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LINEの生活 シーズン2 完全版

考えごと

文字が一掃されるまで、残り二十八日の朝。
東は目を覚まして、スマホを取ろうとした。だが、できなかった。そして東は苦笑いをした。ここはLINEの世界だった。東は、ここではスマホを持っていなかったのだ。なのに、いつものように、SNSを利用しようとしていた。
「呑気なもんだな...」
隣を見てみると、「お」とテンヌキが眠っていた。東は、二つの文字を起こさないように、冷蔵庫から、パンと牛乳を取り出し、(全て絵文字)朝食を済ました。その後、東は床に寝そべって考え事を始めた。考え事は、SNSもいらないので便利だ。
(...『お』は何を考えているのだろう......)
「お」はずっと、意味深な表情をしている。あいつは何を隠しているのか...あいつは何を...何を見ているんだ-----
東は目を瞑った。
(.......)
.......
(.......)
.......
東は考える。「お」の真意を...
「はっ!まさか!」
東は少し声を上げた。
(あいつはもしかしたら!『ボス』の正体に感づいているんじゃないのか!?なら、あいつが『ボス』だと思っている相手は...)
東は「お」を叩き起こした!
「おい!おい!『お』!」
これで、テンヌキが起きてしまうのではないかと心配したが、ぐっすり眠っているようで、東の声は聞こえていない。
「ふぇあぁ〜?何だヨォ?」
「ちょっと話したいことがある」
却下
「お」は布団を頭まで被った。
「は!?なんで!?」
「寒いもん!」
「今日はあったかいぞ!!」
「マジで寒いから。北風ビュ〜ビュ〜うるさいなあ♪」
「北風なんて、ふいてないっ!!♪」
東は布団を引き剥がそうとするが...
ジリリリリリリリリリリ!!
「また都合の悪い時に...」
東は電話を取った。
「はいもしもし?」
『「お」!「東(ひがし)!」仕事だ!このスマホの予想によると、お前らの文字が四分後に打たれる確率が高いんだ!すぐにこい!』
ひがしじゃなくて、あずまなんだけど...って言うか、そんな予想とかできるのか、と思いながらも、東は答えた。
「はい!今すぐ向かいます!」
電話が切れた。
「おい!『お』!文字の仕事だ!急ぐぞ!」
すると、「お」はガバッと起き上がって...
「東!急ぐぞ!」
「分かってる!」
東と「お」は、急いで外へ飛び出した。
バタン!という音で扉が閉まった。すると、テンヌキが起き上がった。
そろそろか....

潜入① 「ボス」の正体

今日の「仕事」は、結構長かった。まだ朝も早いからか、全く既読がつかず、東たちは、ずっと張り付いたままだった。
「なあ、東」
スマホに張り付いたまま、「お」が話しかける。
「どした?」
「俺、気付いたんだ」
「ナニヲ?」
『ボス』の正体
「!!」
「『ボス』は...」
ピロン!ピロン!ピロン!ピロン!
----だ
「は?」
通知音がたくさん鳴って、LINEの返信が来てしまい、「お」が言っていることが全く聞こえなかった。東たちは、フキダシから離れた。
東は「お」にもう一度「ボス」の正体を聞こうとしたが、「お」が「ボス」の正体をいう時だけ、何故か爆発が起きたり(もちろん遠くで)、品のない音楽が爆音で聞こえてきたりして、何度試しても、「お」から「ボス」の正体は聞き出せなかった。何度も東が聞いていると、「お」も流石に鬱陶しく
なったのか、それから一度も教えてくれなかった。
(もう、自分でなんとかするしか...)
東は途方に暮れた。もう、手がかりなんか...
あったあ!!!!
「なんだよ!?」
不機嫌そうな「お」が、東に言葉を返した。
「分かったんだ!『ボス』の正体!!
東は、声を潜めて、「お」に言った。
「『ボス』は...」
東は、そいつの名前を言った。
大正解
久しぶりに、「お」がニコッと笑った。

