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"i" #2

"i" #1|ぺぺ☆ペンギン狂い @oumc_ppq #note https://note.com/pepe_hoshi/n/n5699011a6cc4

↑前回はこちら。続くとは思っていなかった。

ヒュッ。
ナイフが空を切る。
この日のために、ある人から教えてもらい、技を、技術を磨いたナイフ捌き。
けれども、目の前にいる『彼』はそう簡単には倒せそうになかった。やはり、『彼』はその道のプロだったんだなと感じた。
でも、だからこそ。
僕は、ここで彼を殺さなければならない。

土曜日。日曜日。祝日。夏休み。冬休み。春休み。
とにかく行ける日を見つけては、僕はその公園に通った。
理由はもちろん、その子に、『彼』に会うため。そして、サッカーを教えてもらっていた。
『彼』はサッカーが上手かった。足の使い方も、ボール捌きも、華麗としか言いようがなかった。
「…は、どうしてサッカーがそんなに上手いのさ」ある日、僕は『彼』に聞いた。何気ない質問だった。
「先輩…いや、兄に教えてもらったんだ」『彼』は嬉しそうに答えた。
その時、僕はようやく気付いた。
誰でもなく、兄に教えてもらえばよかったのだと。意固地になっているのではなく、素直に教えてもらって楽しめばよかったのにと。
それからというもの、僕は兄に勉強もサッカーもその他なんでも教えてもらうようになった。仲が悪かった訳ではないけれども、は自分を見下されるんじゃないかと思って聞けなかったことがたくさんあった。けれども、『彼』のお陰で素直に聞けるようになったし、兄とも今まで以上に仲良くなった。

でも、兄はもういない。

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