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しっとりジャンパー

2024.04.04
ぺぎんの日記#4
「しっとりジャンパー」

北海道にある、私の住んでいる地域に今年初の雨が降った。

昨年の誕生日にプレゼントで貰った傘をさし、雪の解けかかった通学路を歩く。

話は逸れるが「雪溶け」ではなく「雪解け」。単に固体の雪が水になるという意味だけでなく、冬の凍てついた緊張が解け、春になるという意味も込められての「雪解け」らしい。

雨が降り、雪が解けて湿度が高い。お日様が出ていて気温もそこそこ高い。

雪が解けかかり、シャーベット状になっている。足を踏み出すとジャリッと沈む。悪路だ。1歩1歩が重たい。

ジャシュッ、ビチャッ、ジャシュッ、

少し早足で歩いていると、だんだんと息が上がってくる。

ジャッ、ジャッ、ジャッ、

ジャンパーの中がしっとりと湿ってくる。

ザッ、ザッ、ピチョン、ザッ、

肌と服の間で、外の湿った空気と、自分の汗とが渦巻く。

ジャンパーの上からお腹を押してみる。

フワッと、

湿った空気が襟ぐりから顔に上がってくる。

汗が生臭い。

でも、その奥に春の匂いがする。

ジャンパーを押す手を離す。下からスっと、涼しい空気が入ってくる。

入ってきた新しい空気は、すぐに汗と混ざって、どんより湿る。

家に向かって、歩く。歩く。

ジャンパーの中は、ずっと湿っぽい。

「ただいま」

家に着いて、カバンを降ろす。

あ〜疲れた〜。

上着を着たまま、床にゴロンと寝転がる。

ジャンパーの空気が一気に顔の方に出てくる。

私は思いっきり息を吸い込む。

湿った空気が肺を満たす。

「お疲れ様」

汗臭い春に、そう言われたような気がした。

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