家に戻った東と「お」は、「玉」の文字(自称『テンヌキ』)と共に、「ボス」の屋敷に潜入する準備をしていた。
この三つの文字(東と『お』とテンヌキ)は、「ボス」という、LINEの世界の王から逃れ、人間の世界へ逃げ出すための計画を立てていた。今目指しているのは、「ボス」の屋敷の「ボス」の部屋にある、「人間の世界とLINEの世界をつなぐ通路」だ。テンヌキ、という、「ボス」の秘書をしていた経験のある文字のナビゲーションにより、屋敷に潜入することになった。つまり、今は、その準備をしているのだ。
「よし、大体準備はできたな!」
「お」が明るい声で言った。
「そうだな」
すると、テンヌキが何かに気づいて言った。
「あ!大事なもの忘れてた!工場からもらってこなくちゃ!ちょっと、行ってくるね!」
「工場」とは、LINEの世界の文字や絵文字が作られる場所のことだ。
「おう」
がちゃっ!バタン!
......
「よし、テンヌキが戻ってくる前に、リュックの中確認しなくちゃ、」
「そうだな、あいつが戻ってくる前に...」

これは、少し前の二つの文字の会話。
「分かったぞ!!」
「何が?」
「『ボス』の正体!」
「ふうん?で?誰よ?」
「『ボス』は...テンヌキだ
「なんでそう思った?」
テンヌキは、ヒントをぶら下げていたんだ。とてつもなく簡単なヒントをな...。『テンヌキ』それは、つまり、『玉』の文字から点を抜いたらいいっていうことで、そうしたら...
『王』の文字になる!
「そう!どうだ!正解か?!」
...大正解
「やったあ!!」

潜入② マンホール

東や「お」のリュックには、テンヌキを殺すための武器がたっぷり入っている。だから、テンヌキに見られてはならない。
テンヌキを殺す。それは、『ボス』たち『政府(と称しておく)』側にとって、大きなダメージになる。『ボス』を殺すことができたら、『政府』側を支える柱を崩すことができる。『ボス』がいなくなった世界は、家来のどんなやつも、治めることはできないだろう。実際、『ボス』はほぼ一人で政治を進めていて、家来たちには、会議でアドバイスをいうくらいしかできないらしい。これは全部、ニュースで見たんだ。そうなると、パニックになった状態の世界を、どさくさに紛れて抜け出すことができる。家来たちは、政治をやっていないからと言って、民たちの暴走を治めないといけないだろう。その隙に逃げ出す、っていうのが、俺たちの作戦。......まあ、実際テンヌキは殺さない。俺たちの表の作戦にもある、マンホールの中にでも、一時的に監禁し、殺したように見せるんだ。テンヌキが死んでなかったとしても、いなくなれば、パニックを起こすことぐらいはできる。もしもの時になったら...やるしかないがな......。東、覚悟はできてるか?
「相変わらず話がなげえな...。分かってる...俺はやる、この世界から、なんとしてでも抜け出す!覚悟はできてる。...やろうぜ!!」
がちゃっ、と、玄関の方から、ドアの開く音がして、テンヌキが帰ってきた。
「よし、テンヌキ、準備はできた!!明日にでもやるぞ!!」
テンヌキは、東たちの声に反応しながらも、東たちの見ていないところで、全てを悟ったかのように、静かに微笑んだ。

「ボス」はテンヌキだ----。

次の日、東たちの作戦が始まった。
「よし!行くぞ!!」
「お」の提案に、東は驚いた顔で尋ねた。
「ちょ、ちょっと待って、抜け出すなら、夜の方が目立ちにくいんじゃないの!?」
「んあ?」
「お」はわざとらしくとぼけた顔で言った。
「その裏をかくんだろう?誰だって、夜の方が目立ちにくいと思うだろう。その裏をかいて、昼に行くっていうのが、いいんだろうが!!てかもう行くぞ」
「お」は、東とテンヌキの持ち物を、二つの文字に無理やり背負わせ、東とテンヌキの手を掴み、玄関まで引っ張っていった。
(こいつもう何言っても聞かねえな...)
東は、苦笑いして、「お」に体を任せた。

テンヌキが引っ張りながらもなんとかマンホールまでたどり着いた一同。
「じゃあ、開けるぞ」
東は、マンホールの蓋を開ける。意外にマンホールはすぐ開いた。だが...
「うげえっ!」
東は声をあげた。
「きたねっ!」
マンホールの中には、ドブ川が広がっている。ごぼごぼごぼ...という音をたてて、どす黒い液体が、マンホールの全てを黒に染めている...。それと同時に、謎の異臭が鼻を貫く......
「これを...何メートル?」
「ひ、100メートル...」
「はあ!?」
あれだけやる気満々だった「お」も、
「う、があ、...ぇぇ?」
と、ここまでの変わりようだ。

果たして、こんな状態で、テンヌキを捕まえて、この世界から抜け出すことなんて、できるのだろうか...

