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【時々エッセイ】猫の手ざわりは魔法でできている 40

家の中のどこか上の方からガサガサッ、ボロボロッと音がして、猫たちが一斉に聞き耳を立てます。
空から何か良からぬものが降ってきたのか?
何者かの侵入か?
よその猫の縄張り荒らしか?
猫たちは現場を確かめに音のした方へ行こうとしますが、ドアに阻まれて行けません。
「大丈夫だよ。天井が落ちただけだから」
私は猫たちに優しく微笑みかけます。
猫は言葉を理解しないし、人間だってこの言葉は理解できないはず。
築55年のボロ家は住人の死亡退去を待たず少しずつ壊れ始めています。
特にひどい風呂場と脱衣室はもうかなり前から、天井に空いた穴から錆びた鉄骨の欠片と木くずがボロボロ落ちてくるようになっていました。
脱衣室の天井は剥がれて斜めに垂れ下がっています。
風呂場の天井は天井材が何枚か剥がれて上の梁が見えています。
危険だし見た目もかなり悪いので、風呂場の天井だけ今回業者さんに頼んで修理してもらうことにしました。
工事当日。人が入ってくる時は入れ替わりにジョルジュが出ないように階段下の中間のドアを閉めて出迎え、出入りは迅速にしてもらい、常にジョルジュの動向を把握。
ドアが開いたら外に出たがるのはジョルジュだけですから。

仲良しの時はホッとする

昼頃、モネがなぜかベランダに向かって窓から威嚇の唸り声をあげていました。
またよその猫が来たのかと思ったら、そこには家の中にいるはずのルネ。
外にいるルネをよその猫と勘違いしてモネが威嚇しているのです。
慌ててベランダに行ってルネを連れ戻し、外からしか開かないはずの猫ドアを引いて開けたのかもと思って、そこに缶入り塗料を置いてふさぎました。
その後しばらくして、ルネとモネが見当たらず捜していたら脱衣室の上の方から猫同士の争う声が。
行ってみたら、天井裏で猫の兄弟ゲンカ勃発でした。
家のゆがみのせいでコツをつかまないときちんと閉められないドアが開いていて、脱衣室に入れる状態になっていたのです。
呼んでも降りてこないし、確かここは猫にとって登れても降りられない場所だったはずと思いなおして、ベランダへ。
マタタビ持参でベランダに出て、端の方のくぼんでひびが入って隙間が空いているところからルネ、モネと呼びかけました。
その真下が脱衣室です。
まずルネが前脚を突っ張りながら隙間から顔を出したので、マタタビの匂いを送りながらおびき寄せて確保。
モネにもそこに向かって呼びかけていたら、使っていない壊れた外階段から現れました。
あんたはプリンセス天功か。
家主も知らない未知の出入り口を通って外に出たモネも回収し、見せエサと思われたら次から使えないのでちゃんとマタタビをあげました。
良い子で家の中にいた(実際はただ寝てただけ)ジョルジュにもあげました。
結局、外に出る心配をされていたジョルジュだけがずっと、段ボール隠居ハウスでおとなしくしていたことになります。

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