対応が必要である」

と記載されています。しかし、引用文献の記載はなく十分なエビデンスがなかなかなかったことがわかります (ガイドラインが間違っているという意味では全くありません)。


そこで今回は、アトピー性皮膚炎に対する衣服にどういったものを使うべきかをまとめることにチャレンジすることにしました。

結果として英文論文15本を引用しましたが、実際にこのテーマはほとんどレビューもなく、調べてまとめることにかなり苦労しました。


※この記事は、専門医・医師向けですが、一般の方でもご覧いただけると思います。こんなコメントをいただきました。


お役に立てば幸いです。


=更新履歴= 

2019.4.30 初版 第1章~第2章
2019.5.1 第2版 誤字などを修正、まとめを追加、目次機能追加
2019.5.2 第3版 補足を追加


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第1章 素材はなにがいいですか?

衣服の素材に関して、これまで「綿がいい」という指導が長く行われてきました。
しかしあくまで経験則であり、エビデンスに基づいてはいませんでした。
さらに、銀を含有させた衣服といった「機能性線維」が登場して有効性の報告もでてくるようになっています。

そこで、それぞれの素材に関しての報告をみていきます。


 1.1 絹の衣服はどうでしょうか?

海外のガイドラインでは、絹製の衣服が推奨されています。


Sidbury R, et al. Guidelines of care for the management of atopic dermatitis: Section 4. Prevention of disease flares and use of adjunctive therapies and approaches. Journal of the American Academy of Dermatology 2014; 71:1218-33.


実際に、小規模試験で有効性も報告されています。

たとえば軽症から中等症のアトピー性皮膚炎に対し、絹製のベッドシーツを使用するとアトピー性皮膚炎の重症度スコアであるInvestigator Global Assessmentが8週目に2.05から1.74に低下した (p=0.03)という報告があります。

Vlachou C, Thomas KS, Williams HC. A case report and critical appraisal of the literature on the use of DermaSilk in children with atopic dermatitis. Clin Exp Dermatol 2009; 34:e901-3.


ただし、絹に含まれるセリシンという蛋白質が接触性皮膚炎を起こしうるとされ、セリシンを除いた絹で多くの研究は行われています。


そして最近になって、絹製の衣服を使用した大規模介入ランダム化比較試験(CLOTHES試験)の結果が報告されました。

CLOTHES試験は、中等症または重症のアトピー性皮膚炎である1〜15歳の小児300人を、①標準的ケア群もしくは②標準的ケア+絹製の服にランダム化し、6ヶ月間観察・比較するという試験でした。

そして、意外な結果となりました。

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noteでは、ブログでは書いていない「まとめ記事」が中心でしたが、最近は出典に基づかない気晴らしの文も書き散らかしています(^^; この記事よかった! ちょっとサポートしてやろう! という反応があると小躍りします😊