ピープルフライドストーリー (40) バキュームカー出動! (ショートショート)

【作者コメント:  今回…食事中には……まあ……あまり読まない事を……オススメします……】

……
……………………………第40回

       バキュームカー
          出動!

            by 三毛乱

 西暦20XY年──
 朝からバキュームカーが街の郊外を走り回っていた。水洗トイレでなく、汲み取り式の便所が設置されている家がまだ多くあったのである。
 パンパンに汲み取った1台のバキュームカーが、お昼が近づくと定められた小学校へ直行して、校舎のすぐ横に停車した。
 白い帽子・白いマスク・白い服の上下・白い長靴姿の数人が、校舎から長いホースを素早く引きずって来る。その先端部分を、バキュームカーの横面にある所定の蓋を開けた穴に差し込んで接続した。
 スイッチをONにすると、バキュームカーのタンクの中身が校舎の方へ流れていった。それが給食室の幾つもの大鍋に集められた。
 その大鍋から更に分けられた中鍋が各教室へと運ばれて、教室では生徒達の手で各生徒達の各食器に分けられて、それが今日の給食となるのである。見た目はカレーに似ており、味は生徒達には「意外とすごく美味しい!!」と好評であった。嫌な匂いなどは勿論なかった。

 科学と技術改新は目覚ましくも輝かしい進歩を遂げて、人間の食べた後の排出物がバキュームカーの内部で、スイッチを作動させるだけで、リユース・リデュース・リサイクル・リクリエイトの最高の形での食事が簡単に充分に出来るようになったのである。いまはまだ1台の実験実証中であるが、これがコスト面などでも上手くいくようであれば、食糧難で困っている他国へ将来何十何百台も輸出しようという計画も官民一体で立てられていた。
 いやはや素晴らしくも驚異的なる科学と機械の進歩の結実した車なのである。
 そして、バキュームカーという旧来の名称を変えた方が良いという人とバキュームカーという言葉を簡単に変えるなという人の議論も起こっていた。議論の結果がいつ出るのか、とてもカッコイイ名称への変更となるのかならないのかを多くの人が注目していた。
 その日までバキュームカーという名称のままの車の活躍が続いてゆくのであった。

                終

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