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教育事業をしながら、レトルトカレーをつくる理由。

「房総すごい人図鑑」という教育事業の一環で、地元のお祭りをテーマにしたレトルトカレーを商品化し、2019年夏から販売しています。

初売りは、地域の市やお祭りでの出店でした。その後、地域のスーパーやお土産屋さんを中心に置かせてもらっています。

カレーを販売開始したあと、こんな質問をされることがたくさんありました。

「なぜカレーを作ったのか?」
「カレー作りにどこまで関わっているのか?」
「誰かブレーンがいるのか?」

これらについて書いてみたいと思います。

実はこのカレーの商品化のはじまりは丸1年前(2018年夏)。千葉県いすみ市の公立中学高校に導入させて頂いた特別授業「房総すごい人図鑑」の活動資金をつくっていくアイデアについての話を、お世話になっているお土産屋さんとしているうちに、「もしよければみなさんで商品開発して、ウチで売ってみませんか?」と言ってもらったことでした。

商品開発し、その売上を活動資金に。
もともと、「房総すごい人図鑑」の活動は学校の中にだけ収めるつもりはなく、地域の中にさまざまなアイデアを具現化していくことを構想していたので、これはうれしい提案でした。やらない理由がない。

<カレーづくりの目的>
・「房総すごい人図鑑」の活動資金づくり
・「房総すごい人図鑑」の広報
・生徒に対しての企画&商品づくりの見本

なお、カレーにしたのは「商品化するならまずはカレーがやりやすいよ」という、お土産屋さんからの助言によるものです。

「房総すごい人図鑑」の授業は2017年から、学校への持ち込み企画(資金的には持ち出し企画)として始めたので、そもそも金銭面の拠りどころはありませんでした(支援サイトもつくっていますが、今のところもう一歩)。その後2018年度からいすみ市の「ふるさと人財育成事業」に採択されましたが、これにもいつまでも頼るわけにはいきません。

また、学校の中に入って行う授業は文字通り学校の中でとどまり、外部にはなかなか知られず、「地域に認知してもらう」というハードルはかなり高いものでした。

さらに、授業のなかで生徒に企画づくりの授業もおこなっているのですが、まず自分たちでやってみせないと説得力がないよな、とも感じていました。主体的に、自由に考えることを促進し、学んだ知識を行動に変える楽しさを知ってほしいと思って授業をしている人がなにも実践してなかったら、生徒は信用しない。

これら3つを一気に解決するべく、つくったのが「ほらやっさカレー」です。

カレーの開発経緯

そこから、どんなコンセプトにするか、どんな地域ストーリーを掘りだせるか、どんな味にするか、といったミーティングを重ねました。

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できてきたコンセプトは、「地域のお祭りをテーマにした、縁起がよくて元気の出るカレー。勝負メシ」。男たちがお祭りに行く前に、かあちゃんのつくった優しい味わいのカレーをよく食べるというストーリーからイメージをふくらませていきました。

テーマにしたお祭りは海のお祭りなのですが、「海のオトコたちは、いつも食べている海鮮ではなく、肉がゴロゴロ入ったカレーを好む」というエピソードを聞いて、豚バラ肉をたっぷり入れました。

また、祭りらしく五穀豊穣を祈願して、アワやキビなどの五穀を入れることで、肉がゴロゴロ入っていながらもプチプチ食感を楽しめつつヘルシーに。「やさしい味わいと海のイメージ」はカツオだしの和風風味で再現しました。

いろんなカレーを取り寄せてみて味やパッケージを分析したりもして、たくさんの試行錯誤があったのですが、学校の授業でも生徒のサポートが上手な「房総すごい人図鑑」のメンバーは、商品開発でも見事に創造性を炸裂させました。

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コンセプトを決定づけるひと言を発し、みんなでイメージやビジュアルを話し合っているそばからイラストをささっと描いてくれたり、方向性が少しずつ変わっていくのに応じて、数回に分けてトータル10種類近くのハイクオリティのカレーを試作しちゃう味部長がいたり、得意分野のマーケティングとリサーチに的確な発言をしてくれたり。そして最後の最後にCMを作れるメンバーも加わりました。

実際、コンセプトにストーリーに味決めにパッケージにバーコードの作り方に栄養表示に値付けに売り方にと、やらないといけないことや全くわからないことが想像の数倍ありました。

