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芋づる読書日記  荻窪風土記〜母〜党生活者 

井伏鱒二の随筆「荻窪風土記」を読む。
戦前からの荻窪界隈の移り変わりが語られるが
昔の荻窪も今の荻窪も知らない、土地勘の無い身は置いてきぼりになる。
しかし、関東大震災、二・二六事件などは
リアルにその事件を体験した人の記録で面白かった。
特に二・二六事件は、同時に読んでいた浅田次郎の「兵諌」のキーワードに
なっていたので、こういう事件だったのかと興味深い。
昔、母が熱心に読んでいた「妻たちの二・二六事件」(澤地久枝)。
今も実家にあるだろうか。探してみよう。


この随筆中 昭和8、9年頃の思い出の中で、小林多喜二が虐殺された話が出ていた。

私にとって井伏鱒二は、自分が大人になるまで生きていた“知ってる”作家で
小林多喜二は遥か昔のプロレタリアート。
2人が同時代に生きていた、と言う事にまず驚いた。
(何と、井伏の方が歳上だった)
井伏と太宰の関わりは有名だけれど、小林多喜二も文学青年仲間だったとは。
瓢箪鯰で食わせ者の井伏鱒二と
一途でくらーい小林多喜二にどんな交友があったのか興味が湧く。
ちょうどunlimitedで三浦綾子の「母」を見つけたので読んでみた。
独白と言う形で書かれた、多喜二の母小林セキの生涯だ。


小林多喜二という人は私のイメージと違って明るい、話好きな人だったらしい。
家庭の、特に母親の影響が強かったようだ。

貧困の中で育てた息子を29という歳で奪われた母の無念さは如何ばかりだったろう。
同じ世代の子を持つ母として、子を奪われた彼女の怒りが胸に滲みる。
最終章は筆者のキリスト教感がちょっと鼻についたが
共感できる本だった。

数年前に「蟹工船」がブームになったとき古本屋で見つけたものの、
「プロレタリア文学なんて、ムリ!」と投げてあった本。
書庫(という名の物置き)に入ったら目に入ってしまった。
今 読めってことだ、きっと。

以前、どうしても読めなかった「党生活者」を読んでみる。
やっぱりジメッと暗い。
生活の全てを党生活に捧げようとする主人公。
党のために、人民のために「階級的生活」を捨てて
どんどん無機質になって行くようで怖い。
しかし、息子の側から描く母とのやり取りが、捨てきれない人間味を残していて
切ない。
(この場面は「母」の中で、母視点で引用されている)

この小説の半年後に、多喜二は虐殺されている。

某宗教団体が「反共産主義」を叫ぶ現代。
多喜二が生きていたらどんな感想を持つか聞いてみたい。



オマケ: 
大好きなポッドキャスト「ハイパーハードボイルドグルメリポート」の過去回で
「革命派飯」を見つけてしまった。

「革命的共産主義者同盟全国委員」
今の日本に“暴力による革命“を志して、それを公言する人たちがいる!!

この中で歌われる「インターナショナルの歌」を知ったのは
確か、五木寛之「にっぽん三銃士」
ノンポリ、と言う言葉と共に知った。
もう40年以上前。昭和の小説だがちょっと再読してみたい気もする。

ずるずると芋づる式に読書が続いていく。

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