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「百合さまと呼んでみることにした」松浦みる


百合役・・・松浦みる


『センセイの鞄』
という川上弘美さんの小説が好きだ。
主人公ツキコさんと、ツキコさんの高校の先生である"センセイ"との恋のお話である。
ツキコさんが駅前の飲み屋のカウンターで
「マグロ納豆、蓮根のきんぴら、塩らっきょう」
と頼むと、隣の人も同じものを同時に頼み、
「趣味の似たひとだ」
と見てみるとセンセイであった、という再会のシーンから始まるが、
とにかく飲みの描写が多いのが好き。
飲むとき何を頼んだのかいちいち書いてくれるのが好き。
昼から湯豆腐食べてビール飲んでるのが好き。

映画「センセイの鞄」も好きだ。
小泉今日子と柄本明が出演している。
私は小泉今日子のファンなので小説よりも先に映画を見ている(3回は見ている)。30代後半ひとり暮らしのツキコさんを演じる小泉今日子がめちゃくちゃかわいくてかっこよくて好き。
好きな人が茶色い居酒屋のカウンターで酒を飲んでる姿を見られて幸せ。
センセイの妻役樹木希林さんの、レモンのはちみつ漬けと毒キノコを食べるお口がまずそうで好き。

30歳差のツキコさんとセンセイはなんやかんやあり最後付き合って、3年後ぐらいにセンセイは死んで、ツキコさんはお葬式で、父からツキコさんへ渡すように書き残してあったと、センセイの息子さんから、センセイの鞄を受け取る。

映画のラストシーンでは、ツキコさんが部屋で1人、空っぽの鞄を覗き込みうわーーんと大泣きする。この子供のような泣く姿は小説に書かれていなくて、それが好きで、映画で描かれているのも好き。



さて、
私は最近コロナ関係のコールセンターでアルバイトをしていて、そこにはオペレーターとは別に、看護師さんが常駐している。
健康相談など専門的な問い合わせを看護師さんに回すように研修では教わるが、女の声だと怒鳴ってくる、オペレーターでは信用できない、というお電話口様もいらっしゃる。
さすがコールセンター。
そういうとき、看護師さんに代わってもらうのが効果的だったりする。

看護師さんは状況に合わせてタメ口を使う。

「うんうん」
「不安だねえ」
「ゆっくり休んでね」

体調が悪いときや動揺しているとき、こういうふうに話しかけられたら安心するなあと思う。
しかしコールセンターでの看護師さんのもうひとつの役割、"お電話口様を「黙らせる」"の存在を知ってしまったので、看護師さんのタメ口は主導権を自分が握るためであることに気づく。フレンドリーにも威圧的にもなれるタメ口。
患者さんが言うこと聞いてくれないと仕事にならないもんね!!

同じ女の声なのに、看護師さんのタメ口には安心し従ってしまう現象について、私の場合は、子供のとき具合が悪くなると看病してくれた母のことを思い浮かべる。私の場合は。

具合が悪いときや動揺しているときに優しくしてくれる女性のタメ口に、大人である自分の口を閉ざされるとき、「母」のことを思い浮かべて、あるいは思い浮かべていることに気づかないで、看護師さんに「白衣の天使」ですね〜と言っちゃうことにゾッとしつつ、今日もマイク付きヘッドフォン越しに聞き耳をたてる。



さて。さて2回目。
さっきまでチェンソーマンの考察動画を見ていたせいで、めっちゃマキマさんのこと思い浮かべちゃう!!!
にわか読者/視聴者だからもっと勉強します!!



さて。さて3。さてさてさて。
わたくし松浦が演じる百合さまは
斗起夫の父の書き置きにより、父の亡き後遺産を相続する。白いユリの花を携えて現れる百合さま。父のことを「先生」と呼ぶ百合さま。遺書の入った封筒をぺしぺし指で弾く百合さま。

百合さまの、こんなかっこいいト書たちを体現できることがとっても嬉しい。
百合さま役は、私ではないと思っていたし。
百合さまから簡単に連想できるたくさんの女たちの強いイメージをくらいつつ、
ぺぺぺの体幹トレーニングで「もう肩のロックを外すことしか考えられない…」となりながら、
楽しく元気いっぱいにやることが目標です!

松浦みる(いいへんじ、青年団)

1997年、福岡生まれ。早稲田大学商学部卒業。舞台俳優。
幼少期より地元福岡で演劇を始め、2016年、劇作家・演出家の中島梓織とともに「いいへんじ」を結成。以降、所属俳優としてほとんどの作品に参加。江原河畔劇場演劇学校無隣館4期を経て、2021年青年団に所属。
(パンがすき。存在に質量と温度が感じられて、ついつい寄りかかりたくなってしまう。こちらのnoteもいい。編集:石塚より)
 
Twitter:https://twitter.com/komekopan30
Instagram:https://www.instagram.com/rice_flour_bread30

いいへんじHP:https://ii-hen-ji.amebaownd.com/
青年団HP:http://www.seinendan.org/

『斗起夫 —2031年、東京、都市についての物語—』

世界を、広く、大きなものにしていく——

世界を主体的に生き抜くために、行動を起こし続けることを選択した斗起夫は、父が死んだ日に「運命の人」とめぐり逢う。ぎこちない不自然なコミュニケーションが、人間同士の溝を深め、やがて過去のトラウマを喚び起こす。そして、彼はあることを決意するだろう……。オリジナル小説から産み落とされた精確な筆致、言葉の数々。ぺぺぺの会、渾身の傑作長編。

【作・演出】
宮澤大和(ぺぺぺの会)

【公演日時】
12/28(水) 12:00 / 18:00
12/29(木) 12:00 / 18:00
12/30(金) 12:00 ★
★:年越しトークイベントを開催いたします。
上演時間は3時間を予定しております。(途中休憩込み)

【場所】
北千住BUoY

【予約(クレジット前払・当日精算)】
Peatix:クレジット前払・当日精算(ログインが必要です)
カルテット:当日精算のみ

【ぺぺぺの会HP】
https://pepepepepe.amebaownd.com/

【ぺぺぺの会Twitter】
https://twitter.com/pepepe_no_kai

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