潜入③ 追い詰めろ!

「行くしか...」
「行かなきゃね...」
「あ゛あ゛...」
こんな状態が三十分ほど続き...
行くぞ!
東がマンホールの中に飛び込んだ。そして、それに続くように、テンヌキ、「お」が飛び込む。
ばちゃっ!
クッっっっっっさ!!!
オ゛エ゛〜゛!!
あまりの臭さで、全然進めない。なんとか二分で一歩進めた。
約二時間くらいで、出口が見えた。「行くぞ」
「お」はリュックから、絵文字工場が休みの日に勝手に機械を動かして奪ってきた武器の予備を出して、東とテンヌキに渡した。
「お」が二人に武器を渡した後、東がマンホールの蓋をそっと開けた。
目をつぶすくらいの眩しい光が、三つの文字を包み込んだ。

マンホールの蓋を開けた後、東、「お」、テンヌキは、自分たちの後ろに立っている「守」の文字に気づかれぬよう、素早く、そして、静かに、エレベーターに乗り込んだ。
ウイーンという機械音をたてて、エレベーターは「ボス」の部屋がある、最上階まで登っていく。
「なあ、テンヌキ、」
「お」がテンヌキに話しかけた。
「この屋敷って、何階建てなんだ?この屋敷、結構高いけど...」
「七十階」
「結構...高いな......」
「屋敷は高いのがお約束だ」
そんなことを話していた東たちだが、東と「お」は、緊張していた。

----------潜入後、『ボス』の部屋に着いたころ、テンヌキを追い詰める

ポーン!
気持ちの準備ができていない東と「お」をからかうように、エレベーターは七十階で止まった。
ウイーン...
幸い、途中でエレベーターに誰かが乗ってくることはなかった。
「行こう、『ボス』ほ部屋はすぐ隣にある」
テンヌキの言葉を合図に、三つの文字はエレベーターから駆け出し、「ボス」の部屋の前まできた。
と、急に、「お」がサッカーボールを蹴る時のように、片足を後ろに上げた。
「おい、何するつもりだ...?『お』...?」
東が少し焦った声で言った。東の質問を無視した「お」は、「ボス」の部屋のドアを......思いっきり蹴った。
「うらあーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
ばきっ!ばこっ!
鼓膜を麻痺させるような嫌な音が聞こえる。
東に、「お」、テンヌキの三つの文字は、「お」が壊した「ボス」の部屋の中を見た。
テンヌキが目を見開いて言った。
「誰も...いない」
「予想どおり」
東がそう呟いた。
「何が?」
「......『ボス』は........お前だろ!!裏切り者!!!!テンヌキ!!
「...」
テンヌキは黙っている。
証拠もある。------お前、ヒントをぶら下げていたんだろう!勝者の余裕を見せつけるように...。『テンヌキ』。それは、お前の『玉』という文字から、点を抜く。だから、『テンヌキ』...。点を抜くと、『王』の文字になる!つまり、お前が『ボス』だろう!!」
「お」は、追い討ちをかけるように言い放った。
「なぜ、ここまで作戦がうまくいった!?なぜ、『ボス』の部屋に、警備が一人もいなかった!?『ボス』が不在だからって、偽物が来てしまったり、泥棒が来ないように、少しくらい警備をつけておくはずじゃないのか!?『ボス』は政治の柱だぞ!!お前は...この世界の反逆者の、俺たちを捕まえたいのだろう!?

「...」
テンヌキは、黙ったままだ...