「試食会を開こう」という話をしていたら、ちょうど元号が令和に変わることを祝って5月1日に御神輿が出るという話を聞きつけ、海のオトコたちに試食してもらって、発売前に認知してもらいながら、コメントをいただくということもしました。

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カレーの写真撮影にweb作成、そして最後には、箱にカレーを一つひとつ箱詰め。(カレーはOEMの会社から届き、箱は印刷会社からと、別々に届くので)
賞味期限のスタンプを押して、説明用紙を折りたたみ、底面と上部にセロテープも貼って、中のカレーが飛び出さないようにします。これが時間がかかってなかなか大変です。

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初売りのときの出店販売もわからないことだらけ。試食販売はOKなのか?ポップはどうする?CMは流せる?どのくらい箱詰めして準備するべき?etc…。さらにカレーを置いてもらうお店への営業と、納品作業と在庫管理と続きます。

それにしても実際に商品化を自分たちでやってみることで、一つの商品で利益をつくっていくのはとても難しいことも知りました。大手企業の大量生産モデルの偉大さも。

「コミュニケーションツール」としての商品

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そうやってやっと発売まで漕ぎつけた「ほらやっさカレー」。デビューとなったお祭りの出店時、うれしいことがありました。

まっすぐぼくらのブースに向かってきて、興味深い様子でカレーを手に取り、迷わず買ってくれた女性。思わず「ほらやっさカレーのことを知ってくれていたんですか?」と聞くと、「インスタグラムを見ていて発売を知っていました」と。
お話を伺うと、2年前にぼくらが授業をおこなったときの生徒の親御さんとのこと。最後に「応援しています、がんばってください!」と言ってもらいました。

前述のとおり、「房総すごい人図鑑」の取組みは、どうしても学校の中での特別授業なので、なかなか外に知られることが少なく、波及していかない構造があるのですが、こうしてカレーを作って販売したことで、今まで出会うことのなかった生徒の親から直接「応援」されたのはなんだかとても大きな出来事でした。さらにはそんなにおこずかいを持っていないはずの生徒たちも数人買ってくれて、それもとてもうれしいことでした。

そして、販売開始後に驚いたことは、メディアからの引き合いでした。「房総すごい人図鑑」はそれまでの2年間の活動で、雑誌3件に取り上げて頂いていたのですが、ほらやっさカレーは発売から1カ月の間に新聞、テレビ、ラジオにと、5件のメディアに立て続けに取り上げられました。

産経新聞20190828ほらやっさカレー


カレーは発売後2カ月で1000個以上売れましたが、おそらくそのほとんどが、「房総すごい人図鑑」のことをそれまで知らなかった人だと思います。新聞やテレビに取り上げてもらうこともそうなのですが、カレーをきっかけに授業の取組みについてたくさんの人に新たに知ってもらうPRになりました。(授業についての説明用紙をカレーの箱に同梱しているので)

さらに、カレーの箱には、授業へ協賛してくださる企業や個人からの広告(1000枚3万円)も入れられるようにしました。レトルトカレーの箱に紙類が入っていることはほぼ無いので、カレーを温める時間にめずらしがって読んでいただけたら広告効果もありそう、と考えたのです。

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そして、最近はこの箱詰め作業を、福祉との連携ということで、地域の福祉施設に作業委託させて頂いています。今はまだ微々たる売上ですが、カレーが売れるほどに学校での授業が継続し、福祉施設にももっとお支払いができたらと思っています。

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こうしてカレーをつくってみて感じることは、「カレーはコミュニケーションツールとして、なんて優秀なんだろう」ということです。こんなにいろんなレイヤーで地域のさまざまな方との関わりしろになるとは想像もしていなかったことでした。
教育事業を教育事業として知ってもらうのでなく、間にひとつはさむことで(ここではカレー)、広報効果が大きくなることもやってみてはじめて得られた知見でした。

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「房総すごい人図鑑」は、学校に入って授業をおこなうだけでなく、地域を楽しくすることも大きな目的としています。地域の祭りをテーマにしたカレーはその第一歩。ゆくゆくは生徒と一緒にそれができれば最高です。

さて、今年度も学校の授業が始まりました。毎週、我が家に積み上がったカレーの在庫を横目に、カレーの注文電話を受けつつ、カリキュラムを作成しています。ほらやっさカレーともども、「房総すごい人図鑑」をどうぞよろしくお願いします。

(カレーの山を減らすお手伝いはこちらから。間違いなく、おいしい思いができますので)

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