"i" #3

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"i" #2|ぺぺ☆ペンギン狂い @oumc_ppq #note https://note.com/pepe_hoshi/n/n3c1b28ac84e8

僕が兄とより一層仲良くなった頃、『彼』と会う頻度は週2回から週1回程度になっていた。
僕が地元のサッカークラブに入って忙しくなったのもあるし、『彼』が忙しくなったのもあった。
『彼』が何故忙しかったのか、当時は分からなかったが、今となっては容易に想像がつく。
『彼』の正体に早く気付くべきだったのだ…

中学生になった。
それでも、忙しい日々の合間を縫って『彼』と会った。最初は感情が乏しかった『彼』も、学年が上がるにつれて笑顔を見せるようになっていった。話題のゲームや趣味について話すことも多くなってきた。けれども、『彼』は通っている学校も家も教えてはくれなかった。
そんな楽しい中学生活。しかし、僕が中学3年生のある日、事件が起こった。


その日は、大雨だった。
6月の末の日曜日。
外は雨で人通りがほとんどない。さらに、この田舎の近くで殺人事件が起こり、まだ犯人が捕まっていないということもあって、普段よりも更に歩く人が少なかった。
ゴロゴロ、ドッシャーン。
雷がどこかに落ちたようだ。
僕の家族も、今日は家で静かに過ごしましょうといった雰囲気を出していた。
両親は、楽しく夫婦揃って料理を作っていた。兄は、僕の隣で勉強していた。
僕も勉強していた。いや、勉強するフリをしていた。勉強に集中できなかった。
なぜなら、今日は『彼』に会う日だったからだ。
『彼』は雨の日だろうと、雪の日だろうと、僕のことを公園で待っていてくれた。だから、今日もこの大雨の中、僕を待っているかもしれないと思ったのだった。
それなら、知らせてあげないと。こんな大雨の中待っていたら、風邪をひいてしまう。そう考えた僕は居間を離れ、自室に戻るフリをして外に出ようとした。が、
「どこに行くんだ」兄の声だった。いつもは優しい兄の目が、どことなく厳しい感じがした。

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