どこの世界も

東はしびれを切らして、テンヌキに怒鳴った。
「黙ってねえでなんか言えよ!!!なんのために俺たちをここまで連れてきた!?なんであそこまで俺たちに協力した!?なんで...なんで!?...全部...今までのこと全部...演技だったのかよ...」
「....」
「裏切り者。いい加減白状しろよ!俺はもう、うんざりだ!あんだけ騙しといて、何も言わないとか...ずるいぞ...。なあ。テンヌキ。教えろよ。全部...!!俺は捕まったって文句なしだから!!」
「...」
「テンヌキ!!」
「...」
テンヌキ!!!!!!!!!!
東が何度怒鳴っても、テンヌキは口を開かない。
「テンヌキ、お前は何がしたい...?」
「はあ...」
テンヌキは大きなため息をついた。その目は...とても冷たかった。
「テンヌキ?」
「わかった。全部話すよ。......『お』!あんた!!
テンヌキは、ビシッと「お」を指差した。
「...あんた、『ボス』のくせに、秘書の顔を忘れたわけじゃないよね...?
「は...?」
東は呟いた。
『ボス』は...『お』、あんただ!!
「...おいおいテンヌキ、何を」
あんたはあのとき、僕に、『ボス』の濡れ衣を着せた...!!僕を疑うそぶりを東に見せ、て...。あんたは...あんたの計画は、『あの血』を持つ東、そして、この世界から逃げ出そうとする裏切り者を捕まえることだ!!東の方は万事OKだったけど、ここから逃げ出したいと思っている裏切り者が...僕だった。...そこであんたは、僕が東に、あんたが『ボス』だってバレることを恐れて、僕に疑いをかけ、ここまで誘導した...。違うかい?
「.........」
「『お』、違う...よな?」
東が助けを求めるように聞いた。
「一緒に酒飲んで、一緒に喋って...全部、全部、...『本心』だよな?こんな、お前が『ボス』だなんて、嘘に決まって」
俺が『ボス』だよ。東
「お」が静かに、そして少し強く、言い放った。
「ちょっと、まだ僕の話、終わってないんだけど」
「お前の話を聞いてたら、ストレスがたまるだけだ、だから、黙」

テンヌキが、東の言葉を遮って、言った...
仕方ない。人間の世界だって、文字の世界だって、『人間』という残酷な動物が作ったものなんだから、残酷なんだよ...どこの世界も
「...」
東の目から、弱く光る、生温い涙がこぼれ落ちた。
「残酷だろう?人間(そっち)の世界も」
「そうだな.......。そうだ....」
(ん?)
そこで東は、テンヌキの言った言葉に、違和感を持った。「...お前、もともと人間の世界にいたのに、『人間(そっち)の世界も』って、おかしくないか?まるで...もともとLINEの世界で暮らしていたような...
「そうさ。僕はもともとLINEの世界にいたんだよ」
「!?じゃあ、なんでそんな嘘を...」
「そっちの方がやりやすかったんだよ」
やはり、テンヌキのいう通り、残酷じゃない世界なんてどこにもない。どんなに頑張っても、世界は、「残酷」という鎖に繋がれてる。どの世界も、綺麗事なんかで丸く収めることなど、できないのだ...。
「で、僕の話の続きなんだけど。『ボス』、あんたは東に、『ボス』について、何か嘘を教えていないかい?」
「...テンヌキ、お前のいう間違いっていうのがなんなのかわからんが...俺は『お』に、『ここにいる文字は全員、年末に「ボス」に殺されてしまう』と聞いた」
「それはなんで?」
「毎年、LINEは少しずつ、文字のフォントを変えているから」
違うね。それは間違いだ
東は目を見開いて叫んだ。
「そうなのか!?俺は、俺は...何回、騙される!?」
東の心の中に、悔しさがこみ上げてきた。
「文字は、毎年フォントを変えるから殺されるんじゃない。文字は......。

東!!危ない!!
「へ?」
東が驚いて後ろを見ると、「お」がナイフを、東に向かって振り上げていた!!!

脱出せよ!

東!!お前には来てもらわないと困るんだよ!!!!!
「何言ってんだよ!!『お』!?」
「東、急げ!!」
テンヌキは、東の手を取り、エレベーターへ駆け出した。
「どういうことだよ?!さっぱりわかんねえよ!!テンヌキ、お前、秘書だから知ってんだろ!?」
「ごめん、東、今は言えない!!うまく逃げれたらちゃんと話す!今は逃げることに集中して!!」
テンヌキは、全ての力を使って、エレベーターに体を滑り込ませた。テンヌキが掴んでいる東の後ろには、ナイフをかまえた「お」が立っている!!
ひっ!!!!!!
「東!!」
テンヌキはとっさに東をエレベーターの中に入れ、「閉」のボタンを連打した。だが、「お」は、力尽くでエレベーターのドアをこじ開けようとする!
東あ!!早くこおおおおおい!!!!
そして「お」は指を咥え、ピーッと音を鳴らした。多分、家来を呼んだのだろう。
「やばい!!!」
東は「お」に頭突きを喰らわせた。
「ぐはっ!!」
「お」がバタンと後ろに倒れた。味音がだんだん近づく。家来の足音...!!
「家来が来る!!」
二人はボタンを連打した。やっとのことでドアが閉まり、なんとか家来にはやられずに済んだ。

