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24.初雪と石炭ストーブ

函館は北海道の中でも温暖な土地であるが、そこはやはり北海道、11月に入ると初雪が降る。函館の平年の初雪観測11月2日。平年の初積雪は11月13日である。ちなみに2011年の11月15日未明には函館でも初雪が観測されたことが報告されている。
北海道の雪質は、例えばニセコまで行くと世界でも有数の極上のパウダースノー。それは水分の量がきわめて少なくサラサラした雪で、とても粒子が細かく、息を吹きかけただけで飛んでしまうほどの軽い雪である。そんなせいもあって、北海道では基本的に、雪が降っても傘なんてささない。服についても、手で払えば簡単に解ける前に落ちるからだ。
またこの季節になると、少し遡るが、10月の年間の平均気温が7.4℃なのでそろそろストーブを付けなくてはいけない。そのストーブを見て私は昭和初期にタイムスリップしたように愕然としたものである。ちなみに10月の平均気温は12.2℃、最低気温は4.4℃である。さすがにストーブが欲しくなる。今の学校現場ではエアコンの設置があたり前のようになっているが、私の高校時代は違っていた。
我が母校のストーブは石炭ストーブだった。毎日日替わりで石炭当番が決められ、早朝に点火する用務員のおっちゃんが来るまでに、石炭部屋に行って石炭を用意しなければならない。それを忘れてしまうと、朝から我々悪童は無茶苦茶寒い思いをしなければいけないので石炭当番は重要だ。
それに授業中にも石炭が足りなくなっても石炭部屋に走らなければならない。また、室内の熱効率が悪いのでいくら直接の熱を防ぐために熱さ避けを設けていてもストーブ前の席の連中が熱さで顔を真っ赤にしているのに比べ。窓際の端の窓に近い連中は隙間風で震えている。しかもなおかつ放っておくと石炭を燃焼した灰が机の上に積もり、宗教の授業(まあ、カトリック系のミッションスクールだったから)で無料で配布された聖書でその机の上を拭いていた不届きなヤツもいた。時々授業中にストーブが不完全燃焼をおこして教室が煙に包まれたこともあった。その時は、むやみに上蓋を開けてはいけない。爆発するからである。
石炭ストーブは放っておいて一度でも火が消えてしまうと、厄介だ。特に冬の体育の雪中ラグビーから戻ってきたときに消えていたら最悪である。何せ高校生だから一部(私も)を除いてライターやマッチなどは持っていない。だから必然的に隣の教室から火を持ってこないといけない。しかし、校舎が1960年の創立当初からある木造の建物だったので、火事の恐れもあるので、一度、貰い火をしているところを見つかって怒鳴られたことがある。一歩間違っていたら校舎を全焼させていただろう。
北海道とストーブは、切っても切れないほど深い仲だ。今ではどうなのか分からないが、北海道では冬季の暖房に鋳鉄製の大型のストーブが駅の待合室や公共施設、学校の教室で使用されていた。燃料は主に石炭、コークス、木材などが使われていた。北海道では球形の「ダルマストーブ」を一般家庭でも使用することがあったが、一般的には胴長の鋳物ストーブを総称してダルマストーブと呼んでいた。よく東北や北海道のローカル鉄道の車内にあるストーブだ。
当然、石炭が燃焼する時に発する二酸化炭素を排出する煙突が付いているのだが、我々悪童たちは、その煙突にストーブのデレキ(火かき棒)で穴を開けては楽しんでいた。その開いた穴は翌日には復旧しているので、手数をかけることになったが、用務員のおっちゃんが直してくれていたのだろう。中には、さつまイモをアルミにまいてストーブの下の方に置いていたヤツもいた。
ちなみに寮ではボイラー室で温水を作り、それを各部屋に送っていたある意味セントラルヒーティングタイプだったので全館暖房していて、屋内は本州よりもずっと暖かい。だから真冬でも屋内ならばTシャツ一枚でも走りまわれるのである。暑ければ、ストーブのコックを捻れば良いので快適だった。

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