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チベット侵略鉄道

昨日は午前中、リハビリと整形外科と内科の診察を受けたあと、買い物をしてお昼を食べたあと睡眠薬を飲んで、眠りに着くまで読書しようと思っていたらまもなく寝てしまい、夜に何度か目が覚めて、時には小腹が減って近所のローソンで大盛り焼きそばを買ってきて食べたりして、その度にまた本を読もうと思うのだが、寝てしまうということを繰り返して、ちゃんと目覚めたのは朝も6時を過ぎていた。断酒3日目。
「チベットの秘密」を読み終わったので、アブラム・ラストガーテンの「チベット侵略鉄道 中国の野望とチベットの悲劇」を読む。この本は、チベット鉄道建設に潜む中国の狙いとは?チベットの永久凍土の上に鉄道を建設するという、中国の国家的プロジェクト。その裏には中国政府の大きな野望が隠されていたという、現代のチベット問題が見えてくるノンフィクションである。ここで言われる侵略鉄道とは、いわゆる青蔵鉄道のことだ。
青蔵鉄道は、1957年に毛沢東が青蔵鉄道の建設を唱える。青海省の省都西寧からラサまでの1956kmのうち、第1期工事として青海省都西寧と同省海西モンゴル族チベット族自治州のゴルムド(格爾木)を結ぶ814kmが1979年に単線として完成し、のち複線として1984年にまでに完成したのが第1期。第2期は、西部大開発の代表的なプロジェクトとして、2001年、国務院は262億人民元の資金を投じてゴルムドとチベット自治区のラサを結ぶ区間の建設を決定し、同年6月29日に着工。第2期工事区間は全長1142kmに達する。2005年10月15日に全線の基礎工事及び軌道敷設を完了し、貨物輸送が正式開業に先駆けて開始され、2006年7月1日にゴルムド - ラサ間の旅客営業運転を開始して完成した。ただ、この文章を書くのにウィキペディアを調べていたら、今はラサからシガツェまでのラサ・シガツェ鉄道が2014年8月16日に完成しており、シガツェからネパールの国境に近いニャラム県まで西に延伸する計画があり、2018年6月21日に訪中したネパールのK.P.シャルマ・オリ首相はシガツェとカトマンズを結ぶ計画で中国と合意したことを中国国営紙などは報じている。また、2014年12月19日には、ラサ・シガツェ鉄道の協栄駅から分岐し、ヤルン川を東に沿って進み、ダナン県、ネドン区、サンリ県、ギャツァ県、ナン県、メンリン県を経て、ニンティ市に至るラサ・ニンティ鉄道も着工されている。これは、チベットと四川省を結ぶ川蔵線および滇蔵線の一部となる計画であり、完成後はチベットと成都・重慶経済圏、長江デルタ経済圏との距離を短縮する。
青蔵鉄道(青海チベット鉄道と呼ばれることも多い)を利用してラサに入るツアーが人気のようで、「旅行 チベット 鉄道」で検索してみると、旅行会社の広告がずらっと並ぶ。例えばクラブツーリズムを見ると下記のように紹介されている。
「中国・青海省からラサまでの1956kmを走る青蔵鉄道は、なんと5つの世界一を誇る列車です。[1]世界最高所のレール、[2]世界最高所の駅、[3]世界最高所の鉄橋、[4]世界最高所の高原凍土トンネル、[5]世界最長の高原凍土トンネル…標高約5000mを走りますが、鉄道内は特別気圧装置が完備されているため息苦しさを感じることはありません。2008年に開通したばかりのため車内も快適です。車窓からは壮大なチベット草原や湖、6千メートル級の山々を眺められ、鉄道好きな方なら見逃せない!一生に一度は乗りたい鉄道です。」
外国人と台湾人がラサまで乗車する場合は、チベット入域許可書が必要であり、旅行代理店の主催するツアーに参加する必要があり、時期によっては形式上ツアーに参加し、実際には個人旅行として乗車することも可能であるが、シーズンによっては乗車券のほとんどは団体向けに確保されているため、この方法での乗車券の入手はかなり困難である。
各列車は崑崙山脈、チベット高原を日中に通過できるように運行時間を設定されている。列車はゴルムド駅で高地用の中国国鉄NJ2型ディーゼル機関車(開業用にアメリカより輸入された、ゼネラル・エレクトリック製の新鋭NJ2型が同線を代表する顔となっている)に交換し、世界最高所駅であるタングラ駅(唐古拉駅)を通過する。実質的には鉄道利用よりも航空運賃のほうが安いこともある。しかし車窓風景や食堂車での食事など、鉄道ならではの旅行が楽しめる。列車の運転速度は、海抜5000 m までの区間では最高160km/h、それ以上の区間では80km/h となっている。客車は、空気の希薄な地域を走行するため、航空機メーカーでもあるボンバルディアの技術を導入した、25T系客車が投入されている。高所走行中は外気から酸素を抽出して生成される酸素濃度の高い空気を車内に供給し、車内の酸素濃度を平地より2%高い23%に高めることで、標高5000mのタングラ峠通過時でも標高約3000m並みに過ごせるようにしているという。寝台車(軟臥、硬臥)には酸素吸引設備が用意され、吸入チューブが無料で配布される。軟臥には個人用液晶モニターが設置されている。また、医師と看護師が同乗して高山病患者に対応している。
こうした青蔵鉄道であるが、確かに旅行者がチベット、特にラサに行くには大変便利で、大きなオプションになっているが、チベットにとっては必ずしもプラスの効果ばかりをもたらすものではない。1959年の反政府動乱から48年目を記念して、亡命先のインド北部ダラムサラで行った演説の中でダライ・ラマ14世は、「同地域のインフラが整備されることは何も悪いことではない。しかし鉄道の開通により、多くの人々の流入が懸念される。人口の大部分を占める漢族が同地区に流れ込むことで、チベット民族の文化や地域の自然がおびやかされる。営利目的の地域開拓は水や自然を汚染し、土地と人々の生活を破壊するものだ」と述べている。実際、高層ビルが立ち並び、車が頻繁に行きかうなど、都市化の波が押し寄せている今のラサは、かつての禁断の都のイメージは全くなく、新たに入植してきた漢人(四川省の人が多い)や回族によって西と北に新興市街地が広がっており、もはや中国のひとつの地方都市に過ぎなくなってしまった。ポタラ宮やツクラカン(ジョカン、大昭寺)がなければここがラサだとは思えないだろう。

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