「お」は、家来に起こされて、なんとか目を覚ました。
「『ボス』、大丈夫ですか?!」
大丈夫じゃない!!東...あの血を持つ文字が逃げた!!警報をならせ!!奴らは一階エレベーターのマンホールから逃げるはずだ!!総員、直ちに捕らえろ!!奴らは『東』と『テンヌキ』...俺の秘書だ!!!
「「「「「はっ!!!」」」」」
家来たちが散っていくのを見ながら、「お」は呟いた。
あいつは...東はこの世界に必要なんだ...!この世界がこれからも平和であるように!!それが、あの血を持つ文字の運命なんだ!!
ジリリリリリリリリリリリリ!!
警報!警報!先ほど、あの血を持つ、「東」と、「ボス」の秘書、テンヌキが逃げた!!直ちにとらえよ!テンヌキは殺しても良いが、東は殺すな!!彼はこの世界に必要なのだ!!
けたたましい警報が、屋敷中に響いた。

その警報は、エレベーター内にも響いていた。
「やばいよこれ...」
「出た途端に捕まる...!」
ブルブル震えながらも、エレベーターはどんどん降りてゆく。
10、9、8、7、6、5、4、...
ポーン!『一階です』
ドアが開いた。ドアの向こうには、やはり家来たちが大勢いた。しかもその家来たちは、銃を構えているのだ!
「「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!」」
東とテンヌキは、大きな悲鳴を上げた。そして、一瞬動きが止まった家来たちから、銃を奪い取った!そして、銃を構える家来たちに銃を向けながら、家来の網を華麗にすり抜けていった。
「なあ、多分、この銃の安全装置ってここか!?」
「ああ、それを後ろに下げて!!」
がちゃっ!
撃ちまくれ!!
東とテンヌキは、いつでも銃が打てるように準備して、出口に向かって走り出した!!もちろん、目の前には家来が出てくる。そんな時は、東とテンヌキは、
「巨ええええええええtt!!」
「チュロおおおおおおおっt!!」
と、奇声をあげた。そして二つの文字は、同時に引き金を引く。
「絶対殺すなよ、テンヌキ!」
「うん!」
バン!バン!!
家来たちは、少し怯んだのか、動きを止めた。
東とテンヌキは、ニヤッと笑った。
撃てるもんなら撃ってみな!!
俺たちは絶対つかまんねえぞ!!
東たち二つの文字は、呆然としている「お」の家来たちに、高らかに告げた。

なぜ必要?

東とテンヌキは、屋敷の外へ出た。
「もう追ってくる気配はないな」
東は屋敷の方を向いて、テンヌキに行った。もう追ってくる気配はなさそうだが、念のためまだ走り続けている。
...なんで『お』は、あそこまでして俺を捕まえようとしたんだろう...?俺はなぜ必要とされているんだ?
「なあ、テンヌキ、そろそろ『ボス』の本当の役割、伝えてくれよ。約束してただろう?」
「無理」
「なんで!?」
「前」
東は前を見て、テンヌキの言いたいことを察した。
「...確かに、無理だな」
「ね?」
「今話してたら、三分くらいでボコボコにされるわ」
「ああ、簡単にやられる」
「そうだよな...」
二つの文字の目の前には、数え切れないほどの文字たちが、道を通せんぼするように並んでいると言う光景が広がっていた。その文字たちはどれも、『裏切り者』『この世界を壊すな』『お前のせいで...』などと、謎の言葉が書かれていた。縦40cm、横50cmくらいの、大きな長方形のプレートと、ナイフ、フォーク、フライパンなど、武器になりそうなものを持った文字が並んでいるのだ...
「絶体...絶命だな...」
「...」
二つの文字は足を止めた。
これじゃまるで、デモじゃねえか...
こんなことで戦争なんかに発展したらどうすんだよ...と、東は思った。
文字たちは、東とテンヌキ...いや、殆どは東に向かって、
「お前はこの世界をぶち壊したいのか!??」
「なにが目的だ!?」
「黙ってないでなんか言えよ!!」
「クソッタレ!!!」
「裏切り者が!!!」

