お酒を飲むと、必ず寝てしまう君へ

君は、お酒を飲むと必ず寝てしまう。場所がどこであれ、誰と一緒であろうが、必ず寝るのだ。

僕は、そんな君が心配だ。
世の中は、僕みたいに君を真っ直ぐに見ている人間ばかりではないから、
いつか君の隙を狙って襲いかかるつもりの誰かがいるのではないかと気が気ではない。

そんな心配しなくてもいいのに。
君はきっと、そう言って笑うだろう。僕の気持ちは、その笑顔によって星屑のように散りゆく。
こんなに心配していても、君はお酒を飲むことを辞めない。

君と出会ったのは、大学時代。
入ったばかりのサークルで、初めての飲み会があった。そのときも、君は、誰よりも先に多くのお酒を飲むと、誰よりも先に寝ていた。
僕はそんな君を、哀れな気持ちで見ていた。そんなになるなら、飲まなきゃいいのに。お酒に飲まれる人間が、僕は本当に嫌いだった。

だけどどうしてだろう。
その日から、お酒を飲む度、君を思い出すようになった。
君もどこかで、知らない誰かとお酒を飲み、また寝ているのではないか。
そう考えると、悶々と沸き上がる何かを、気づかないふりして、僕もお酒を飲んだ。

君は、お酒を飲むと必ず寝るのだ。
お願いだから、気心の知れない奴とはお酒を飲まないでほしい。
お願いだから、お酒を飲むのは僕がいるときにだけにしてほしい。

あれから4年が経った今、やっぱり君は僕のいないところでお酒を飲んでいるようだ。

君のことを考えるのはもうやめにしよう。
僕が苦しくなるだけで、君はきっと、何も考えちゃいない。
無邪気にただ、楽しそうにグラスに口をつける君の姿は誰よりも可愛くて、危なっかしかった。急に電池が切れて寝てしまうその瞬間、君自身はきっと覚えていないだろうけれど、それは本当に、僕はいつも心臓が握り潰されそうな思いだった。

君は、みんなの憧れの的だった。
僕にとっては、花だった。
上品で、可憐で、いつも周囲に鮮やかな色を放ち、真っ直ぐに空を目指しているような。

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