と、訳のわからない文句を言っている。
「あのお〜」
東が口を開いた途端、文字たちは暴言を吐くのをやめ、東の方に視線を向けた。
「失礼ですが、人違い...いや、文字違いでは?...俺たち、あなた方の言っていることが、...全く理解できないのですが...」
すると東の方を向いていた文字たちの表情が、みるみる険しくなって、
「とぼけんなクソ野郎!!」
「いい加減にしろ!!」
「この世界の裏切りもんがああ!!!!!!」

と、さっきよりも大きな声で怒鳴りながら、手に持った武器を投げつけてきた!!
「うおっ!!」
なんとか避けることはできるのだが、当たってしまうのも時間の問題だ。東はテンヌキに囁いた。
「一気にぬけるぞ」
「うん...!」
東とテンヌキは、文字たちを無視して、全速力で駆け出した。幸い、デモの奴らは一ヶ所しか道を塞いでいなかったので、武器を投げつけられながらも、近くにいる文字を押し除け、なんとかデモから抜け出せた、追ってくる文字もいたが、テンヌキのナビゲーションにより、なんとか巻けた。
気づけば、もう夜になりかけていた。
「寝床を探さなくちゃ...」

おじいさん

二つの文字は、なんとか寝床を見つけようと、街をうろついていた。
「今日は野宿かあ...」
「お金もないから食べ物も買えない...」
この世界では、工場の他に、人間の世界と同じように、コンビニやスーパーがある。
「『絵文字工場』にも行けないし...」
「最悪これで...」
東は銃を構えて、テンヌキの方に向けた。
「あ、東?何するつもり...!?」
「お前を食べよう」
「怖っ...」
すると後ろから、バアン!と言う音と共に、東の頬に弾が飛んできた!!
「うおお!!」
なんとか避けたので、かすり傷ですんだ。
二つの文字が後ろを向くと、家来たちが大勢、銃を構えて走ってきていた...
「ヤバあああ!!」
「追ってきてないんじゃなかったのか!?テンヌキ」
「わからない...。僕たちを油断させるためだろうけど...とにかく逃げるよ!!」
東は後ろに向かって、何発か銃を撃った後、全速力で走った。だが、交差点に入ったところで、家来たちが出てきて、一気に囲まれてしまった。
「うわっ!」
「くそ!!」
ジャッ!二つの文字は銃を構える。家来たちも銃を構える。
「...」
「...」
しばらく睨めっこが続き、家来の一人が、
「撃てえ!!」
と叫んだ。すると、一斉に弾が飛んできた!
「うわ!!」
弾は足元に飛んでくる。なぜか殺す気はないらしい。東がこの世界に必要だから...
(なんで俺が必要なんだよ!!?)
足元ばかりに飛んでくる弾。それを避けようとする二つの文字は、ダンスのステップを踏むような動きになっていった。
「おお!これならなんか楽しいかも!」
その言葉に反応したのか、家来たちは銃をお腹に向けてきた。
「やべっ!」
二つの文字はなんとか逃げ道を探すが、囲まれているので、逃げ道はない。家来の上でも飛び越えない限りは---。
ピュン!東とテンヌキの頭上に、老文字の「老」の文字が飛び込んで来た。
「行くぞ、若いの」

東とテンヌキは全く状況を理解できていない。それに気づかず、「老」の文字(以下「老」)は、老文字とは思えないほどの身のこなしで、家来たちの頭を次々に蹴り倒して行く。
「ぐあっ!」
家来たちが全員伸びてしまった頃、「老」は、東とテンヌキの手を取って、走り出した。

「噂は知っとる。わしが匿ってやろう」
「老」に連れられて着いたのは、少し寂れた、文字の工場だった。全体的に黒く汚れていて、所々ペンキが剥がれた跡がある。周りにはゴミが捨てられている。つまり、とても汚い場所だ。
「あの、おじいさん、ここ、どこですか?」
「わしの家じゃ」
「え!?こんな汚いところが!?」
「東!失礼だよ」
だが、「老」はそんなことも気にせず、
「事情は中に入ってから話す。とりあえず入れ、湊太」
「老」は、いかにも臭そうなドアをいとも臭そうなそぶりをせず、開けた。
「うわあ!」
「すげえ!」
外見はとても汚く見えた工場だったが、中身はゴージャスとしか言いようがない。東が見たこともないような、高級感が溢れるソファやベッド、お菓子。さらに、人間の世界でいう4Kテレビが置いてあったり...
「若いの、まずは座りなさい」
「老」に勧められて、二つの文字は、フカフカのソファに座った。
「あの...あなたは一体...」
わしは...この世界の反逆者だ。反逆者を集めて人間の世界に行きたいのだが、それは出来ない
「なんでですか!?」
「...お前さんら、まずは自己紹介をしてくれんかの?お前さんらも反逆者なら、仲間に入れたい」
そして二つの文字は、全てを話した。
「あの、俺がここに連れてこられた理由って知ってますか?」
ああ。知っとる
「!!本当ですか!?」
「ああ、この世界の歴史を知れば、全て分かる」
そして「老」は、話し始めた。このLINEの世界の真実を...。

LINEの世界の真実

この世界は、『LINE』という、SNSのサービスが始まってすぐ造られたんじゃ。この世界では、数え切れないほどの文字が、せっせと働いている。
では、『ボス』について話そう。
『ボス』わしら文字を、年に一度、抹殺するのには理由がある。
反逆者を出さないためじゃ。この『和樹』のスマホの初代の『ボス』は、この世界で3、4年も生活していたら、「飽きた」「人間の世界に行きたい」などと言って、反乱が起きることを恐れたのじゃ。その時は『ボス』も一緒に死んで、次のボスに変わる。
そして東、お前さんがここに来た理由は...


お前さんが、『ボス』の血を引いているからじゃ。


文字にはちゃんと血管があり...
ああ、そこじゃないのか...。
わかった、ちゃんと説明するぞ。
ごくたまに、『ボス』の部屋にある人間の世界への通路に、不具合が起きることがある。

その時は、その通路が塞がれていても関係なく、『ボス』のちを引く人間が、人間の世界からLINEの世界に吸い込まれてしまうのじゃ。


そしてその不具合が起きるのは、決まって十二月三十一日。『一斉処刑』という、文字抹殺計画が終わった後なんじゃ。
わかるな?東。

お前さんが、その不具合の対象じゃ
「は!?....俺が....『ボス』の血を...受け継いでいる!?どういうことだよ!どうやって人間に『ボス』の血が受け継がれる!?」


"『ボス』は総理大臣”...つまり、お前は総理大臣の息子じゃ
「...は!?う、嘘だそんなの!俺は信じねえ!」
今現在の日本の大臣は名字を『森』に変えているからわからんじゃろうが、お前は総理大臣の息子なんじゃ!
「お、おかしいだろそんなの...」
「まあ、東、ちょっと落ち着いて、おじいさんの話を聞こう」
テンヌキに宥められて東は深呼吸をした。
「...信じられないのはわかるが...そういうことじゃ」
「なんで...」
東の目から、涙がこぼれた。
「あ、東?!」
俺...この世界の虐殺者になんかなりたくねえ!!なんでだよ!なんで...別の世界にこんな......システムが存在するんだよ...!!
「東...」
「テンヌキ、明日、『お』の屋敷に行くぞ!」
「え..明日!?今日あったことで警備が硬くなって、入れないかも知れないのに!?」
俺はまだ、恋だってしてない!小説家にもなってない!『お』に話をつけに行く。LINEの世界で生活して、『ボス』になって死ぬくらいなら、あいつに一発ドカンと言ってやる!!!!
東はおいているお菓子を、手当たり次第に食べ始めた。
「あ、東、大丈夫?」
「ほはへほふへ。はひはほへへふひーひひほ!!(お前も食え。明日のエネルギーにしろ!)」
「はぁ?」
「はーはーは!(だーかーら!)」
東はお菓子をごくんと飲み込んだ。
「エネルギーだ。ほら」
東はお菓子を5個つかんで、テンヌキの口にねじ込んだ。
「ほがっ!」
あ〜あ。疲れたわ、もう寝る。明日行くからな、お前も来い、テンヌキ
東は大きく伸びをした。
「おじいさん、ありがとう。寝かしてもらうぞ」
「散らかっとるが、いいか?」
「とりあえず眠いんでいいです」
東は大きく欠伸をした後、寝室のドアをくぐった。
東が中に入った後、
「テンヌキくん」
「老」がテン抜きに囁いた。
「ちょっと聞いてくれるか?」「老」はテンヌキに、とんでもない作戦を耳打ちした。
え!?それって東を...
「しっ。東が起きる。......やってくれるかの?これも東のためじゃ」


「...わかりました。やりましょう」

シーズン3に続く

(LINEの生活制作画面 #20LINEの世界の真実 休みます!すみません!!!)

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